働き方

生涯現役時代の到来は、日本の明るい未来につながるのか…

投稿日:2017年4月10日 / by

「生涯現役」の響きは心地いいが…

働き方改革が加速する背景には、人口減少および高齢化の深刻化がある。年金受給問題とも密接にリンクするこの2つの難題を一気に解消する施策として、企業による定年延長が実施され、いまや65歳は標準化しつつある。さらに、70歳、生涯現役も現実味を帯びている。これで本当に日本の未来は少しは明るくなるのか…。

約半世紀前、定年は55歳だった

1970年代、定年は55歳だった。その後、60歳、65歳と延長され、いまや生涯現役を打ち出す企業もある。半世紀弱で10年以上定年が伸びている現状からすれば、生涯現役が標準となる時代もそう遠くないのかもしれない。現在の65歳が元気であることを考えても、無理やり感はない。問題は、高齢で働き続ける場合、多くは報酬が大幅に減少する。それでも仕事に対し、やりがいをキープし、イキイキ向き合えるのか、という点だ。

ファンケル資料より

2017年4月から人事制度を刷新し、<一生涯働ける職場づくり>を打ち出した(株)ファンケル。その仕組みは、従来の65歳までの継続雇用に加え、新たに「アクティブシニア社員」という雇用区分を設け、定年を廃止するというもの。ポイントは、労働意欲が高く、今後も会社で力を発揮できるシニアがその対象という点。つまり、惰性で働くのではなく、主体的に働き続けたい、実力あるシニアが輝ける職場を用意するということだ。

日本のシニアは就労意欲が高いといわれる。やりがいを感じていれば、仕事を続けるという人は少なくない。ファンケルでは、同制度での雇用では、勤務日数や時間は、本人の希望を勘案。体力的にきつければ、柔軟に調整することが可能だ。こうしたことを踏まえても、シニアが自らの意志で働き方を設計し、企業が戦力として貢献できると判定した上での再雇用となるなら、まさにウインウイン。目論見通り、一生涯輝ける職場の実現も不可能ではないだろう。

生涯現役の人事制度に透ける会社員人生の晩年

同様の生涯現役制度を2015年4月から導入する大和ハウスでは、就労希望の65歳以降では給与と勤務日数は固定。しっかりとした審査の上で、毎年更新が行われる。それはさながら、プロフェッショナルとしての契約という印象だ。企業にとっては、人材不足が深刻な昨今、優秀な人材なら雇用したいのは当然だ。そこに年齢は関係ない、ということだろう。逆にいえば、生涯現役が広がる潮流は、シニアになってもたゆまぬ向上心を持ち続けなければいけないという、ある意味では厳しい状況へのシフトともいえる。

サントリーがそもそもの定年ラインを65歳に引き上げた事例のように、多くの企業が定年をスライドすれば、体力的な問題こそあれ、シニア社員のモチベーションが下がることはないだろう。だが、人件費増大を考えれば、実行できる企業は限られ、こうしたケースはレアと考えるのが妥当だ。そうなれば、もう雇われたくない、というシニアが就労継続先として進む道は、起業かフリーランス、もしくはシニア専門の派遣となる。もっとも、派遣はともかく、金銭的に余裕がないなら、少なからずリスクはあり、賢明な選択とは思えない…。

生涯現役を楽しめるか否かの分岐点は仕事との関係性

かつて定年は、長い会社勤めを終えたゴールであり、隠居生活への入り口だった。だがいまや、リタイアしても十分な退職金をもらえず、頼りの年金も怪しい状況だ。そこで、延長された定年に仕方なく乗っかっても、給与は大幅ダウン。それでも会社へはそれなりの貢献を求められる…。

「なぜ70歳を過ぎてまで働かねばならないのか…」。生涯現役。響きは最高だが、戦力として役に立たなければ、お荷物でしかなく、現実は、大半が“晩年苦役”になりかねない。そうならないためには、シニア世代がもうひと踏ん張りし、気持ちをスイッチすることを願うばかりだが、一方でこれが今後、当たり前になると考えると複雑な気持ちにもなる…。

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