企業風土

まさに“自由自在”。就業時間の概念覆す取り組みで働きやすさを追求する企業の狙い

投稿日:2016年10月5日 / by

基本単位1週間の中なら、0時間~でもOKという柔軟性

(株)アイケイ

残業に上限を設ける動きもちらつくなど、残業撲滅へ取り組む企業が増えている。そうした中、そもそも、就業時間の概念を覆す取り組みで、働きやすさを追求する企業がある。(株)アイケイだ。その名もフリータイム制度。驚くほど柔軟な時間管理が可能な、まさに“自由自在の時間制度”。その実態は? 狙いは? 担当者を直撃した。

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就労時間の概念そのものの転換という大胆施策

残業削減の動きが、活発になっている。政府の呼びかけや企業自身が、社員の定着や健康に意識を向け始めた結果といえる。とはいえ、効果的に残業を減らしている企業はまだ少数派の印象だ。分かっていても実現は難しい…。そんな難題に同社は、全く違う方向から切り込んだ。就労時間の概念そのものの転換だ。

フリータイム制度には、なんと「1日8時間」の就労の決まりがない。基本単位は1週間。出社の必要がなければコアタイムすらない。これほどまでに自由で、一体どうやって、就業時間を固めるのか。同社管理チーム・チームマネージャーの江口英文氏が説明する。

「まず、1週間単位で仕事のスケジュールを考えます。勤務時間帯はAM6時~PM10時の時間帯です。この時間帯の中であれば、一日に何時間働いても構いません。当然、働かない日があっても構いません。0時間~各自の仕事に合わせて決められます。目安は週40時間ですがあくまでも目安です。毎週の勤務時間も各自のその期間(一週間)の業務量に応じて調整して頂きます。40時間未満となる週もあれば、当初から40時間を越える予定になる場合もあります」。

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自在のシフトで帰社時間も各自バラバラ

自由自在の時間管理を導入した狙い

つまり、社員は、1週間の中で、各自の公私に渡る繁忙を見極めながら、自由自在に勤務時間を組めるのだ。事実上休業日といえる日も盛り込めるという点は、かなり画期的といえる。導入前の勤務形態は、平日・月~金の8時40分~17時40分の8時間が定時だったことを考えれば、180度の大転換といっていいだろう。それにしてもなぜ、ここまで大胆なシステムを導入したのか。

「本格的に人口減少が始まった日本において、優秀な人材を確保し続ける事は、今後どの企業においても共通の課題と考えます。そして、人材確保は、常に新たな人材を確保する一方で、既存の社員さんに長く働く会社として当社を選んでいただく、選ばれ続ける必要があります。そのような観点から我々は今後一層進む少子高齢化社会において、子育てや急速な増加が予測される介護など、個々人のライフスタイルに合わせた働き方を提供する事こそが、社員からも選ばれ、社会からも選ばれる会社となる条件と考え、フリータイム制度の導入を決めました」(江口氏)。残業削減以前に、人口減少フェーズにおける人材確保という難題への危機感が、制度導入へと突き動かしたというワケだ。

ここまで社員側に時間管理を任せるだけに厳格な事前申請が必要とされる気もするが、意外なほど普通なのも驚きだ。「勤務日程の詳細については、前週までに詳細(全スケジュール)を社内ポータルサイトで明示すること。そして、詳細内容について上長との打合わせることを義務付けています。必ず前週に詳細スケジュールについての打合わせの場を上長と持つ事になっており、そこが、スケジュール提出の期限となります。理想は前週の金曜としておりますが、各自スケジュールに応じて打合わせ日程の変更は認めています」というように、厳しいというよりはむしろ、自然なフローという印象だ。

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頻繁に打ち合わせが行われる社内は活気にあふれている

残業削減効果はどうなのか

まさに自由自在の時間制度。社員にとっては、私生活の動きも加味した上でスケジュールを組めるため、働き続けるための仕組みとしては理想に近いものといえるだろう。一方で効果としては、必ずしも残業削減という意識が高まるワケではない気もする。その点について、江口氏は次のように補足する。「実は、制度導入時、本取組によって、残業時間削減など成果が出た場合、残業代が抑えられ、会社が得をした形で終わる事がないよう評価に盛り込み、配分する事も約束しています」。つまり、自在に時間管理しながら、業務効率を高め、残業を削減すれば、しっかりと評価される仕組みが組み込まれているのだ。徹底的に練り込まれた上で、採用された制度といるだろう。

導入後、まだ間もないが、その実態はどうなのか。江口氏が説明する。「導入したばかりですが、意識的に『制度を利用してやろう』といった姿勢が見られます。また、出社時間が早くなった社員が増えています。もちろん、従来制度の定時よりも前に退社する社員も増えました。この制度を導入する事で、仕事の終わりがイコール帰社の時間だった以前と比べ、予め決めた終了時間を意識して行動するようになり、結果、予定の時間に間に合わせようという意識が高まって効率的な業務をするようになったと感じます。以前はどちらかと言えば残業は多めでしたから」。根本的に勤務時間の概念が変わったことで、時間への意識そのものが変わったというのは、結果以上にスゴイ効果といえるだろう。

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ワークライフバランスが充実していれば、会社も家庭もうまく回る

常識に捉われない制度から拓かれる変革への道筋

残業を減らすというと、まず頭に浮かぶのは業務の効率化。だが、そもそも業務量が多ければ業務の先送りにしかならず、繁忙を考慮せず、一律に8時間勤務で働くことは社員を疲弊させるだけだ。固定概念で解決策を考えても、どうしても限界がある。そこを、そもそも、人材確保という観点から、いかにすれば各自が働きやすく、働き続けられるかにフォーカスしたことで、常識に捉われない同制度は生まれた。

必要は発明の母なり、というが、自社の課題と真剣に向き合い、そこから解決にアプローチすることで、本当に効果の期待できる制度は生まれる――。同社の事例はまさにそれを示しているといえるだろう。


【会社概要】
aikeihp社名:株式会社アイケイ
所在地:〒450-0002 名古屋市中村区名駅3-26-8 KDX名古屋駅前ビル5階
代表者:代表取締役社長 長野庄吾
設立:1982年5月1日
資本金:4億174万円
売上高:124億76百万円(2015年5月期連結)
従業員:217名(2015年5月期連結)
事業内容:化粧品を中心にアパレル、靴、ジュエリー、家庭用品などの雑貨品から食料品まで
幅広いジャンルを取扱いする総合企画メーカー。販売チャネルは多岐に渡り、通販ルート
から店舗ルート、最近では中国を始めとする海外市場にも展開を強化。

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