インタビュー

働き方の革新に挑む女性社長が目指すもの

投稿日:2014年10月10日 / by

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雇用創出と同時進行の新しい働き方への取り組み

コグニティ(株)
代表取締役 社長
河野理愛氏

多様な働き方に対応するひとつの施策として、在宅勤務を取り入れる企業が増加している。そうした中、全従業員が完全在宅勤務の企業がある。会議効率化や思考支援ソフト「ディスカス・ヒア・オフィス」を提供するコグニティ(株)だ。理由は、メインの市場が日本じゃないから。極めて合理的なその経営スタイルは、会社設立前から計画して創り上げたという点で、設立後、「新しい働き方」へシフトとする企業とは、一線を画す。

「新しい働き方」構築にゼロからチャレンジ

2013年3月に設立された同社は、通常の会社が辿る苦労とは異質ともいえる苦難を数多く経験してきた。なぜ、そんなことになったのか…。それは、これまでにない「新しい働き方」の構築にゼロからチャレンジしたからにほかならない。

一体何を目指したのか。それは、誰もが自分のペースで、最高のパフォーマンスを発揮できる働き方の実現だ。いわゆる「新しい働き方」のひとつの定義である「時間と場所にとらわれない」ことに加え、どんな人でも取り組める仕事の創出というところにまで踏み込んだ革新的といえるワークスタイルだ。

雇用創出も視野に入れた革新的ワークスタイル

「会社設立にあたり、事業の拡大と同時に、より多くの雇用を生みたいという思いがありました。本当は働けるのに事情があって働けない人もたくさんいる。そういう人の障害を取り除いて、その潜在力をうまく引き出せる仕組みを作りたいと思いました。そのためにはまず、自社サービスを広く普及させることはもちろんですが、誰もが取り組める仕事の創造が必要と考えました」と河野社長は振り返る。

この思いは、同社のビジョンともそのままリンクする。〈溢れる情報と、多様な価値観の中、誰もが納得できる意思決定を行うための商品・サービスを提供していく〉。要するに、まやかしでなく、本当に大事なものをしっかりと見極め、雑音をかき分け、本質にたどり着くという価値観が全てのベースとなっている。

同社が販売する製品は、会議の効率化や思考を支援するソフト。会議を遠隔で出来るのはもちろん、会議中の思考を促進し、終了と同時に、テーマごとに内容が整理される。さらに、会議で議論が足りていない要素の指摘までしてくれるというすぐれものだ。会議を「何となく満足」、で終わらせるのでなく、本当にしっかり議論されたのかまでを見極める、これまでにないタイプのロボット頭脳的な本質を突いたソリューション型製品といえるだろう。

文章構造化の図

モノのアセンブリーから情報のアセンブリーを目指すコグニティの文章構造化へのプロセス

この画期的なサービスの肝となるのが、文章の構造を理解して整理するアルゴリズムだ。そして、その文章の構造化を担うのがヒューマンパワー。人が文章を分解し、整理する。議論のテーマが無数にあるように、構造化する文章も無限にある。そのため、雇用につながる仕事は、製品の普及・進化に比例して、どんどん増えることになる。

モノのアセンブリーから文章のアセンブリー

「起業前は大きな企業に勤めていました。そこで工場を回すことを学びました。文章の構造化は、そのノウハウをテキストの作成に応用したものになります。この作業は、マニュアルに従って文章を分解し、構造化するだけなので、基本、文章を読める人なら誰でもできます。そして、いつでもどこでもできます」と河野社長。

製品自体は、アップルストアなどでアプリとして販売する。そのため、オフィスを構える必要はない。そもそも現在は、メインの販売先が海外であり、日本にいる社員がどこかに出勤する必要もなく、時間にも場所にもとらわれない。社員同士のやり取りはチャットやメールなどの遠隔となるが、同社のサービスを使うことで円滑に行える。同社が、完全在宅勤務制となるのは、ある意味必然なのだ。

本質的に重要な価値高める体験の提供

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同社ではスタッフがそれぞれ自分のペースで作業に従事している

「満員電車の通勤、メールを送って用事は済んでいるのに毎日同じ場所に出勤、確認のための一日中の会議…。これらを効率が悪いと感じている人は少なくないと思います。私は、自社製品を通して、そのユーザー、そして社員にも、『本質的に重要な価値を高めていける体験』を提供していきたいと考え、経営しています。当社が実践することで、他の多くの企業にもこうした可能性に気付いてもらいたい、そしてそれが広がっていくことを望んでいます」と河野社長は力を込める。

単に新たな雇用機会の創出だけでなく、正社員としての「安定」も担保するという革新的な経営スタイル。従来の働き方を基準にすれば、全スタッフがバラバラに活動する同社でどうやって従業員を評価し、公平さを保つのか想像がつかない。この難題への解決策は「社員会同」と呼ばれる集会が担う。半期に一度、年に2回行われる全社員の集会だ。ここで、全員が顔を会わせ、リモートワークをする上での課題や昇進のベースとなる360度評価などが実施され、働き方のさらなる改善案等も議論される。

製品の普及と比例する働き方改革の確立

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完全在宅勤務だが、拠点としてオフィスも設けている

設立1年半。紆余曲折を経たが、ようやく同社の経営スタイルも軌道に乗り始めた。だが、全くの新しいチャレンジとあって、まだまだ試行錯誤は続く。「最近も正社員採用して1週間もしないうちに辞めてしまう例がありました。これまでも、顔を会わせる機会がないからうまくいかないのだと理由をつけて、完全在宅勤務スタイルになじめずに辞める方が多かったですね。やはり、就職すると出社するもの、という認識の人には簡単には馴染めない制度なのでしょうね」と河野社長。ようやく、そのあたりの人材の見極めポイントもつかめてきたというが、ゼロからの挑戦には苦労も尽きないようだ。

裏を返せば、同社の挑戦がそれだけ革新的で斬新であることを証明しているといえる。そうした中で、このスタイルにフィットする人材が、社員として予想以上の活躍をみせ、管理職に昇進するなど、会社の発展に貢献している点は、希望に満ちた明るい材料だ。9月には国内市場向けにアプリを発売するなど、同社の勢いは加速している。海外での実績も積み上げながら、逆輸入のような形での日本市場進攻も狙う。国内外で製品が普及することは、同社の目指す新しい働き方の拡大ともシンクロするだけに、その動向は、働き方の新しい可能性を広げるという観点からも大いに注目される。(同社の働き方の実態はコチラ


http://cognitee.com/indexJ.html

http://cognitee.com/indexJ.html

【会社概要】
会社名 : コグニティ株式会社
所在地 : 東京都品川区広町1-5-28-302
代表者 : 代表取締役 河野 理愛(かわの りえ)
設立  : 2013年3月28日
資本金 : 4,020万円(資本準備金含む)
主要製品: ・遠隔会議効率化ソフト「Discuss-Here Office」
・ブレインストーミングソフト
製品URL : http://www.discuss-here.com
企業URL : http://www.cognitee.com


【社長略歴】
1982年生まれ、徳島県出身、慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中の2001年にNPO法人を設立、代表として経営を行う。2005年にソニー株式会社入社。カメラ事業を中心に、経営戦略・商品企画に従事。2011年に株式会社ディー・エヌ・エー入社。ソーシャルゲームの海外展開を担当。2013年3月、コグニティ株式会社を設立。


DHO

15分も使っていると慣れてくる

[Discuss-Here Office(ディスカスヒア オフィス)]
会社での会議、チームでのブレスト、自分の考えの整理…。様々な「考える」をサポートし、そうした時間をより創造的に変えるiosアプリケーション。独自の実験から「わかりやすい文章」「理想的・論理的な文章」のパターンを導き出し、それを利用して思考整理作業のプロセスにおける、論理の抜け・漏れ・偏り、足りないものを Suggestする。人の持つ感覚を活かしつつ、コンピュータの得意な計算を活かす、新しい提案のかたちといえる。

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