企業風土

成果主義への転換が難しい本当の理由

投稿日:2014年10月28日 / by

成果主義へ移行してホントに大丈夫? 人事評価システム・運用支援を専門とする(株)あしたのチーム(本社:東京都港区、代表取締役社長:高橋 恭介)は、人事に関するインターネット調査を実施し、その結果を公開した。そこからは、会社経営者と人事に携わる人事担当者の間で大きな意識の差があることが明らかになった。

社会は、時間や年功ベースによる評価から、成果による評価へとシフトしつつある。悪いことではないが、問題となるのは、公平な評価ができるのか、という部分だ。一歩間違えば、社員全体のモチベーションを下げることにもつながりかねないだけに、慎重な設計が求められる。

調査は、従業員300人未満の企業で人事採用・人事評価に携わる会社経営者・役員もしくは、人事担当者を対象に実施された。こうした人々が、どう考えているのかは、成果主義の行く末を占う意味でも注目だ。

人事評価

あしたのチーム調べ

人事業務について課題に感じていることはなにか、という質問に対しては「課題がある」、「少し課題がある」をあわせ、「人材の育成や教育について」が66.3%でトップだった。続いて「賃金設計・制度について」、「採用のしづらさ」、「人事評価制度について」が63.5%で並んだ。人事にとってはやはり、教育や賃金、評価、採用が、課題のようだ。

この上位4項目を会社経営者と人事担当者別でもみている。その結果、「人事評価制度について」が、人事担当者75.5%が課題を感じているのに対し、経営者は51.0%で24.5ポイントの開きがあった。4項目中で最も開きが大きかった。

あしたのチーム調べ

あしたのチーム調べ

この結果からみえるのは、評価する現場である人事担当者と経営者に評価に対する溝があるということだ。つまり、経営者は現場ほど、評価に対し、課題を感じていないということになる。従業員に対する人事評価への満足度も質問しているが、そこでも人事担当者が「やや満足」とあわせ、40.7%だったのに対し、経営者は69.4%で28.7ポイントもの差があった。

人事評価について、経営者の満足度が比較的高く、従業員とより距離の近い人事担当者は十分に満足していないという構図は、このまま成果主義を導入することの危険性を示唆しているといえる。

では、具体的には、どういった点が課題と考えられているのか。その点についても質問されている。最も多かったのは、「評価と報酬の関連性が持てていない」(49.8%)。これを上記の結果と照らし合すと、経営者は十分に報酬を与えていると考えているが、人事担当者は、その報酬が適正な評価によって決められていないと感じているともとれる。こうなると不満社員のはけ口がなくなり、急速に従業員のモチベーションが低下することになりかねない。

成果主義は、その名の通り、成果に応じて報酬を与える仕組みだ。ただ、なにを持って成果とするのかは、職種によっても一律といえず、非常に難しい。成果を可視化しやすい職種から導入するというアプローチもあるかもしれないが、そうなると過剰な格差を生む仕組みには設計しづらくなる。どんなに完璧でも不満の声は出てきそうだが、日本が成果主義へとシフトする道のりは、想像以上に険しいのかもしれない…。

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