働き方

なぜ人の足を引っ張る書き込みが増大しているのか

投稿日:2016年8月1日 / by

変人安田の境目コラム

他力本願で人士が上手くいくはずはないが…

努力して少しでも上を目指すこと。言うまでもなく、それはとても重要なことである。では周りが落ちてきて、結果的に自分のポジションが上がってしまう、というのはどうだろう。そのような他力本願で人生がうまく行くはずがない。そう考えるのは、人としてまともな事である。

yasu

だが皮肉なことに、社会では「自力で上に行く」ことと、周りが落ちて「相対的に上になる」ことは、同じ価値を持つのである。たとえば合格者数が決まっている試験の場合、自分の成績が同じでも、周りの出来・不出来によって合否の結果は逆転する。一輪車に乗るというような曲芸も、自分しか出来ない時には価値があるが、みんなが出来るようになってしまえば価値はなくなる。平均年収が500万円の社会では年収300万円の人は低所得層に入るが、平均年収が100万円の社会であれば高所得層に入る。つまりは周り次第なのである。

人生は自分次第である。そういうスタンスで生きていくことはとても重要だ。自分のことはコントロール出来るが、他人のことはコントロール出来ない。与えられた環境で、自分がやるべき事をやり、自分のベストを尽くすのみ。実際、そういう人が社会では成功していくし、他人のせい、環境のせいにしてしまうような人は、どのような環境においても成功しない。リーマンショックがあろうとも、少子高齢化になろうとも、成功する人はするのである。

評価に対する人間の本質とは

だがその一方で、社会における自分の価値が周りとの比較によって決まることも事実だ。プロ野球選手になるためには、野球が上手いだけではなく、野球が上手い人の中で上位に入らなくてはならない。オリンピックに出るためには、同国の同世代の選手たちよりも、速く走れなくてはならない。他人のせいにしてはならないが、他人によって自分の価値が変化することも事実である。他人の足を引っ張る。他人の失敗を喜ぶ。そんな人間にだけは、絶対にならないようにしよう。そう決意することは重要だ。

だが残念ながら、社会はそのようには出来ていない。それをきちんと自覚しながら生きていくことも、また重要なのである。自己満足だけでは生きていく事が出来ない。それが私たちの所属する人間社会の特徴なのだ。他人に認められること。他人よりも上に行くこと。他人から羨ましがられること。醜い性分ではあるが、これが人間の本性なのである。

他国よりもGDPが高い。同級生よりも成績がいい。同業他社よりも給料が高い。その事実が私たちに幸福感をもたらすことは事実であるし、その醜い競争によって人類が進化してきたこともまた事実である。人間という閉じたコロニーの中で、相対的な評価を得ること。それは紛れもなく人間の本質なのである。だから私たちは本能的に、他人の失敗を望んでいる。その事実を受け入れなくてはならない。人の足を引っ張るようなネットでの書き込みは、人間性が劣化した結果ではなく、匿名によって人間性が見えやすくなっただけのことなのである。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について