働き方

社畜はなぜ会社にとって“王様”なのか

社畜」とは、会社の言いなりで自分の意思表示を放棄した状態の会社員を指す。「会社+家畜」の造語だ。雇用主に飼いならされた社員はまるで、狭い小屋に押し込まれた家畜のようであることから、ネーミングされた。従来型企業にとって、社畜は、雇用者の“キング”。何でも言うことを聞く社員ほど会社にとって好都合だからだ。社畜をピラミッドとした、従来型サラリーマンの裏生態系の今後を占う。
company-slave-data

残業よし、薄給よし、命令絶対、休日不要…社畜は、上司の命令とあればどんな理不尽にも応える。文句も言わずに。なぜこんなことが可能なのか。理由は大きく2つある。一つは自分に自信がない。もう一つは、反発がめんどくさい。

前者は、他で雇ってもらえる自信がないからいまの職場で首を切られないよう必死という理由。後者は、もちろん腹立たしいが、何を言っても聞き入れれないから自分を捨てたという状態。どちらにせよ、人間としての存在を自他ともに否定しているような働き方であり、あまりに痛々しい。

養鶏場の鶏は、動きまで制約され、与えられたエサを淡々とついばむ。目的はただただ卵を産むため。社畜は、与えられた仕事を黙々とこなす。とにかく給料をもらうために。生き物としての魂を無視したこうした扱いは、誰の心にも痛みをもたらすが、完全に動きを拘束された養鶏と違い、いつでも逃げられる社畜が、無表情で働き続ける姿は、ホラーの様でもある。

「金の卵」という表現があるが、会社にとって社畜は金(カネ)の自動増殖器。だから、理不尽な指令・命令とは裏腹に、社畜は雇用主にとってキングだ。部長や次長・課長という肩書きとは無関係の雇用主ランキングでは断トツトップに君臨する王様。もっともそれはあくまで経営者の腹の中だけの話。みじんも口に出さないどころか、キングへの見返りなど全くない。

こうした悪徳雇用主の広がりによる副作用なのか昨今は、会社にとっての“害虫”が発生し始めている。「社内ニート」と呼ばれる、給料泥棒だ。言葉通り、社内における非就業の状態をいう。なぜそんなことが起こるのか。決して、該当社員ばかりが悪いワケではない。その発生メカニズムはこうだ。

選考を経て入社。配属。ここまではいいのだが、その後、人員不足により教育がなされない。簡単な仕事を任せるものの、それ以上はなし。その内、仕事がなくなり、ぼんやりとネットサーフィン。与えたくてもできるスキルがなく放置。だからといって会社側が簡単にクビにもできず、ズルズル社内無業状態が続く…。

社員側にすれば「生殺し」ともいいたいだろうが、会社にとっては給料泥棒でしかない。新入社員に多い傾向にあるが、社畜と対極ともいえる社内ニートは会社にとって、悩ましい害悪だ。対策としては、何とか教育を行うことだが、後手に回ると反乱を起こされる可能性もあり、扱いは要注意。とにかく厄介な社員に分類される。

タチの悪さでいえば、「フリーライダー」というタイプも存在する。これは「ただ乗り社員」という意味で、社畜が人格を破壊されながら働いている企業にも、寄生虫のように生息していたりする。なぜタチが悪かといえば、それなりにスキルもあり、やることも抱えているが、組織に埋もれるようにひっそり目立たぬよう、最低限の仕事だけこなし、不相応の高給をもらうからだ。社畜の血の汗をすするようなずるがしこいフリーライダーは、ある意味社内ニートよりも企業側の害悪であり、しもべ以下のランキングだ。

これと似たようにモノに窓際族、企業戦士、社内失業などもある。順を追って説明しよう。まず窓際族だが、これは言葉通り、窓際に追いやられた中高年社員をいう。本来役職が与えられる年代ながら、評価されず、閑職に追いやられた様を指し、こう呼ばれた。実際に窓際の席で外を眺めたり、新聞を見ていたりする。安定成長期の用語でもあり、いまほどの緊迫感はなかったと思われるが、分類としては、社内ニートに近いといえる。

「企業戦士」はその言葉通り、会社のために身を粉にして働く社員をいう。そういうと、社畜のようだが、自らが主体となって、会社のためにと動いている点で、家畜というよりは野生に近く、地鶏のようなイメージである。こうしたタイプは会社にとってありがたいが、トラブルとも表裏一体であり、ポストや給与で優遇されることになる。この辺も社畜と違う点である。

「社内失業」は社内ニートの慣れの果てといっていいだろう。事実上の戦力外で、実質居場所はない。社内で給与に見合う働きをしない社員が受けがちな仕打ちだが、自ら企画を提案するなど、脱出法がないわけではない。派閥争いによる仕打ちの場合もある。昨今は、嫌がらせがエスカレートした形で「追い出し部屋」なるものが用意され、露骨に退職を迫るスタイルへと深化していたりもする。

少子高齢化、それに連動した先の見えない不況により、激動する労働環境。従来の企業スタイルをベースに考えれば、雇われる側にとってより状況は過酷になっている。そうした傾向が高まるほど、全体に社畜度は高まり、企業にとっては都合がよくなる。だが、だからといって、そこに胡坐をかいてると、社内のフラストレーションは、抑圧や理不尽によってどんどん膨らんでいく。それが破裂する何が起こるのか…。アグリフーズの派遣社員の事件は、決して他人事ではない。

以下記事では、社員が前向きに仕事へ取り組むための制度を実践している企業を紹介している。休暇や評価など仕事へのモチベーションに繋がる制度を盤石のものにすれば、社員たちが腐ることはないはずだ。ぜひ参考にしてほしい。

社員がどんどん自走する会社のつくり方

通常の生態系で考えれば、社畜はもはや絶滅危惧種といえる。なぜなら、国の体制、法律、被雇用者の意識、メディアの目などが、社畜を抱える企業に対しどんどん厳しくなっているからだ。さらにいえば、いまや社員と企業の関係が逆転する勢いすらある。つまり、企業がしもべで社員が王様という関係だ。人口減少が大きな要因だが、ネット普及による個人起業が手軽になったことも見逃せない。社員が、そして個人が多くの武器を手にするようなったのだ。

生態系が崩れれば、思わぬ種属が増殖する。窓際族、企業戦士、社内失業…会社への寄生ありきのこうした種族は、やはり絶滅の方向だろう。代わって在宅族、起業戦士、社外社員といった、会社外を拠点とした新種が今後続々と労働生態系に誕生し、新たな世界を築いていくことになるだろう。その時、どんな種属が王様に君臨するのか。純粋に実力のある者のみが上に立つ、弱肉強食の世界になりそうだが、そうなれば社畜以上に過酷な状況に追い込まれる種属が出てきそうな予感もする…。

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について