インタビュー

なぜ在宅勤務は会社を救うのか

投稿日:2014年3月6日 / by 瓦版編集部

オフィスで働かないことで生まれる数々のメリット

テレワークマネジメント田澤由利代表

株式会社テレワークマネジメント代表・田澤由利氏

在宅勤務が再び脚光を浴びつつある。国内でも四半世紀近い歴史がありながら、ここまで十分には普及してこなかったワークスタイル。現状、導入企業が1割をも大きく下回る中、なぜまた在宅勤務が注目を集めているのか。さきごろ「在宅勤務が会社を救う」を出版した(株)テレワークマネジメント代表取締役・田澤由利氏に、その真意を直撃した。

なぜいま在宅勤務なのか

在宅勤務は、文字通り、家で勤務するワークスタイル。離れた場所で働く「テレワーク」のひとつの形態(雇用型かつ在宅型テレワーク)を指す。日本でも25年近く前から試験的に取り組む企業があり、決して新しい働き方というワケではない。過去に国が推奨し、拡大機運もあったが、十分な理解が得られぬまま失速した前例もある。そうした中、なぜいま再び、在宅勤務に関心が集まっているのか。

「会社にとって最大のリスクは、人材の流出。いま政府は女性の活用を打ち出していますが、女性は結婚・出産・育児といったライフイベントで休職や離職を余儀なくされます。さらにこれからは高齢化によって、女性に限らず介護で管理職が休む、退職するといった事態も増加していきます。その他、災害による事業継続の困難というリスクも東日本大震災で再認識することになりました。テレワーク(在宅勤務)はこうした問題を解決する重要なソリューションだからです」と田澤氏は解説する。

在宅勤務が高齢社会の中で企業が抱えるさまざまな問題を解決する。それは確かなのだろう。だが、現状、導入企業は4.4%(「平成24年通信利用動向調査」=総務省)。さらに導入企業でも十分に活用できているとはいえない状況がある。

在宅勤務導入に必要な考え方とは

「在宅勤務を導入するとなると、多くの企業担当者は“うちは在宅勤務できる仕事がない”とおっしゃる。それは、資料作りやレポート作成など、通常業務から専用の作業を切り出すことを考えているからなんですね。確かにそれでは仕事の創出に限界がある。そうではなくて、通常の仕事を自宅でやる。そうした発想の転換がなければ、当然業務は枯渇してしまいますから、本格導入がうまくいくはずはありません」(田澤氏)。

過去に普及がうまくいかなったのは、業務の切り出しを前提に在宅勤務導入を考えていたのが大きな原因という。もちろん、社会全体として十分に活用するだけの設備が整っていなかったという背景もある。だがいまは、当時とは比べ物にならないくらいにテクノロジーが進化し、在宅で働く環境が整備されている。とりわけ大きいのが、クラウドの普及である。“雲の上”にデータを格納することで、いつでも、どこでも、同じような環境で業務を遂行することが可能になった。だからこそ、自宅であっても“通常業務”を行うのだ。

在宅勤務がもたらすメリット

東京オフィス

田澤代表の会社ではITツールをフル活用しテレワークを実践。少数精鋭で最大限の効果を出している

職場が自宅になるワーカーが増大すれば、様々なメリットが発生する。会社にとっては、人材流出はもちろん、交通費、オフィス賃料、デジタル化推進による紙代、印刷コスト…など、もうこれが限界だと思っていたコストもさらに絞ることができる。社員にとっては、通勤による疲労の軽減、時間の節約、場所と時間にとらわれない働き方による作業効率の向上…など、労使双方に多大な恩恵がもたらされる。

いいことずくめとも言える在宅勤務導入だが、旧来の働き方が染みついた管理職にとっては、自宅での勤務を「生温い」、「サボりの温床になる」として、反発姿勢を示すことだろう。しかし田澤氏は、こうした意見にも、その答えを用意している。

「私の考える在宅勤務は、基本あくまで全て、通常業務と同じにすることと考えています。つまり、自宅での勤務でもタイムカードは“雲の上”で通勤社員と同様に打刻し、離席の際もオンラインで報告する。時間管理にこだわるのは、在宅勤務で起こりがちな際限なく働いてしまう働き過ぎリスクを回避するためです。こうしたことを徹底することが、在宅勤務を本格導入して機能させる鉄則です。本来はオフィス勤務でも当たり前のことではあるのですけどね」。

→遠隔ワークにおけるマネジメントの極意はコチラ

在宅勤務者とオフィス勤務者に労働条件に違いを生じさせない。これが、田澤流の在宅勤務を企業戦略として機能させるための重要なポイントだ。そのためには当然、これまでの業務フロー見直しが必要となる。ダラダラ残業は問題外。業務時間内で仕事を終わらせることが基準となり、そうでなければマイナス評価もありうるだろう。つまり、在宅勤務の導入は、従来の会社の働き方、良くも悪くも“なぁなぁな体質”にメスを入れることにもなる。

在宅勤務が会社を救う理由

田澤由利

会社勤めしてたが夫の転勤や出産などで退社。以降、在宅勤務を実践し、働き続ける田澤氏

本格導入によって多くのメリットが期待できる在宅勤務。その最大のメリットはやはり優秀な人材の確保だ。「労働力が減少する高齢社会においては、人材流出は本当に大きなダメージ。特に管理職世代の介護離職は今後、深刻化します。優秀な人材ほど流出リスクは高いといえるでしょう。在宅勤務を導入してさえいれば離職を回避できたのに、ということがないよう、企業は今から本気で導入を検討する必要があります。それによって会社が救われるのですから。だからこそ会社は企業戦略として、トップが率先して在宅勤務を導入することを考えなければなりません」と田澤氏は力を込める。

眠い目をこすりながら起床し、朝食をかき込み、ぎゅうぎゅう詰めの電車に揺られ、ランチの行列に並び、無駄に長い会議に時間を費やし、当たり前のように残業し、クタクタで帰宅する。これだけの労力をかけて本当にそれに見合う労働成果は得られているのか…。モーレツ型ではもはや成果の期待できない成熟社会には、それにふさわしい働き方がある。

つまり、子育てや介護など様々なライフイベントにあっても、老若男女問わず、多様な人材が自分の生活リズムの中で最大限に会社やプロジェクトに貢献できるフレキシブルな働き方だ。在宅勤務が、そのすべてを補完するとはいわないが、日本社会に忍び寄る危機から会社を救う“特効薬”には十分になりうるパフォーマンスを秘めるワークスタイルのひとつといえそうだ。


【導入企業】
中小企業ではわずか1.2%の導入率
総務省の「平成24年通信利用動向調査」を元に算出したところ、国内の在宅勤務導入企業は4.4%。資本金50億円以上の大企業に絞ると13.6%。資本金1000万円未満の企業ではわずか1.2%にとどまっている。ちなみにテレワーカーの定義は、週8時間以上、ICTを活用し、時間と場所にとらわれない柔軟な働き方をする者とされている。


〈田澤由利氏 プロフィール〉
電機メーカー勤務を経て、家庭の事情で退社。以降は在宅勤務の実践で、出産や子育て、夫の転勤などを乗り越え、仕事を続ける。代表を務めるテレワークマネジメントは、そうした経験を踏まえたテレワーク導入支援をメイン事業とする。このほど発刊した「在宅勤務が会社を救う」(東洋経済新報社)は、実践者としてテレワークの普及をけん引してきた氏の活動の集大成といえる。出版の目的は一人でも多くの経営者を説得することで、その資金集めには、クラウドファンディングを活用した。

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