「法律、会社、労働者」の観点から残業をなくす方法
残業をなくすためには、主に『法律、会社、労働者』という3つの要素を変化させるという方法が挙げられる。
過労死(karoshi)という言葉が国際語となるほど、過度な残業が社会問題化している現代において、すべての残業を駆逐するのは容易ではない。まずは社会に蔓延する残業が発生する理由という部分から、具体的な方法を順に紹介していこう。
労働基準法を変えて残業をなくす
そもそも残業が発生するのは、働くうえでのルールをまとめた労働基準法に、抜け穴が存在するのが大きな理由だ。
現在(2016年9月)の労働基準法でも、1日8時間、週40時間を超えて働くことができず、残業は違法扱いである。しかし、労働基準法36条(通称サブロク協定)によって、例外的に労働時間の延長限度を伸ばすことも可能となっている。この延長限度にも1カ月45時間、1年間360時間という上限が設けられているが、なんと特別な理由という名目さえあれば、この上限さえも取り去ることが可能なのだ。
そのため、適当な理由さえ付けてしまえば、事実上無限に残業をさせても問題なしという恐ろしい法律がまかり通っている。この法律が変わり、残業をすることで企業に対して罰則が与えられるようになれば、誰も残業はしなくなるはずだ。
だが残業問題はそこまで単純な話でもなく、中には労働者が残業を行った記録を抹消したり、自主退社に追い込んだりと、非道な手段をとる企業も存在する。たとえ法律が変わっても、現在のように違法であることを隠しながら、企業を運営する経営者も現れるだろう。そのため、ある程度の効果こそ期待できるが、法律の改定だけでは社会に蔓延る残業という習慣を駆逐させることはできない。
さらに、一個人の力で法律を変えるというのも現実的ではないため、この方法を実行に移すのは難しい。同志を募り、労働環境の改善をマニフェストに掲げる政党や候補者に対して、選挙の際に票を入れる程度だろう。
会社のルールを変えて残業をなくす
企業には、それぞれ会社内でのルールを細かく定めた就業規則が存在する。
この就業規則に対して、残業に関するルールや上限時間を細かく規定してあれば、無茶な残業を引き受けなくて済むだろう。さらに、規則を設けることで、自然と会社内でも残業することを悪とする風潮が生まれ、早々と帰宅しやすくなるのも必至だ。また、時間内で仕事を終わらせようとするモチベーションも生まれやすくなるので、社員の業務効率をアップさせる効果ももたらしてくれる。
就業規則も労働基準法と同じく、一個人で改定することは難しい。だが規則を変えられる権限を持つほどに自身が昇進した際や、独立して会社を立ち上げる際には、この知識は覚えておいて損はない。これは現代が、労働者に十分なケアが行き届いていない企業に冷たい視線が向けられる時代となっているからだ。
とりわけ労働者に対して過剰な残業を課した企業の情報が、インターネットサイトやSNSを通じて大衆の目に晒されることも少なくない。ブラック企業という言葉が世間に浸透して久しいが、社会的なイメージダウンを避けるために、会社を挙げて労働環境の改善に取り組む企業も増えている。
労働者が率先して残業を断る
残業をお願いされた際にキッパリ断るというのも、無茶な残業をなくす立派な方法だ。これは労働者自身がしっかりと自分の意思を持ち、残業を拒否できるようにならなければならない。
日本は法律や就業規則というものを除いても、様々な要素が重なって自然と残業が発生しやすい労働環境となっている。他者の目を気にしやすく滅私奉公を美徳とする国民性、さらに特異なことをする人間の多くが淘汰される社会であっては、黙って仕事をやり続けるほかないだろう。残業しやすいというよりも、残業をせざるえない労働環境と言っても過言ではない。
また定時を迎えても、みんながまだ働いているから、嫌々ながら仕事を続けているというのも、残業が発生するありがちな理由だ。時間内に仕事が終わらないので、仕方なく残業しているというケースも珍しくない。このように、残業は労働者側の善意によって支えられていることがほとんどである。
そのため、労働者が仕事は仕事と割り切って、絶対に定時で帰るという強い意志を持つことで、残業をなくすことができるだろう。仕事が終わらないため残業している場合においても、仕事を振り分けた上司の責任とでも割り切ることができれば完璧である。傲慢すぎる気がするが、このくらい豪気に振る舞わなければ、申し訳ないという気持ちに負けて過度に仕事を引き受けてしまいがちだからだ。
この3種類の方法うち、1つでも実践させることができれば、苦しい残業から解放される希望が見えてくるだろう。会社で働くうえで残業をしたくない人や、過度な残業に悩んでいる人は、有効な解決策のひとつとして記憶の片隅に留めておきたい。