企業風土

完全在宅勤務導入企業の年2回の集会の中身とは

投稿日:2014年10月17日 / by

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リアル対面のない会社での働き方とは

コグニティ(株)
「社員会同」

完全在宅勤務のワークスタイルを導入するコグニティ(株)。一応オフィスも構えているが、実質的には社員が揃って顔を合わせるのは、年に2回の「社員会同」のみ。同僚と毎日顔を会わせるのが当たり前の普通の会社の様子とはどんな風に違うのか…。数少ない社員の接する場に潜入し、そのムードを体感した。同社社員のワークスタイルと併せ、リポートする。

社員が顔を会わせるのは年2回

「初めまして、毎日話していますが」。なんとも不思議な挨拶が交わされ、スタートした社員会同。さすがに普段、チャットなどを通じ、まめにコミュニケーションを取り合っているだけあって、思ったほどのよそよそしさはなかった。それでも、社長や役員の生スピーチは、機会が少ないだけに出席者のまなざしは真剣で、様々な意見が飛び交った。

会同では半期の状況説明や各部署の成果・進捗が紹介されたが、メインは社内改善の議論。普段、それぞれが遠隔で業務を行っているが、もちろん対面がない不自由さもゼロじゃない。それぞれ課題を抱えつつ、プロとして業務を遂行しているのが実情だ。チャットでも意見は言えるが、やはり対面となると皮膚感覚までもしっかりと伝えることができ、意見を言うにしても重みが違う。

この日は、当然のように対面の必要性や人材育成などについて議論が交わされた。同社でもさすがに、ほぼ全く接点のない業務スタイルには、多少の違和感がある人もいるようだった。多くは完全在宅のスタイルに溶け込んでいるが、そうでない人も新しい働き方に希望と可能性を感じ、順応に尽力している。それでもひとつの改善案として「一度会って人となりを知っていると微妙な言葉のニュアンスもハッキリするのでやりやすい」、という意見も複数あがっていた。もっとも、そうした声により、ムードがよどむことはなく、むしろスッキリ感が漂う。こうした効果がまさに、社員会同の開催意義のひとつといえるだろう。

リアルでの業務報告は貴重とあってみな真剣に聞き入る

リアルでの業務報告は貴重とあってみな真剣に聞き入る

「全てがネットでのやり取りだと、もう一歩踏み込みづらい」という声もあった。それを象徴するかのようにこの日は、リアルでの対面が議論を活性化させたようで、厳しくも建設的な意見が小気味よく飛び交った。顔を合わす機会が“貴重”だと、こうも中身が濃密になり、しっかりと議論されるのかと考えれば、これも完全在宅勤務がもたらした紛れもないメリットだろう。

年2回が多いか少ないかはともかく、WEB会議なども日常的に行われている完全在宅勤務の中に、リアルをうまく組み込むことで非対面の不都合解消に大きな効果があることが、この日の集会に参加し、認識できた。

完全在宅勤務の働き方

会同終了後には、各社員に普段の働き方を聞いた。コンテンツ部門のマネージャーを務める女性社員は「夫の介護をしながら続けられる仕事ということで選びました。私にとってこのスタイルは柔軟性があってとてもやりやすい。他の人がどういう進捗なのか見えないというのは不安でもあるが、それ以上のメリットの方が大きい」と話し、マイペースで仕事に取り組めていることを満足げに明かした。

3児のパパで大企業出身の社員は、同社でエンジニアからデザイナーに転身。そうしたことを踏まえ「もしもエンジニアとして前の会社に残っていたらありえない転換です。家族との時間も増え、充実した毎日を送れています」とニンマリ。一方で「顔が見えないだけに新しく入った人とのコミュニケーションがしづらい面はある。その辺りは今後、いい形に整備していく必要がある」と改善点も指摘した。

同社以外に2つの会社で働き、トリプルワークする男性社員は「正直、これまで仕事で挫折したことはなかったのですが、ここでは自分の力のなさを痛感しています。会社にいるといかに恵まれているのかを実感しますね。ともすれば、在宅ワークは楽だと思われているかもしれませんが、決してそんなことはありません。もっと自分ができるように頑張らなければ…」と率直に明かした。

2児の母であるママさん社員は「文章構造化のお仕事は、ある意味答えのない作業でもあるんです。最初はそこに戸惑いましたが、今は、うまくできたときの喜びが大きく、やりがいを感じています。なによりも時間を自在に調整できるので本当に助かります」とうれしそうに話した。

子持ちが多い理由とは

年に2回の社員会同はきずなを深める重要な会合だ

年に2回の社員会同はきずなを深める重要な会合だ

実は、同社スタッフの多くは子持ち。子育てによる時間の制約で、一般の会社では働きづらいマイナスを、完全在宅勤務というワークスタイルが解消。その結果、仕事を続けることが可能となっている。

河野社長はいう。「このスタイルの導入は、本来社会に出るスキルがあるのに出られない人の発掘が目的でもあります。ママさん社員の方は本当に優秀な方が多く、こんな人材が労働市場に埋もれているんだ、と驚きつつ、もったいなく思っています。もっとももっと発掘していきたいですね」。

同社では定期的にオンラインチャット会議を行っている。その真っ最中に、ママさん社員が突然姿を消したことがある。実はそのママ、赤ちゃんに授乳中だったそうだ。

オフィスで働くことにはメリットも多いのかもしれないが、勤務の時間中、がっちりと拘束されてしまうことで、それに対応できず、離職を余儀なくされる人もいる。ほんの1時間、自由時間があるだけで済むことのために、優秀な人材が離職するとなれば、これほどもったいないことはない。そもそも、1時間働いて30分休むというスタイルが性に合っている人もいるだろう。河野社長は、そうした様々な人材が持つ可能性を最大限引き出すことを優先に考え、この完全在宅勤務制度を導入している。

多くの企業が、新しい働き方へのシフトをはじめている。だが、その多くは最新テクノロジーを活用した生産性向上の側面が強い印象だ。もちろんそれも重要だが、〈雇用機会増大と人材発掘〉という視点からのワークスタイルのシフトは、まだ希少。日本企業は今後、そう遠くない将来、人口減少の影響にさらされる。同社の取り組みは、そこに対するストレートで本質的なアプローチであり、日本の将来に光明をもたらす可能性を秘める。少なくとも同社で働く社員の活躍ぶりとイキイキとした表情は、それが予測レベルでないことをハッキリと物語っていた。(前編はコチラ


http://cognitee.com/indexJ.html

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【会社概要】
会社名 : コグニティ株式会社
所在地 : 東京都品川区広町1-5-28-302
代表者 : 代表取締役 河野 理愛(かわの りえ)
設立  : 2013年3月28日
資本金 : 4,020万円(資本準備金含む)
主要製品: ・遠隔会議効率化ソフト「Discuss-Here Office」
・ブレインストーミングソフト「名称未発表」
製品URL : http://www.discuss-here.com
企業URL : http://www.cognitee.com


【社長略歴】
1982年生まれ、徳島県出身、慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中の2001年にNPO法人を設立、代表として経営を行う。2005年にソニー株式会社入社。カメラ事業を中心に、経営戦略・商品企画に従事。2011年に株式会社ディー・エヌ・エー入社。ソーシャルゲームの海外展開を担当。2013年3月、コグニティ株式会社を設立。


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