お金のために働くことがズレている理由
お金をもらう時でなく払う時に感謝するワケ
お金を稼ぐ、という行為。それはとても、大事なものだと思います。どんな仕事であろうとも、人の役に立つことは、素晴らしいことなのです。お金を払う、という行為。実はこれも、とても大事なものだと思います。誰かが一生懸命やった仕事に対して、感謝して、喜んで、お金を払うのです。
私は仕事でお金を頂く時、つまり仕事を発注してもらう時には、お礼の言葉を述べません。何か違うよなあ、と感じるからです。
でもお金を支払うとき、つまり誰かに仕事をしてもらう時には、感謝の気持ちを伝えます。それがとても自然なことに、感じるからです。コピーを書いてもらった時、カクテルをつくってもらった時、タクシーに乗せてもらった時、お金を払いながら、お礼の言葉を伝えます。
もちろん、手抜きのコピーとか、とても不味いカクテルとか、乱暴なタクシーとかには、感謝の気持ちは述べません。「ちょっと酷いんじゃないですか」と、正直に伝えます。お金を払っているからではなく、仕事にプライドを感じないからです。
働く目的を間違えるとおかしなことになる
お金のために働く人は、お金相応の仕事しかしません。たった数百円のカクテルや、たった数百円の運賃のために、一生懸命やるのはバカらしいと思っているのです。
相手に喜んでもらうために働く人は、金額に関係なく良い仕事をします。喜んでもらえる、良いコピーを書きたい。美味しいカクテルをつくりたい。快適に目的地まで送り届けたい。そういう仕事をされると、もう感謝せずにはいられません。お金を払っているのだから当然、などとは思えない。心から感謝して、表彰状でも渡しながら、お金を支払いたくなります。
お金を払う側は、何かをやってもらう側。だから感謝するのは当たり前。お金を受け取る側は、役に立つことをする側。だから一生懸命、役に立とうとするのは当たり前。
いくらもらったから、何をやるとか。いくら払ったから、何をやって欲しいとか。お金を基準に考えるから、偉そうになったり、卑屈になったり、おかしなことになるのです。
お金は単なる道具です。役割と役割を、交換するための道具。払う側は、助けてもらう側だから、ありがとうと言う。こんなシンプルなことを、なぜ人はややこしくしてしまうのでしょうか…。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。