企業風土

自由な社風を醸成する管理の在り方とは

投稿日:2016年4月27日 / by

キングソフト(株)
自由なのに秩序が保たれ成果もあがる秘密

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「KINGSOFT Office」や「KINGSOFT Internet Security」で知られるキングソフト(株)。同社はいま、ターゲット市場をパソコンからスマートフォンへとシフトさせ、スマホソリューション事業の強化やモバイル広告事業への本格参入など、新たなフェーズに入っている。抜群の製品認知度の割に、意外に「?」な、その社風は、まさに「自由」という言葉に集約されるといっていい――。大きな「自由」の中に、しっかりと組織が機能する仕組みが融和する、絶妙のバランスはどう形作られるのか。その秘密に迫る。

なぜ自由が文化として浸透するのか

企業は人によって繁栄も衰退もする。人材がその能力を最大限に発揮できれば、企業が繁栄への道へ向うのは言うまでもない。ダイバーシティ経営の重要性が増す中で、多様な人材のチカラをうまく引き出すことが求められている昨今だが、管理と自由のバランスもあり、一筋縄ではいかないのが実状だ。

「自由」をうまい具合に文化として浸透させる同社は、なぜ、難題をクリアできているのか…。まず感じるのが、閉塞感のなさだ。トップが中国人の同社は、外国人社員も多く、ベースとして自由を許容する風土がある。その上に個性的で多様な人材が集い、さらに組織自体もフラットで、幹部や社長との距離が近い。会社という枠組みに確かに収まってはいるが、そこに押し込めるような型も、押し付けるような圧力も基本的に存在しないのだ。

メディアマーケティング事業Div. 広報PRの新田大航氏は、そのムードについて次のように解説する。「これまでにいくつかの会社で働いた経験でいうと、ここは型にはめ込むような空気はないですね。一般的にはどうしてもベテランの人がいて、昔からのやり方と会社のやり方を優先して、独自のやり方を否定されがちですけど、ここは各自のやり方を尊重してくれる。とても仕事がしやすいと感じています」。

多様な人材が自然に溶け込める社風の同社(左が新田氏、右が尾崎真弓氏:ともに広報PR)

多様な人材が自然に溶け込める社風の同社(左が新田氏、右が尾崎真弓氏:ともに広報PR)

多くの企業は、新田氏が指摘するように、各社の“やり方”があり、それに従うことが忠誠を示すことでもあり、ベストとされる。例えそれが、非効率であっても、だ。同社では、最優先はあくまで目標達成。そこへ到達するためのアプローチは、各自の裁量に大幅に任される。そして、そのためのサポートは、会社が全力で行う。そうした仕組みと信頼関係が出来上がっているから、大きな自由が与えられても、そこからはみ出す者はいない。まさに自由と管理のバランスが絶妙なのだ。

個々の働きやすさを考慮した制度が「自由」をサポート

分かりやすい事例でみてみよう。同社では、フルフレックス制度を導入している。従って、各自の都合に合わせ、始業時間を選択できる。産休・育休後の時短勤務も小学校卒業時までOKだ。もちろん、形だけでなく、各自が都合に合わせ、有効に活用している。始業・終業時間は、プライベートとのバランスを考えても、管理が強いほど、融通の利かない負の制約となりがちだが、同社では、8時間労働、という“制約”以外は、ほぼ自由となっている。

働き方にも制約がほとんどない。象徴的なのは、副業の容認だ。同社執行役員の小林慎太郎氏は、ラブレターの代筆からスピーチライティング、就職・転職対策で複数の副業を実践。テレビやラジオにも出演を果たすほどの活躍をしている。もちろん、個人の楽しみだけにとどまらず、本業にもプラスに作用しており、まさに能力の最大化につながっている。

フラワーアレンジメントを指導する新田氏

フラワーアレンジメントを指導する新田氏

自由だから存分に発揮される多様な人材のパフォーマンス

外国人社員も多いグローバルな会社だが、人材面での自由度も高い。その象徴といえるのが、前出の新田氏だ。実は新田氏はゲイ。その事実は、中途入社のあいさつの際に、包み隠さずオープンにしている。「別に隠してもしょうがないですし、それも含めて私のパーソナリティ。以前勤めた会社では、ゲイであることで嫌な思いをすることもありましたけど、ここは全くないですね」と新田氏。むしろ、ズバリ本質を突くオネェキャラとフラワーアレンジメントや語学力などマルチな才能を存分に発揮し、大活躍。社歴は長くはないが、社長から同僚にまで「ミランダ」の愛称で呼ばれ、すっかり溶け込み、親しまれている。

個人の成長を後押しする体制も充実している。「ジブツク」と呼ばれる制度では、社員ひとりに10万円が支給される。自分の成長のためなら何に使ってもよい。成果報告の必要こそあるが、「営業のためのスーツ購入」といった事例もあったといい、自分にプラスになることなら、基本使途は自由だ。イノベーションプロジェクトと呼ばれる新規事情提案企画もある。企画の提出はいつでもOKで、アイディアが稟議を通過すれば、プロジェクトを立ち上げ、着手できる。これまでに新卒一期生で入社した社員がアプリ開発で、製品化まで実現している。

風土・制度・人材。どれかひとつだけでは、個人個人が働きやすい環境は創りだせない。かといって、全てを揃え、有機的にリンクさせるのも簡単でない。同社の事例からみえてくるのは、なによりもまず、トップの意志をベースにした風土づくりがあり、そして、そこにハマる人材の獲得。この2つに注力し、あとは制度を柔軟に付加しながら、微調整し、各自がしっくりするスタイルへ持っていく--。それがこれからの組織で重要となる多様性を最大化する「自由」な会社のつくり方の極意といえそうだ。


<会社概要>
KINGSOFT会社名:キングソフト株式会社
住所:〒107-0052 東京都港区赤坂四丁目15番1号 赤坂ガーデンシティ4階
代表者:代表取締役会長 翁 永飆 / 取締役社長 馮達
設立:2005年3月9日
資本金:6億1920万円(資本準備金含む)
主要株主:Cheetah Mobile Inc.、Kingsoft Office Software、Kingsoft Corporation Limited

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