働き方

定年延長で発生する“課題”をクリアする取り組みとは

投稿日:2013年4月17日 / by 瓦版編集部

シニアと若手がうまく調和する職場づくり タニタの本社

株式会社タニタ

年金受給開始の引き上げ上げに伴う、高齢者の雇用延長により、企業は難しい課題を抱えることになった。身近なところでは、新旧の上下関係による“摩擦”の発生だ。タニタでは、定年後の社員の扱い方を工夫することで、事実上の「摩擦ゼロ」を実現している。

“ちょっと回り道”するだけで、悩みの種がスッキリ解消

会社に到着した社員が、自社のオフィスへ入り、ロッカーからパソコンなど業務に必要なツールを準備。そこから同じ建物内の別のオフィスへ移動し、業務に取り掛かる。

なぜ直接仕事場へ行かないのか…。なんだか少し奇妙な行動である。実は、社員は「タニタ総合研究所」という派遣会社の社員。別のオフィスは、派遣先の「タニタ」。両社は、タニタの60歳以上の社員の定年後の受け皿として創設された派遣会社とその派遣先という関係にある。

つまり、社員は自分の派遣会社へ出勤し、そこから派遣先へと向かっていたわけだ。ちょっとしたことだが、この“回り道”が、高齢者の雇用延長によるさまざまな問題点をクリアする上で、大きな効果を発揮する。

“摩擦”をなくすカラクリとは

タニタイラスト仕組みを説明しよう。タニタでは、60歳以降の継続雇用については希望者は65歳まで雇用する。その際、全員が「タニタ総合研究所」へ転籍することになる。従って、その瞬間から、それまでのタニタでのキャリアはリセットされる。役職者だった人間でも、転籍後は、一派遣社員として、元の会社、つまりタニタで勤務する。やることは、基本的に現役時と変わらない。

高齢者の雇用延長が義務化され、各企業は、様々な課題に直面している。そのひとつに、元上司と現上司の立場の逆転がある。定年延長後、役職がなくなった元上司を部下として扱うことは、なかなか難しい。とはいえ、その結果、現場の空気が乱れたり、生産性が落ちるようなことがあれば、企業にとって少なからずダメージがある。

意識改革で“余生”を楽しむ余裕も

タニタ今社長「割り切ればいい」。言うは易しで現実は難しいこの課題を、タニタの事例では、定年社員全員を派遣会社へ転籍することで、物理的に解決した。それまでのキャリアが白紙となることはもちろん、会社が違うことによる現場の上下関係がなくなることがなによりも“摩擦”解消に大きな力を発揮する。

「同じ会社で再雇用となる場合、なかなか切り替えが難しい。明日から急にかつての部下が上司となったら、分かってはいても普通には対応しづらい部分があります。その点、全員がタニタ総合研究所へ転籍することで、全てがリセットされます。ですから、仮にかつての上司が派遣先で元部下の意にそぐわない場合、派遣先に相談するという選択肢もあり、摩擦の解消となるわけです」とタニタ総合研究所の今正人社長は説明する。

タニタ総合研究所は正式稼働からこの春、丸2年を迎えた。その間、このシステムへの不満の声はなく、離脱者もゼロ。現場でもうまく機能している。さらにいえば、定年延長期間となる60歳から65歳を、うまく頭を切り替え、有意義な余生への“モラトリウム”期間として、潤いある時間として過ごす人もいるという。

「研究所に在籍する人に対しては、早く60歳以前のことは捨てて切り替えてくださいといっています。そうすることが、うまくやっていくコツ。実際、現役時代ほどの責任はなくキャリアを生かせる仕事に継続して従事できることでゆとりが生まれ、部下のサポートなどを積極的に行っているようすです。その結果、若手とベテランの関係がうまくかみ合っている感じがしています。プライベートでも、初めて海外旅行に行った、なんて人もいて、しっかりと切り替えて働けているみたいですね」(今社長)。

いいことづくめのシステムに潜む課題とは

タニタ専属の派遣からの脱皮が課題

タニタ専属の派遣からの脱皮が課題

こうみると、ここまでは同システムはいいことづくめだ。だが、課題がないワケではない。現状では、派遣先がタニタ限定。従って、万一、同社の業績が落ちるようなことがあれば、派遣するだけの仕事があるかの保証はない。タニタ総合研究所では、そうした部分を踏まえ、タニタ専属の派遣会社からの脱皮も視野に入れながら、業務拡大の模索を続けている。

高齢者の有効活用は企業にとって不可避のテーマ

年金受給開始の引き上げ上げに伴う、高齢者の雇用延長により、企業はその対応に苦慮している。高齢者のキャリアは生かす価値があり、その場所がないわけではない。しかし、それだけ人件費が圧迫され、若者の雇用への影響も避けられない。天秤にかけたとき、どうすることがベターなのか…。高齢者の自尊心を損なわず、かつ下の世代と円滑に融合し、高い生産性へとつなげられれば、今後を考えても最も望ましい形といえる。非常に難しい課題だが、タニタの事例には、参考にできる要素が、多分に含まれているとはいえそうだ。


<高齢労働者の定年延長>
タニタで働く人平成25年4月1日から高年齢者雇用安定法を一部改正したものが施行された。改正部分は、定年以降の継続雇用制度における、希望者全員を対象としない、という例外措置の廃止。つまり、企業は基本希望者全員を継続雇用することが義務付けられた。背景には、来年4月から厚生年金の支給年齢が段階的に引き上げられることに伴う、年金給付までの空白期間発生対策がある。これにより企業は、中高年の給与や若者の採用抑制などを強いられ、悩ましい課題となっている。

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