企業風土

なぜ心が折れる職場が増えているのか【瓦版書評】

投稿日:2016年7月20日 / by

なぜ職場の空気が澱んでいるのか

オフィスがあり、デスクがあり、イスがあり、パソコンがあり、そして、そこに上司がいて部下がいて、同僚がいる。会議があり、雑談があり、コーヒーブレイクがある。職場は、分解すれば、さまざまな要素で構成されている。いい職場があるとすれば、それら全てのバランスがうまくとれている空間ということになるだろう。

心が折れる職場:日本経済新聞出版社

心が折れる職場:日本経済新聞出版社

逆にいえば、パソコンのスペックが低い、デスクとイスが体にフィットしないといったことも、社員のストレスにつながる。パワハラ上司がいれば、その部署は全体に澱んだ空気になるだろう。雑談ゼロの業務効率最優先も無味乾燥で気がめいる。感じの悪い同僚がいれば、居心地が悪い…。ちょっとしたバランスの崩壊で、全体に悪影響が及ぶことは、職場に限らずよくあることだ。

「私の職場は最高です」。ヨロシクない職場環境でもそう思う社員がいる一方、「ウチの職場は最悪だ」と当然のように不満タラタラの社員もいよう。いい職場を目指すのは、企業にとって多くのメリットがあり、間違っていはいない。だが、様々な要素で構成される職場ゆえに、どこにポイントをあてるのかを明確にしなければ、笛吹けど踊らずは目に見えている。そもそも全員が満足する職場づくりには無理がある。

澱んだ職場を“改善”する方法とは

では、どうすれば高い生産性を発揮し、やりがいを持つ職場を創りだせるのか…。どれか一つを重視するとすればやはり、人間関係ということになろう。離職理由の万年上位に君臨する人間関係は、たいていの場合、十分にコミュニケーションが行われていないことが元凶となっている。一方的で威圧的は論外。会話が双方向に行き交っていてもかみ合っていなければ意味がない。いかに信頼し合ったうえでコミュニケーションできるかが重要だ。

同書では冒頭に、飲み会の少ない職場ではメンタル不調が多発すると記されている。単なるノミニケ―ション礼賛でなく、仕事終わりに気軽に飲みに誘えるムードがあるか否かが重要ということだ。たかが飲み会の誘い、といっても会社のムードによっては「断れれたらどうしよう」、「そんな誘いをしていいものなのか…」と声をかけづらかったりする。こうした会社がスムースにプロジェクトを回せるとは到底思えない。チーム運営に重要なコミュニケーションが不十分なのは明らかだからだ。

昨今はこうした職場が増えていると同書では指摘する。その原因は、長びく景気低迷による「余裕のなさ」にあるという。余裕がないから育成できない、育成しないから育たない、育っていないから不安が募り、ストレスが充満する…。結局、それぞれがそれぞれの経験値の下で目の前の業務に集中するしかなく、コミュニケーションは遮断され、各自が不満を溜めこみながら業務を行うという歪な職場が構築されてしまう…。

こうなると、職場はある種の我慢比べの場と化す。耐えられなくなるは=心が折れる。つまりメンタルが限界に達し、職場を去るという結末に向わざる得ない。せめていい上司が、いい同僚がいれば、悲劇は回避できたかもしれない。確かにそうだろう。だが、重要なことは、メンタル不調になってからの対処ではなく、なりづらい職場づくりにあるということだ。同書には、そのための事例が数多く収載されており、行き詰った時の悩みスパイラルを軽減してくれるヒントが詰まっている。

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