インタビュー

次世代管理職に必須となる遠隔マネジメントの極意

投稿日:2014年8月29日 / by

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自分がいなくても回る仕組みづくり

 

ChatWork(株)

山本敏行代表

新しい働き方によってマネジメントが大きく変わる。時間と場所の概念がなくなり、ピラミッド型の構造が崩壊。フラット化が主流となり、さらに部下が目の前からいなくなるからだ。だが、ここで戸惑っているようでは、新しい働き方へのシフトでもたつくばかりか、経営の最大化も図れない。インタビュー第二弾では、自身も米国から日本のスタッフを遠隔マネジメントするChatWork(株)山本敏行代表にその極意とポイントをうかがった。

1万キロの遠隔地から部下をマネジメント

新しい働き方のひとつのスタイルとしてリモートワークがある。オフィス以外で業務を行うことで、物理的障壁を解消し、生産性の向上や就労の断絶回避を図る。メリットも多く、政府の後押しもあり、着実に普及が進む。一方で、これまでの空間を共にするマネジメントが染みついた管理職が、戸惑いをみせる事態も起こっている。

ところが同社では、山本代表自らが日本を離れ、1万キロ以上も離れたアメリカへ移住。現地でのビジネスチャンス開拓に力を注ぐ。残された日本のスタッフは、社長不在のまま、日々の業務にあたっている。従来の働き方からすれば“異常”ともいえる事態だ。

「マネージャーやリーダーは、自分たちがいなければ会社が回らないと考えがちだと思います。しかし、実はそれは非常に危険な兆候です。なぜなら、後進が育つ機会が失われるだけでなく、当人も新しいことへ踏み出すチャンスを逃してしまうことになるからです。これだけサイクルが早くなっている今の時代にそんな状況では、会社の将来がどうなるか予測できません。だからこそ、新しい働き方においては、マネージャーやリーダーが、“自分がいなくても回る仕組み”を率先してつくる必要があるのです」と山本氏は“マネージャー現場不要論”の真意を解説する。

遠隔管理実践の3つのポイント

確かにその通りだが、多くの企業でマネージャークラスが、会社の利益に多大な貢献をしているケースが多く、不在ではどうしても不安がつきまとう。この問題を回避する施策として、山本氏は大きく3つのポイントを指摘する。(1)漏れのない遠隔コミュニケーションの確立。(2)自分コピーの養成。(3)明確なビジョンの設定だ。

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リモート便りで薄れがちなコミュニケーション促進にフリースペースも豊富に設置

「当たり前ですが、いなくても回るようにするための環境整備がまず必要になります。私の場合、コミュニケーションは『チャットワーク』を活用しています。これだけでほぼ、問題なくコミュニケーションはカバーできます。アメリカと日本で私が実証しているので間違いありません。それからもうひとつは自分のコピーをつくることです。簡単ではありませんが、100%を求めるのではなく、7割くらいでもいいから任せる。そうやって成長を促しつつ、自分の代わりになる人材をつくることが、この仕組みづくりでは重要になります」と山本氏は説明する。

ITツールも洗練され、いまや個人レベルでも遠隔ワークが可能な時代。マネージャーやリーダーが、遠隔地を拠点にしても問題なく業務を回せる環境は作りやすい。だが、やはり、リーダーが実際にその場にいないマイナスはゼロではない。だからこそ、自分のコピー養成が必要になる。「コピー」に指名された人物は、不安と責任を背負うことになるが、それが成長の糧にもなる。離れているとはいっても存在するので、問題が起こればカバーはできる。この絶妙な構造の構築が、新しい働き方におけるマネジメント成功の肝となる。

不平出やすい評価は独自ルールで対応

もっとも、遠隔マネジメントでは、目の前でのリアル監視がないため、社員個々の目には見えづらい部分の評価は困難だ。その点においては、山本代表もしっかりと理解しており、独自ルールを設けている。「評価については最終権限は、現場リーダーに与えています。どうしても私の意向を反映したい時は、チームとは別枠の採用枠を設け、和を乱さないよう配慮します。結局最後は、現場の人間がその人間とうまくやっていくことが全てですから。それを壊してまで意見しても何のメリットもない」と山本氏は、あくまで現場を重視することで、評価に伴いがちな不公平感を極力回避する。

関西のオフィスとはネットで常時接続

関西のオフィスとはネットで常時接続

「マネージャーやリーダークラスで有能な人は、責任感もあってか、いつまでも一つの仕事に固執しがちです。それは悪いことではないでしょうが、会社の成長を考えれば、決してプラスとは思えません。トップがその権限を押し付けることも同じです。常に現場の声に耳を傾け、柔軟に対応できなければ、結局は市場でも後れを取ることになると思います。だから私が世のリーダーに言いたいのは、『いつまでその仕事やってるんですか』、ということですね」と山本代表。

次世代に必須の人事システム

どんどん新陳代謝を促し、安住を好まないーー。進化はすれど、地に足がつかないような経営スタイルとも思えるが、こうしたリスクを補完するのが明確なビジョンだ。全社員がしっかりと共有しているから、全くブレない。さらに定期的にリアルな対面も行う。まるで、3年ごとに人が入れ替わりながら、戦力をキープし続けるスポーツの強豪校のようだ。それでいて、戦力は年々上積みされるのだから、同社の業績が伸び続けるのも当然といえるだろう。

「自分がいなくてもうまくいく仕組み」――。山本氏が提唱する新しいマネジメントのカタチ。それはまさに、個人が活躍し、実績が評価され、昇進していくという従来の仕組みを超えた、有能な人間がよりスキルアップするための新しい上昇の法則といえる。言い換えれば、固定観念に縛られない、個の力を最大化する変革を呼び込む次世代の人事システムといえるだろう。

第一弾はコチラ:新しい働き方実践の極意


【山本敏行(やまもと・としゆき)プロフィール】

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HP:http://www.chatwork.com/ja/

ChatWork株式会社 代表取締役
留学先のロサンゼルスにてビジネスをスタートさせる。
帰国後の2004年、法人化するものの、儲け重視の体質が災いし次々に主力メンバーが離脱、我流の経営スタイルに限界を感じる。そこで、経営を学ぶべく1000人の先輩経営者に会いに行き、「経営の本質は社員満足にある」と気づき、労働環境を良くするためにITを経営に徹底活用。現在、事業拡張のためシリコンバレーを拠点に、大阪本社、東京支社、東アジアを行き来する日々を送る。
著書に『自分がいなくてもうまくいく仕組み』(クロスメディアパブリッシング)がある。

◆チャットワーク

クラウド型のビジネスチャットツール。メールやスカイプの使いにくい部分を解決し、より業務を効率化し、ビジネスを加速する。その特長は、グループチャットによる情報共有、タスク管理、ファイル共有、遠隔会議の4つ。クラウドを活用することで、既存のコミュニケーションツールの弱点を補完しつつ、いいとこどりをしたような機能が揃い、新しい働き方を推進するツールとしても注目されている。

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