
自分に自信を持てない人はどこに問題があるのか
他人の評価は「現在」にしかない
私は長らく、失敗経験をネタに講演を続けてきました。自分を戒めるため。失敗した過去を、決して忘れないため。でもやっぱり、心のどこかで、、「オレは出来る人材だ」、「実績のある経営者だ」という思いがあったのです。
それが、奢りだったのかどうか。そんなことは、どうでもいいのです。重要なのは、過去に囚われていたこと。今を生きていなかった、ということ。講演では自虐ネタばかり言うので、慰めてくれる人もいました。なんだかんだ言って、安田さんは凄いですよ。ワイキューブはいい会社でしたよ、と。
確かに、自信を喪失している時期もありました。でもそれは、失敗したからではないのです。今の自分に、自信が持てなかったから。そこに気がつくのに、何年もかかりました。自分を戒めても、自分を卑下しても、決して自信は戻りません。自分を励ましても、他人に褒められても、やっぱり自信は戻りませんでした。
それは、なぜか。それはどちらも、過去への執着だからです。失敗した過去も、褒められる過去も、今の自分とは、何の関係もないのです。過去に囚われないことは、本当に難しいです。執着していないつもりでも、夢に出てきたりします。つまりは、囚われているのです。失敗も成功も含めた、自分自身の過去に。
本当のいまを動き始めるためにすべきこと
今、私はそれなりの自信を持って、生きています。過大評価もせず、過小評価もせず、等身大の評価から生まれる、自信。でもそれを手に入れるのに、五年かかりました。結局のところ、現在しかないのです。他人の評価も、自分の評価も、現在にしかない。私の過去を評価してくれる人だって、過去に対してお金を払ってくれたりはしないのです。
今、自分が出来ることに集中する。今、自分の目の前にいる人の役に立つ。その積み重ねによって、今のレベルが上がる。その結果、今の評価、今の自信が、高まるのです。
私には強烈な成功体験と、失敗体験があります。全てを失敗だったと、思い込む必要はない。全てが成功だったと、思い込むのは単なる勘違い。どちらもあった、という理解が正しいのです。
かなりキツい、失敗体験でした。かなり傷ついたし、落ち込みました。でもそれは、時間が解決してくれるのです。解決されないのが、成功したことへの執着。失敗も、成功も、受け入れて忘れる。その時、本当の今が、動き始めるのです。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。