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一人文具メイカー増殖の背景

投稿日:2014年7月9日 / by 瓦版編集部

『第25回国際文具・紙製品展』開幕

一人文具メーカー

製品を手にする一人文具メイ カーの面々(左から佐川氏、阿部氏、紀氏)

個性際立つ「一人文具メイカー」製品

『第25回国際文具・紙製品展』が2014年7月9日(~11日)、都内で開幕した。あらゆる文具・紙製品オフィス用品が集うアジア最大の文具商談会には、初日から多数の来場者が訪れた。斬新で革新的な製品が揃う中、瓦版では、ひときわ個性が際立つ「一人文具メーカー」に注目した。

大手や老舗メーカー、世界中の文具メイカーが軒を連ねる中、「mono MAKERS」のブースは独特の個性を放ち、多くの来場者を引き寄せた。同ブースは、一人文具メイカーの阿部ダイキ氏が音頭をとり、一人文具メイカー4社を集め、共同出展した。

集結した注目5製品

右手に筆記サポートツール、左手に「伊葉ノート」を持つ宮坂氏

右手に筆記サポートツール、左手に「伊葉ノート」を持つ宮坂氏

すでにヒット文具を連発する「Beahouse」阿部氏は今回、新作「自由メイシイレ」を披露。同製品は、名刺交換の際の手の動きを計算し、名刺入れをゼロから再設計。名刺の出し入れをスムースにした上で、デザイン性も高め、薄型とし、これまでにない名刺入れに仕上げている。

(株)あたぼうの佐川博樹氏は、「スライド手帳」の改良版を公開。その名の通り、システム手帳の紙の穴の位置を工夫することで、スケジュールをスライドさせて管理するというアイディア製品。常に見開き2週間が見れ、バインダー本体の折り目を平らにするなど、使い勝手にもすぐれる。東急ハンズで開催された2013年の手帳総選挙では並み居る大手メーカーを抑え、1位に選ばれている。

本出展ではないが、「kino.Q」の紀理有子氏は「メジャーマフラー」に続く新作「テガミト」を出品。同製品は、シーリングワックスをモチーフとしたアクセサリーとメッセージを探せるポストカードがセットになったレトロな手紙アクセサリー。「アリガトウ」、「ホンノキモチ」、「ヨロシク」など、ハートマーク状になったカタカナ文字の中から、普段は少し恥ずかしくし言いにくい言葉を選び、気持ちを伝えることができるハートフルなアイテムだ。

松原氏

スライド式ブックカバーを披露した松原氏

“山梨のダ・ヴィンチ”の異名を誇る宮坂弥氏は「伊葉ノート」の改良版を公開。同製品は、人間の手の動きを考え、扇形のような形をしたノートで、かなり奇抜なデザイン。あくまで独自理論だが、利用者は「使いやすい」とうなり、その独特の形状もあって、注目されている。今回は、速く書ける筆記サポートツール(左下)も併せて披露した。

IDICの松原智聡氏は、地元の埼玉・小川町の特産品、小川和紙と本を優しく素早く付けられる独自構造のスライド式ブックカバーを組み合わせた「Dear Books」を参考出品。秋をめどに本格販売をスタートする同製品のマーケティングも兼ね、製品PRとともに来訪者からの意見収集に励んだ。

なぜユーザーを魅了するのか

モノメーカーブース

絶え間なく人が訪れたモノメーカーブース

絶え間なく人が訪れ、熱心に話を聞く姿が特に目立った同ブース。製品の個性やユニークさはもちろんだが、その背景にある一人メイカーの人生が製品ににじみ出ていることがその大きな要因といえるだろう。

「伊葉ノート」の宮坂氏は、50にして一人メイカーズとなった元サラリーマン。「会社員時代と違い毎日が崖っぷち」といいながらも「文具のことだといくらでもアイディが湧き出てくる」とイキイキしている。紀氏は、新卒で就職するも3か月で退社。ニートを経て起業した。「何も知らないからできたんだと思います」とあっけらかんと明かす。IDIC松原氏は、「やり尽くした」と会社を辞め、3年ほどアジアを放浪。今年になって一人メイカー転身を果たした。佐川氏は、敏腕中小企業診断士の傍ら、一人メイカーとしてアイディア文具を手掛ける知的な二刀流文具メーカーだ。

今回の共同出展をとりまとめる阿部氏は「ここへきて3Dプリンタの普及や起業しやすい環境が整備され、個人単位でメイカー業を創業することが簡単になりつつあります。一人文具メーカーが生み出す製品は、作り手の熱い想いをそのままカタチにしたモノが多く、アイディアにあふれています。そうしたこともあり、メディアコンテンツとしても注目されています」と昨今の潮流を解説する。

一人文具メイカー増殖を後押しする新たな動き

一人文具メイカーが増殖する中で、新たなインフラを構築する動きも起こりつつある。一人文具メイカーの製品をネット上に集約し、販売するECサイト「mono MAKAERS.com」の開設だ。牽引するのは、昭和23年創業の文具店、(株)「つばめや」の高木芳紀氏。毎週金曜日に都内で「文具の朝活」を主催し、文具関係者との幅広いつながりも持つ、“文具業界活性化サポーター”だ。

手書きサポートツール

紙の質でなく手の方を滑りやすくする発想で誕生した宮坂氏の製品。山梨のダ・ヴィンチの異名はだてじゃない

「私自身も文具業界に携わる身として、一人メイカーが増えていく流れというのは、すごくいいことだと思っています。文具に対する思いは人それぞれで、それが製品に反映されるというのは、まさに文具の魅力でもあると思います。一方で、そうした人たちは売ることに関しては不得手である場合が多いので、なんとかその部分をサポートできれば、と一人メイカーに特化したECサイトの立ち上げを思い立ち、いま開設へ向け準備をしています」と高木氏は展望を明かす。

文具に限らず昨今、自分の想いを形にする“1人メイカー”が、続々と誕生している。会社に所属しながらの人もいれば、独立してフリーランスとして活動している人もいる。“一人”だけに決して楽しいことばかりではないが、上記5人は「自分の想いを形にできるやりがいに勝るものはない」と口を揃える。そうした中で一人メイカーが軸となる新たな共同体構築の動きも出始めている。現在、密かにアイディアやスキルに磨きをかけている“予備軍”が、次の一歩を踏み出す環境は一層整備されていきそうなだけに、今後の動向はますます注目される。

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