企業風土

もしも、会社の福利厚生で居酒屋が使い放題だったら…

投稿日:2016年11月2日 / by

太っ腹福利厚生を導入する経営トップの野望
(株)アイディーエス 中野貴志社長

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優秀な人材を獲得することが困難になっている。企業はこうした状況への対策として、職場環境の改善に前のめりになっている。同時に、既存社員のパフォーマンス最大化にも注力し始めている。IT企業の(株)アイディーエスが導入するのは、居酒屋との法人契約。なんと、社員なら会社全額負担で好きなだけ利用できる、うらやまし過ぎる制度だ。なぜそんな形の福利厚生を採用したのか。その理由は? 経営トップを直撃した。

飲みニケ―ションは組織円滑に有効な手段だが…

仕事終わりに上司や同僚と一杯。昨今は減少傾向にあるものの、職場とは違う開放的な場での飲みニケ―ションは、組織の潤滑油として大切だ。とはいえ、先の見えない景気の低迷で、会社員の懐は寂しい状況が続いている。後輩におごってやりたくても小遣いは毎日のランチ代で目一杯。世知辛い世の中だ。もしも、ひいきの居酒屋が、全額会社持ちで使い放題なら…。そのもしも、を実現しているのが同社だ。

居合わせた同僚と合流するなどの副次効果もあり、飲みニケ―ションで横のつながりが強固になっている

居合わせた同僚と合流するなどの副次効果もあり、飲みニケ―ションで横のつながりが強固になっている

なんと同社では、福利厚生の一環で、(株)ゲイトが運営する居酒屋チェーン「くろきん」と法人契約。会社近くの同居酒屋田町店が社員の夜の拠点となっている。夜の利用にかかる費用はもちろん、全額会社負担だ。粋で太っ腹な社長、中野貴志氏がその理由を明かす。「もともと飲みニケ―ションの文化はありました。ただ、ここ数年は会社が急成長を遂げる中で、中途入社も多く、コミュニケーションをとりづらい状況になっていました。そこで効果的な方法を模索する中で、最終的に居酒屋の活用となりました」。

利用にあたっては、2人以上からという以外、制約はなし。上長への事前承認も不要だ。飲み放題、食べ放題。しかも何度でも利用可能。社員以外の常勤の契約社員やパートナーも対象という大盤振舞だ。2016年10月にスタートしたばかりだが、すでに想定の3倍の活用率というから、社長もうれしい悲鳴をあげる。それにしてもなぜ、ここまで社員を大切にするのか。

なぜこれほどまでに社員に手厚い待遇を用意するのか

「弊社はサービス力で世界一のIT企業になることを目指しています。経験則ですがIT企業はサービス力より開発力なのか、売って終わる傾向がある。弊社ではそうでなく、とことんサービス力に注力することを強みにすることにしました。ですから受注はあくまで始まり。それを徹底するために今期は、業績を気にしない方針も打ち出しました。まず、IT業界における顧客満足度日本一を目指すために従業員満足度を高めることが同様に重要と考えています」(中野社長)。

“居酒屋効果”で仕事のメリハリがつけやすくなり、ダラダラの改善につながったとの声も

“居酒屋効果”で仕事のメリハリがつけやすくなり、ダラダラの改善につながったとの声も

クライアント満足度を高めるために従業員の満足度を高める。ホスピタリティ追求のために社員にもできる限りの環境を提供をする。それが、中野社長の狙いだ。目論見は見事にハマり、サービス力はここ数年で目に見えて向上しているという。顧客へのインタビュー強化、接遇検定の取得、電話対応案件のメールで文章化フォロー、締め切りアラート報告など、ちょっとしたことだが、クライアントとの関係を円滑にするフォローを徹底することで、追加の相談や受注へつながるケースも増えている。

顧客満足度を上げるには従業員満足度が重要

ハーバードビジネススクール教授のジェームス・L・へスケット氏は、「ESを1%上げると、CSが0.22%上がる」と弾き出している。「日本一大切にしたい会社」の法大大学院の坂本光司教授は、社員を幸せにするには非価格経営を取り入れることだ、と明言する。中野社長が目指すのは、まさにESを上げることでCSを上げ、また、CSを上げることでESを上げることそのものといえる。

居酒屋使い放題以外にも同社では、書籍購入補助があるが、これも全額負担で制限なし。制約を設けることが社員を委縮させ、制度が形骸化することを中野社長は感覚的に分かっている。だから、同社には中途半端な福利厚生は存在しない。もちろん、しっかりとビジョンが共有できているため、それに乗じて悪用する社員はおらず、目的をしっかりと理解し、有効活用することで結果につなげている。

書籍購入も基本全額負担の太っ腹

書籍購入も基本全額負担の太っ腹

「なんでもそうですが、結局分かりやすくないと浸透しない。最終的には制約ゼロの会社にしたいと思っています」とトコトンESを追求する中野社長。社員は、縛ればコントロールしやすくなるが、それでは自ずと上限ができる。緩めれば無秩序のリスクもあるが、その潜在力が全開になり、無限の成長が期待できる--。やりがいやモチベーションの本質を体感的に熟知する中野社長のスタンスは、戦力最大化が重要事項となる人口減少時代の経営のさじ加減として、非常に有効性が高いといえそうだ。


【会社概要】
ids商号:株式会社アイディーエス
英語名:IDS Corporation
設立:1996年12月
資本金:10,000,000円
売上高:1,430百万円(2016年6月期)
所在地:東京都港区三田三丁目2番8号 Net.2三田ビル2F
代表取締役社長:中野 貴志
従業員 92名(2016年6月末現在)

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