働き方

出戻り社員は本当に戦力として使えるのか

投稿日:2018年5月16日 / by

多様な働き方が救う人手不足という難局 Vol.4

出戻り人材の気になる実態【後編】

出戻りを受け入れる企業が7割を超える一方で、否定派ももちろん存在する。倫理観やしこりが残るといった感情的な理由が大半だ。とはいえ、ほとんどの企業は、受け入れにあたり、再試験を厳格に行うなど、一定の“けじめ”をつけている。出戻り採用の後編(前編)では再雇用の実例から、その実態に迫る。

すかいらーくには、出産や子育てなどで職場を離れた元社員に広く呼びかける再雇用制度がある。とはいえ、以前の経験が優遇されることはなく、選考はあくまでフラット。その意味では、同社の再雇用選考は、過去のわだかまりがあったとしてもそれをリセットし、純粋に戦力として見極めるための場といえるのかもしれない。

CROOZの出戻り制度は、対照的にかなりフレンドリーな印象だ。辞めた社員に“往復チケット”を与え、期限内ならいつでも戻れるというスタイル。退職社員に“逃げ道”を与える側面もあり、甘さも透けて見えるが、逆にいえば、離職者は片道切符でない分、新たなチャレンジを思い切ってできるともいえる。同社にとっては、変則的な人材への投資という側面もあるのだろう。

「Wellcomeback制度」として出戻り社員の受け入れを制度化しているエン・ジャパン。同社では社内報で、出戻り社員を告知するなど、復帰後の職場浸透を積極的にサポート。そうしたことによる、副次的な効果も生み出している。「現役社員、特に当社しか知らない新卒入社社員にとっては、『出戻り社員がなぜ戻ったのか』、『外から見たエン・ジャパンの良さ』を聞くことで、自社の良さを再認識する機会となっています」と同社では、出戻りならではの効果を明かす。

戦力としてはもちろんだが、元社員だけにしかできない、職場の士気を高めるフィードバック。実際に復職してからでないと見えづらい側面だが、出戻り社員の活用にはこうした効用もある。

出戻り人材が事業をけん引する事例も

スマートフォン向けアプリの開発などを行うブレイブソフトでは、出戻り社員が活躍し、メイン事業のチーフエンジニアとして事業をけん引している。同氏は、独立を目指して退職したが、出戻り制度でUターン。「わが社は出戻りは非常にウェルカム。ただし、面接は中途採用同様厳しく行い、馴れ合いでは判断しません。挑戦することを応援する社風なので、出ていくことも応援するし、また一緒にモノづくりをしたければ歓迎します」と同社は、その受け入れスタンスを明かす。良くも悪くもドライで中立。このフラットさが、出戻り社員のポテンシャルを引き出すポイントといえるかもしれない。

<一度辞めた社員>という側面だけをみれば、悪い印象がある出戻り社員。だが、退職後の成長や気持ちの変化があることを考慮すれば、些細な事ともいえる。もちろん、「退職時には会社に対し、なにかしら不満があったと思う。再入社して、その不満は解消するのか疑問なので、再雇用は考えていない」という声もある。エン・ジャパンの再雇用調査で「今後も再雇用の予定はない」と回答したある企業の声だ。確かにその通りといえる部分もあるが、純粋に戦力として考えれば、無関係の要素ともいえる。

少数ながら否定派が存在するものの、それ以上の広がりを見せる出戻り人材の活用。まだまだ補完的であり、戦略的とはいえないが、企業側の対応は着実に軟化しており、今後ますます深刻になる人手不足をフォローするひとつの手段として、一定の役割を果たしていきそうだ。(続く)

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