働き方

【瓦版書評】社長!そのスピーチ・話し方は信頼感を落とします(朝日里佳:日本実業出版社)

投稿日:2014年7月28日 / by

社長スピーチの重要性が増す背景

社長!そのスピーチ・話し方は信頼感を落とします。

よほどの天才でない限りエクセレントなスピーチには練習が必要です

少子高齢化により、人材の確保が困難になりつつある。求人倍率でみれば、それほどの深刻さはないが、「優秀な人材」に絞り込むと、一気にそのハードルは上がる。企業の将来を考えれば、優秀な若者を確保し、出来るだけ安定的に成長を持続させたい。ところが、若者の中の「優秀な人材」は限られている。従って、その獲得競争は熾烈になる。

かつてなら、企業の認知度が大きな武器となった。誰もが知る大企業、就職人気ランキングの上位企業であれば、放っておいても向こうからやってきた。だがいまは、学生にとって、必ずしも企業ブランドだけが、選択の要素ではなくなりつつある。〈小さくても可能性のある会社〉、〈やりがいのある会社〉、〈自分が活かせる会社〉…大企業のリストラや経営危機が珍しくなくなった昨今、若者の目は、ブランドの先までを凝視するようになった。

充実した福利厚生、働きやすさに配慮した人事制度、やる気がわき起こる斬新で機能性あふれるオフィス…企業は、優秀な人材獲得にできる限りの環境を整えることに力を注ぎ始めている。こうした部分に加え、忘れられがちだが、重要なポイントとなるのが、社長のたたずまいだ。特に公の場でのスピーチは、会社のイメージそのものを左右しかねないので注意が必要だ。

ダメスピーチがもたらす悪影響

上から目線の偉そうな口調によるスピーチだと、「社員が委縮して働きづらそう」と思われるだろうし、自信なさげに話すようだと「この会社大丈夫かな」となる。「あの~」や「そういう感じで…」といった言葉を乱発するスピーチでは何となく信用できない印象となる。もしも、こうしたスピーチを就職説明会などでしてしまったら、採用において大きなダメージを負いかねない。逆にすぐれたスピーチなら、一気に就職希望者のハートをわしづかみにする可能性もある。

同書では、イベントなどの司会で数多くの社長のスピーチを見てきた著者が、社長のスピーチをエクセレントなスピーチに変える方法を指南している。一例として、ダメな話し方になる5つのポイントを挙げる。「無駄な言葉」、「最後までハッキリしゃべらない」、「『あれなんですね』のごまかし言葉」、「そういうことで」などの表現、「相手を見下す」。いずれも思い当たるふしがあるのではないだろうか。

社長のスピーチには、実は大きな問題が潜んでいる。部下がスピーチについて意見しづらいということだ。「社長、素晴らしいスピーチでした。貫録たっぷりでした」とはいえても「社長あのスピーチ、締りがなかったです」とは、思っていてもなかなか言えないだろう。結果、よほどの努力家でない限り、社長のスピーチは、磨かれることなく、知らぬ間に会社の評価を落とし続けることになってしまう…。だからこそ、同書のような存在は意義がある。

スティーブ・ジョブズは、天才的なプレゼンで世界中の尊敬を集めたが、社長のスピーチにはそれだけの影響力がある。これからの時代、スピーチが下手では、どんなに実務にすぐれていても社長の任務の半分の評価しか得られないといっても過言ではないかもしれない。社長に直接、スピーチの苦言を言えなくても、デスクの上に同書をそっと置くくらいなら、まだその敷居はうんと低いだろう。

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