働き方

70歳まで“現役”をキープする働き方

投稿日:2013年3月12日 / by

再雇用を願う人ワークスタイル研究室
働き方最前線リポート
高齢者雇用延長の必須課題
年金支給年の延長に伴う定年延長で労働市場が大きく変わるーー。30年後には、70歳社員が、バリバリ働く姿も珍しくなくなる。若者や企業にとっては、マイナスに捉えられがちな高齢者の雇用延長。だが、日本社会の将来を考えれば、そうした人材の有効活用こそが、閉塞感打破のカギを握ることになる。


高齢労働者が増加する次世代の職場

203X年9月、72歳の営業マンが、20代の若者としのぎを削り、月間営業成績トップを達成、74歳のエンジニアが開発したアプリは、大ヒットを記録…??(プロジェクトチームの一員として20代の若者と70代のエンジニアが一緒に成功の喜びを分かち合う・・・)。

20年後の日本社会では、こんな状況が普通になっているかもしれない。

高齢者がバリバリ働くのか、後進に譲りながら、役割を見極めて働くのかは流動的だろうが、職場の平均年齢が上昇することは間違いない。

職場高齢化の背景

いまさらいうまでもないが、日本の高齢化は確実に進行している。その結果、過去に設定した年金支給プランは崩壊。2025年には65歳まで年金が支給されなくなる。仮に働く意欲がなくても働かなければ食べていけない状況も生まれ、70歳を超えても現役で活躍する必然性が出てくる。

老齢厚生年金(報酬比例部分)受給開始年齢引き上げによる定年延長の義務化

老齢厚生年金(報酬比例部分)受給開始年齢引き上げによる定年延長の義務化

「日本の場合、もともと高齢者の就業意欲が非常に高い傾向にあります。それに対し、受け入れる企業はどうかというと希望者全員が65歳以上まで働けるのは、48.8%、中小企業では51.7%と半数を超えています。70歳以上まで働ける企業の割合は18.3%となっています(※)」と(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構雇用推進・研究部の河内哲郎氏は説明する。

職場の高齢化で活力を生み出すには

今後の高齢者人口の推移を考えれば、高齢者が安心して働ける職場のさらなる整備が必要となりそうだが、単に高齢者をたくさん受け入れる、というだけでは何の解決にもならない。いかに高齢社員を有効活用し、いきいきと働いてもらうか。そこを実現しないと、日本の経済は老人パワーによって飛躍するどころか、衰退さえしかねない。

「高齢者雇用は特に中小企業で進んでいます。家族経営的な企業が多いのに加え、若者を確保しづらい状況があるのも一因です。それはともかく、こうした企業では高齢者が働くことに喜びを感じ、いきいきとしています。今後、大企業などでも高齢者の雇用が進むとして、とにかく大事なことは、受け入れる側がいかにいい風土・雰囲気を作るかがカギとなります」と河内氏は力説する。

徹底するにはトップが声をあげること

働く意欲があり、キャリアも経験もある大ベテラン。職場の空気がよければ活躍するのはある意味当然といえる。しかし、高齢社員に対しては、ともすれば中若年社員が冷たい視線を投げかけがち。昇給・昇格を阻害したり、これから就職する若者にとっても就職難を助長する象徴のようにイメージされかねないからだろう。顔では温かく迎えていても腹の底では、「早くリタイアしてくれ」と願っている輩も少なくない。これでは、高齢者の雇用環境が健全に保たれるわけがない。

「風土や雰囲気づくりについては、トップが宣言することが一番。明確にわが社は高齢と若年の社員を結び付けていくんだ、ということを口にすることで、着実に形成されていきます。若者の方からも積極的に話しかけ、ベテランならではの技術や知識、創意工夫を伝授してもらえばいい。時には人生相談にだってのってもらえばいい。高齢者を受け入れるための体制としては意欲や能力を考慮して、シフトや業務内容、給与に柔軟性を持たせることも重要ですね」と河内氏はアドバイスする。

70歳までイキイキ働くための条件とは

受け入れ態勢が整えば、あとは本人次第。では、70歳までいきいきと働くために、高齢者本人は具体的にどうすればいいのか。河内氏は、そのポイントを次のように提言する。

70歳まで現役をキープする7か条

「実際に業績をあげて会社に貢献している高齢者は、周囲と調和を図ろうとし、常に仕事に対し工夫をしたり、問題がないかを追求しています。また、自らの主張は抑え、周囲に配慮して働いています。このような行動をとる人は、管理職も安心して仕事を任せることができるので、結果として、その人に仕事や人が集まり活躍できるのです。また、会社によっては、高齢者が持つ技能を生かし、ダブルワークを認めるところもあります。一方、仕事以外では、いろいろな趣味を持つことも大切です。ちょっとしたことでは、通勤経路を気分によって変えてみたり、おしゃれに気を配るのもいいでしょう。長く働き続ける上で大事なことは、周囲とのコミュニケーションを大切にし、常に会社内外の幅広い年齢層と会話を交わすこと。それから、『もう歳だ』とか『そろそろ、いいか・・・』などといった”心”のリタイアをしないことです。当然のことながら本当に一度リタイアしたら、このご時世ではさすがに高齢というのは再就活において、マイナスこそあれ、プラスはありませんから」。

日本浮上のカギを握るの元気な高齢者

高齢者趣味人は年を重ねれば老いる。老いをネガティブに捉えれば、どんどん老け込む。そうではなく、刻まれたしわ、白く染まった頭髪、抜け落ちた髪、を味わい深さと考えるならば、人生はきっと楽しくなる。長く生きた経験をより有効に活用することが、70歳を超えてもいきいきと働ける働き方につながる。高齢者が元気なら、それは将来の日本が明るいことを意味する。日本に漂う閉塞感を打破するキーマンは、実は“高齢労働者”だったりもする。

※高齢者の就業意欲に関するデータ元は、H24年「高年齢者雇用状況」(厚生労働省)


【高年齢者等の雇用の安定等に関する法律】
一般的には高年齢者雇用安定法と呼ばれる。平成25年4月1日から一部改正したものが施行される。改正部分は、定年以降の継続雇用制度における、希望者全員を対象としない、という例外措置の廃止。つまり、企業は基本希望者全員を継続雇用することが義務付けられた。背景には、来年4月から厚生年金の支給年齢が段階的に引き上げられることに伴う、年金給付までの空白期間発生対策がある。


<組織概要>
名称:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
所在地:千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1番2号 高度職業能力開発促進センター内
設立年月日:平成15年10月1日
根拠法:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構法(平成14年法律第165号)
機構の目的:高年齢者等を雇用する事業主等に対する給付金の支給、高年齢者等の雇用に関する技術的事項についての事業主等に対する相談その他の援助、障害者の職業生活における自立を促進するための施設の設置及び運営、障害者の雇用に伴う経済的負担の調整の実施その他高年齢者等及び障害者の雇用を支援するための業務並びに求職者その他の労働者の職業能力の開発及び向上を促進するための施設の設置及び運営の業務等を行うことにより、高年齢者等及び障害者並びに求職者その他の労働者の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。


 

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