企業風土

新人の早期離職を防ぐため、入社後に企業が注意すべき3つのポイント

投稿日:2016年5月30日 / by

見落としがちなギャップを生み出すささいな要因

なぜ辞めるんだろうか。せっかく入社した新入社員がわずかの期間で離職してしまうのは辛く、悲しいものだ。入社までのプロセスで、人物評価や意思確認も十分にしたはずなのに…。若者離職率は、長年3割前後で推移している。とはいえ、自社に限っては、入った新人に末永く在籍してもらい、戦力として活躍してくれることを願うのは当然の心情だろう。専門家のアドバイスから、どうすれば新人の早期離職を防止できるのかを考察する。

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新人研修や早期戦力化などに精通する横田氏

どうしてもナーバスにになりがちな新人対応

毎年、春になると新人のタイプが各機関から発表される。「消せるボールペン型」、「スマート家電型」「自動ブレーキ型」、「ロボット掃除機化型」…など、時事ネタと絡めたカテゴライズは、見事に新人の特徴を捉えており、感服する。もっとも、全員がこうした傾向通りなら対応は簡単だが、そうでないから、企業、特に上司や新人の教育担当者は、新人の扱いにナーバスにならざるを得ない。

1:世代間ギャップはあって当然

エン・ジャパン人材活躍支援事業部コンサルタントグループマネージャーの横田昌稔氏は、新入社員と会社の適正な距離感について、次のように話す。「今年の新人は周囲への興味関心が薄く、自分の世界を守るといわれています。ただそれは、前の世代と比較した良し悪しでなく、育ってきた環境によるもの。ですから、上司側は、そうした背景を理解し、お互いに歩み寄る努力をすべきです。そもそも『最近の若い者は』というフレーズは、2000年前からあるともいわれています。いつの時代も自分たちの当り前が、他の世代にとって当り前ではないことを意識すべきです」。そのつもりはなくても、言外に、世代間ギャップがにじむ指導をしている可能性はある。そこは上司側も、自身が新人の“経験者”としてのスタンスを忘れないことがポイントといえそうだ。

2:コミュニケーションの質

次にチェックすべきは社内コミュニケーション。入社前には、まさに相思相愛のようにいいムードだった関係が、入社後に一転、新人側の頭の中が違和感で充満することがある。その原因のチェックポイントは、コミュニケーションの質だ。横田氏が解説する。「新人とのコミュニケーションで重要なのは、密度より頻度といわれています。週一回の居酒屋でのノミニケ―ションよりも、1日15分のまめなコミュニケーションの方が、効果的なのです。会社全体のムードつくりという点でもそうした質の影響は小さくありません」。新人に限らず、離職原因の万年上位に位置する「人間関係」。意外に見落とされがちだが、「頻度」を軸に、改めてその質をチェックしてみると、新人が覚える違和感の原因があぶりだされるかもしれない。

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マネージャ向けの研修でリテンション等に関する講座も行う横田氏

3:トラブル解決の仕組み

最後のポイントは新人が行き詰った時の解決の仕組みの有無。社会人として未熟な新人が、早い段階で行き詰ることは珍しくない。大切なのは、その時、解決する仕組みが整っているかだ。こうした点について横田氏は、次のようにアドバイスする。「入社後しばらくすると隣の芝が青く見えてくる。それを容認するのは互いのためにならない。そこで重要なのが、相談しやいす環境をつくっておくこと。メンターをつけるのがいいが、そこまでできる会社は少ないだろう。とはいえ直属の上司だけでは人間関係に行き詰まってしまう。全社横断で、任せられる先輩をチョイスし、ランチミーティングの場を設けたりするだけでもかなり違う」。新人はどうしても悩みを抱え込みがち。メンタルケアとまではいかないが、そうした時にしっかりと“ガス抜き”できる仕組みがあるだけで、離職率は大幅に改善するハズだ。

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考え方は入社後に替えるのが困難。その意味で入り口の部分は重要という横田氏。

<まとめ>

キーワードは「孤立させない」こと

若者の3年以内の離職率は長年、3割前後で長年推移している。これをもって、新人が一定数離脱するのは仕方がないと諦めるのは簡単だ。会社側が新人側に媚びる必要は全くないが、とはいえ相思相愛で獲得した貴重な人材に違いない。できるなら企業の成長を共に分かち合う戦力に育ってもらいたいハズだ。ポイントは、すでに入社しているという事実。当たり前だが、その直前までは、いろいろな部分を擂り合せ、互いに“合意”している。だからこそ、入社後に新人が違和感を覚えたとすれば、横田氏が指摘する様に「互いに歩み寄る」ことが重要になる。入社した途端、関係性が豹変するとすれば、新人側は戸惑い、違和感を覚えるだろう。会社側にも不信感を抱く。会社側にしても“合意”したはず、との思いがあるだろうが、行き違いは当然ある。大切なのは、そうした際の、溝を埋める仕組みや風土があるかどうか…。新人を「孤立させない」。それが定着率をアップするキーワードといえそうだ。

◇参考⇒若者離職率


<プロフィール>横田昌稔
1974年埼玉県生まれ。総合商社でのインドネシア駐在を経て、2002年に日本ブレーンセンター(現:エン・ジャパン)に入社。ベンチャーから大手企業の教育コンサルティングに従事しながら営業グループマネージャーを歴任。コンサルタントとして主に採用支援教育、早期戦力化支援教育、営業組織支援ならびに管理職教育や、定額制研修サービス「エンカレッジ」の講座開発・講師業務に従事。

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