働き方

「いまの会社に定年まで」が5割以下の理由とは

投稿日:2014年9月18日 / by

終身雇用制の崩壊が叫ばれて久しいが、ビジネスパーソンの意識も“自立型”へ変化しつつあることが明らかになった。(株)オールアバウト(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 兼 CEO:江幡哲也)が人々の決断を支援するために展開している特設サイト「国民の決断」で、「転職」に関するアンケート調査を実施し、判明した。調査期間は2014年8月27日(水)~8月28日(木)で、首都圏(東京、埼玉、神奈川、千葉)在住フルタイム勤務の男女852名から有効回答を得た。

首都圏在住でフルタイム勤務の20~59歳の男女に対し、転職をしたことがあるかどうかを聞いたところ、男性の半数近く(49.8%)が未経験であると回答。一方で女性の未経験者は31.9%と、約17ポイントの差があった。また、性年代別で見てみると、男女ともに30代から転職経験者が増加傾向にあることがわかった。40代以上の女性に至っては、3割以上が4回以上転職経験があると回答。この結果に対し、All About「女性の転職」ガイドで、キャリアカウンセラーの水野 順子氏は次のように分析する。

グラフ2

All About『国民の決断』の調べ

「転職経験に関しては、全ての年代において男女問わず3割以上の人が経験しており、30代以降では半数以上の人が最初に勤めた会社にはいない、ということが調査結果として出ています。一生涯その会社に勤め上げる予定で就職したものの、会社都合で転職を余儀なくされることや、実際に働いてみると想定していたこととは違い退職することが、2人に1人の割合で起こっている、ということが明確にわかります。またバブル期に就職活動をした40代後半~50代では、男女で大きな差が出てきます。その頃は『寿退社』という言葉があったように、結婚や出産で退職し一旦家庭に入る妻と働く夫、というスタイルがあったことが挙げられると考えられます」。

転職をした、あるいは考えた理由について男女別で聞いたところ、双方ともに4割以上と一番多かったのは「給与への不満」だった。男性で次に多かったのは、「自身のキャリアアップのため」(25.5%)、「職場の人間関係」(22.2%)、「長時間勤務」(17.0%)と続き、女性では「職場の人間関係」(28.0%)、「長時間勤務」(20.5%)、「不本意な評価」(19.1%)と続いた。

「会社を辞める時に一つの理由で辞めている人は少なく、様々な不満や条件が重なって辞める、もしくは辞めざるを得ないと分かります。逆に言えば、給与は低いけれど人間関係はいいから続けている、長時間労働ではあるけれど自分のやりたい仕事だから続けている、といったように、自分が満たしたいと思う条件全てではないけれど、いくつかを満たすことができていれば『退職』を決断するまでにはいかないという人が多いのではないでしょうか。退職をしてから後悔をする人の多くは、いっぺんに様々な要因が重なって状況の整理がつかない時に退職を判断してしまったということがありますので、退職を言い出す前に、まずは今の状況で改善ができそうなところはないか?と考えてみたり、人に相談をして客観視して、冷静になることが必要といえます」(水野氏)。

また、昇進経験についての質問には、女性の約6割(59.8%)が「1度も昇進したことがない」と回答しており、男性の36.0%を約23ポイント上回る結果となった。この結果に対し水野氏は「日本の女性管理職割合が少ない現状からみても、これはやはりという結果。全ての年代において女性は5割以上が一度も昇進をしていないのに比べ、男性は年齢を重ねるとともに昇進回数も経験も上がってきます。このもっとも大きな理由として、勤続年数が昇進の基準のひとつにある会社が多かったことが挙げられます。転職経験のデータから見ても女性は転職する回数も多く、必然的に1社における在籍年数が少ない傾向があるため、昇進の基準を満たしていないという点が挙げられます。しかし現在は、能力や実績によって昇進させるという実績主義の会社が増えていることから、年齢や在籍年数を問わず短期間で昇進する人が増え、一方で何年経っても昇進しない人との2極化が起こると考えられます。また、今後は国の施策としても女性の管理職登用が進むため、男女の昇進頻度の割合はこの先数年間で大きく激変していくことは間違いありません」と分析する。

All About『国民の決断』の調べ

All About『国民の決断』の調べ

さらに、全体に対して昇進したいかどうかという問いに対し、男性の33.6%(「昇進を強く望んでいる」+「できれば昇進としたいと思う」)が昇進を希望しているのに対し、女性は18.3%と差があり、さらに女性の2割近く(19.3%)は「昇進のない仕事である」と回答していることがわかった。しかし、「ライフワークバランスを保てる範囲」という条件付きであれば、女性の約3割が昇進を希望していることが明らかになった。

最後に、今後のキャリアについては、男女ともに今の会社に居続けたい(「定年まで働きたい」+「できるだけ長く働きたい」)と考えている人は半数以下であることがわかった。また、男性(49.3%)のほうが女性(42.6%)よりもできるだけ今の会社に残りたいと考えていることがわかった。この結果に対し、水野氏は次のように推測する。

グラフ3

All About『国民の決断』の調べ

「今の会社で定年まで、もしくはできるだけ長く働きたいという人が、全体では半数に満たないという点は、特にここ数年で大きく変化した働く側の意識ではないかと考えます。転職することが自分のキャリアをつくる中の選択肢の一つになっており、会社に就職することだけでなく、『職業』に就きたいという人も増えていることも挙げられます。特に女性は、結婚や出産や介護などによって生活スタイルが変わる人が多く、その都度、その時の生活にあった働き方をしたいと考え、『手に職』をもち、どんな生活スタイルになっても、またどこに住んでも働き続けるために会社で働きながらも準備をする人が多く、資格取得や習い事をするのも女性の割合が高いと感じます。また男女ともに、独立を望む人もおり、会社員として働く以外の選択を望む人も増えていると推測されます」。

調査から浮き彫りになったのは、ビジネスパーソンの意識の変化。かつてのような忠誠心は薄れ、いかに自身のキャリアを磨き、付加価値をつけるか。逆にいえば、会社にはぶら下がっていられないという意識が強くなっていることが分かる。少子高齢化を背景に、縮小を続ける日本市場、相次ぐ倒産・リストラ…。温めだった日本の“会社人間”の危機意識が、ようやくじんわりと熱くなりはじめている。

 

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