インタビュー

なぜいま新しい働き方なのか?

投稿日:2014年1月7日 / by 瓦版編集部

ソーシャル・デザイン 代表理事 長沼博之氏 〈上〉

長沼博之

ゆっくりと着実に変化する産業構造がもたらす文明的変革

“新しい働き方”というフレーズが目立った2013年。分かるようで分からないこの言葉は、ワーカーにとって何を意味するのか。そもそも明確な解はあるのか…。著書「ワーク・デザイン」で、この問いに対する一つの答えを提示した(社)ソーシャル・デザイン代表理事・長沼博之氏に、モヤモヤを晴らすべく、話を伺った。


“新しい働き方”に注目が集まるワケ

――“新しい働き方”という言葉がまるでブームのように飛び交った1年でした。一体なぜ、こんなことになったのでしょうか。

長沼氏 “働く”を取り巻く環境が、大きく変化しつつあるからです。つまり、産業社会の構造がいま、大きく変革しています。例えば、何か大きなプロジェクトをする場合、これまでは大企業に属していることが必要条件でした。しかし、いまはクラウドソーシングで人材を集めることができますし、資金だって、クラウドファンディングで調達が可能です。つまり、ワークプロセスが根本から変わってきているのです。この流れで最も影響を受けるのが「働き方」。だから、これまでと違う“新しい働き方”に自ずと注目が集まったのだと思います。

――産業構造の地溝変動によるひずみが原因ですか…。とはいえ、現時点ではまだ大きな変化を感じることはできません。

長沼氏 実はいま、日本は2020年の東京オリンピックの決定によって、そこを目指してのイケイケのムードになっています。アベノミクスもあり、少なくとも向こう7年は日本の経済は安泰のような空気になり、事実、いろいろなものが動き始めています。しかし、そうした動きの延長線上に理想的な社会があるのか、といえばそれは違います。なぜなら、着実に産業構造の転換は起こり、それに伴って、価値観も大きく変化していくからです。

構造進化による価値観の変化

――価値観の変化、ですか。

長沼氏 右肩上がりの時代は、とにかく儲け主義。お金をたくさん稼ぐこと=幸せでした。しかし、産業構造の変化と社会の成熟によって、幸せの基準はお金から心の充実へとシフトしていきます。従って、勝ち組や負け組の概念も変質していくことになります。そうした社会は、単純な売り上げ至上主義の延長線上にはありません。

――大企業に就職して、出世して、年収2000万円を稼ぐ、といったようなサクセスモデルは無意味になるということですか。

長沼氏 無意味とまでは言いませんが、そもそもそれが成功なのかどうか?は単純な物差しでは計れません。また今後、企業は、人を抱えることが足かせになってきます。「スピードの欠如」、「コミュニケーションコストの増大」、「大きな固定費」。こうしたことは、プロジェクトを進めるうえで、何のプラスももたらしません。これまでのように、ある意味“必要悪”は、もはや無駄でしかなくなってしまうのです。個人やチーム単位で大きなプロジェクトを動かせる状況にあって、こうした無駄があることは、存続の危機にもつながりかねません。

構造変化――終身雇用制はもはや形骸化しています。働き方の選択肢としての企業勤めそのものが無意味になるのでしょうか。

長沼氏 企業の寿命は、30年前には「30年」といわれていました。それがその16年後の1999年には「わずか5年」ともいわれています。そしていま、事業の寿命は3年前後で尽きるといわれています。今後も事業の寿命は、短くなることはあっても長くなることはないでしょう。今世紀中にはほぼ「ゲーム」の域にまで極まるのではないでしょうか。

起業寿命の縮小による事業の“ゲーム化”

――事業が「ゲーム」ですか…。あまりに軽すぎないでしょうか。

長沼氏 新しいテクノロジーの普及によって、産業構造自体が変わるわけですから、ある意味では必然かもしれません。大きく変わる価値観と比例して、事業の価値自体も変質する。つまり、事業においても「利益最大化」以外の新たな価値観が生まれてくることを意味しています。

――それにしても事業の寿命が5年とすれば、人の寿命がますます延びていることに非常に危機感を感じます。今後、定年が70歳を超えることは確実ですし、路頭に迷う人で日本があふれてしまうのではないでしょうか。

長沼氏 確かに悲観的になる気持ちはわかります。日本人の平均寿命は、男性79.94歳、女性86.41歳。60歳まで生きる確率は9割以上といわれています。「80歳総勤労時代」とさえいわれています。一方で、企業はどんどん短命になり、従来の働き方でのパイも縮小していく。でもなんら悲観することはありません。従来の形は変質してしまいますが、代わって新しい働き方が生まれてくるのですから。
【上 了。】

<に続く>


naganuma4【プロフィール】
一般社団法人ソーシャル・デザイン代表理事。 経営コンサルタント。企業、NPO、団体、個人に向けて近未来型事業モデル構築のコンサルティングを行う。また、次世代のビジネスモデル、働き方、社会のあり方を提案するメディア「Social Design News~社会をより良くする近未来インスピレーション情報~」を運営。メイカーズ革命、クラウドソーシング、ソーシャルデザイン等についてテレビや雑誌から取材多数。著書に「ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉」がある。

URL:http://social-design-net.com/


◎『ワーク・デザイン これからの〈働き方の設計図〉』
いやま組織や事業の寿命よりも、人が働く時間のほうがはるかに長い。会社にぶら下がりたくても、会社そのものが脆くなっている。そうした中で、テクノロジーの進化と人々の価値観の変化によって、「働き方」が大きく変わりつつある。「仕事の未来」には、無限の可能性が広がっている。同書は、そんな時代に、いかにしてしっかりと働き方の設計図を描けばいいのか…。そのヒントを具体的な事例も交え、解説している。

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