働き方

上司を選挙で決めると業績がV字回復する理由とは

投稿日:2016年5月18日 / by

マネージャーを総選挙で決める熱すぎる決戦舞台
(株)オンデーズ

上司を選挙で決める。人事部をスルーし、社員一人一人の意志が反映される「マネージャー総選挙」。この方式のよさは、納得感にある。(株)オンデーズは、この選挙制度を導入して以降、低迷を脱し、V字回復を実現。元をただせば不満が充満する社員をなんとかするための苦肉の策だったが、いまや開催は年1度のペース。その数も6回を数え、すっかり文化として定着している。その熱い実体に迫った--。

米大統領選ばりの盛り上がり

社内選挙の域を超えた決戦舞台。いやが上にも盛り上がる

社内選挙の域を超えた決戦舞台。いやが上にも盛り上がる

ポスター、マニュフェスト、煽り動画…。毎年春先に行われる同社のエリアマネージャーを決める総選挙の様子は、極めて限定的ながら、アメリカ大統領選ばりに盛り上がる。無理もない。自分たちの職場の命運を決める重要なイベントだからだ。

“選挙権”があるのは、全社員と幹部。人数的には圧倒的に社員が多いが、票の比率は、50:50に設定されている。とはいえ、人事システムとしてみれば、極めて民主的だ。なって欲しくない候補には投票せず、なって欲しい人に投票する。それが当選に直結するかはともかく、ブラックボックスの中で、いつの間にか決められるいわゆる“人事部”での決定とは、納得感が比べものにならないからだ。

なぜ、“民主主義”が導入されたのか

最終アピールもTED風の本格的なスタイルで

最終アピールもTED風の本格的なスタイルで

「もともとは現在の社長が負債を抱えたこの会社を買収し、自分の足で全国の店舗を巡り、不満を拾い上げていったことが発端です。会社が傾いていることもあってか、不満は全社に充満していました。全てを解消することは到底、無理です。だったらせめて、納得感のある形の仕組みをつくろう、とはじまったのが、総選挙制度になります」と同社PRマネージャーの町田吉瞳氏は誕生の経緯を説明する。

不満があるなら、自分の手で改善する。投票側に回り、希望の上司に一票を投ずるもよし、自らが出馬し、職場改善のタクトを握るもよし。会社側が社員に民主的に権限を開放することで、不満の行き場を明確にするこの制度。文句の言いようがない提示だが、さすがに、突然の“民主化”には現場も戸惑ったという。それだけに、当初は立候補者も少なく、盛り上がりは、現在と比べれば低かったそうだ。それでも、2014年から、都内で総選挙のプレゼンを派手に行うなど、“イベント化”が進み、そのプロセスも冒頭のように盛り上がりはじめ、いまでは同社の年に一度の一大イベントとなっている。

誰もが出馬できる公平でフラットな仕組み

社員投票と役員票で決まる順位

社員投票と役員票で決まる順位

誰もが立候補も可能な総選挙だが、選出されるエリアマネージャー職は、現場レベルのピラミッドの頂点に君臨するポジション。位置づけは、店長の2つ上で、報酬も最も多い。それだけの権限と責任がある。まさに、一社員のチカラで職場を変革できる可能性がある、という現実的な期待感などもあり、回を重ねるごとに、会社全体のムードも一変。なんと、総選挙実施前には最大で50%にも達していた危機的な離職率が、10分の一となる5%にまで劇的に改善。業績も右肩上がりを続け、2007年からの成長率は238%にものぼる。

会社は誰のものか。オーナー? 経営者? 。物理的にはそうであっても、個々の社員一人一人が、自分事として業務に取り組める環境でなければ、やりがいなど生まれようがない。誰もが立候補でき、選挙権を持つ、総選挙という仕組みは、まさに、そうした感覚を自ずと研ぎ澄ます仕組みとして、理にかなっているといえる。

選挙活動においては、もちろん根回しもある。「票の確保をする行動は自由です」と町田氏も認める。だが、いわゆる“不正”は事実上起こりえない。なぜなら、幹部の票があるからだ。そもそも、不正をしてまで、エリアマネージャーになる理由はなく、もしも、不適格者なら、翌年の選挙で確実に落選という民意の裁きを受ける。

社員の距離感が縮まる副産物も

激戦を終えて溢れる笑顔は、良くなる会社を見据えるからこそ

激戦を終えて溢れる笑顔は、良くなる会社を見据えるからこそ

選挙活動には、社員と立候補者の距離感を縮める効果もある。よく知らない社員を知る機会は、通常業務の中では実はあまりない。自身を最大限にプレゼンする選挙活動は、なかなか練り込まれており、たとえそれが未知の社員であっても不思議なほどの親しみを覚える。選挙の周知にはSNSなども積極活用され、社員同士のつながりも自ずと強まっていく。

企業は、あの手この手で、社員の自主性を高めたり、モチベーションアップに骨を折る。それが、組織を活性化し、会社を浮上させる源泉になるからだ。あえて、その主導権を現場にオープンにする。全ての企業にあてはまるとはいえないだろうが、総選挙というシステムには、単に現場に裁量を委ねる以上の、職場に血を通わせる不思議な力がありそうだ。


メガネのオンデーズ  眼鏡・めがね【会社概要】
社名:株式会社オンデーズ
英語表記:OWNDAYS CO., LTD.
本社:〒106-0047 東京都港区南麻布3-19-23オーク南麻布ビル 11F
設立:1989年3月
資本金:50,000千円
主要株主:田中 修治
役員:代表取締役社長 田中 修治
取締役: 奥野 良孝取締役 海山 丈司取締役 藤田 徳之取締役 黒川 将大監査役 西川 晃司
従業員:1000名 (2016年1月現在)
事業内容:メガネ・サングラスの製造販売
URL:www.owndays.com/jp/

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について