企業風土

社長をあだ名で呼ぶ会社の“ルール”は本当に徹底されているのか

投稿日:2016年11月29日 / by

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全員ニックネームで呼び合うことで醸成される風土とは
MRT株式会社

mrt

社内コミュニケーション活性化に力を入れる企業は少なくない。職場の人間関係は、業績にも無関係ではないからだろう。交流機会を増やすためのイベント開催などが一般的だが、対症療法的だ。医師不足調整の人材企業MRT(株)は、社長から社員まで会話は基本、敬語ゼロ。常識に捉われないその大胆さは、まさにコミュニケーション不全の根治療法といっていいだろう。一体なぜ、こんな風土が醸成され、実際のところどう機能しているのか…。気持ちをカジュアルにして、オフィスを訪問した。

社長から社員まで会話は基本敬語ゼロ

いつもと違うトーンでエントランスを抜けると、迎えてくれたのは2人の女性。同社メディカルヘルスケア本部メディカルグループ眼科チームの寒河江良子さんと同MDCチームの荒井千遥さんだ。意外にも敬語で対応してくれたが、首から下げているネームホルダーに変な文字が書かれている。それぞれ「うさ」と「ちっち」。一体どういうことなのか。

全社員が首からニックネーム入りのタグをぶら下げている

全社員が首からニックネーム入りのネームホルダーをぶら下げている。「お母さん」というあだ名の女性社員もいるんだとか

「これはニックネームになります。MRTでは社員を互いにニックネーム呼び合うんです。私は『うさ』、彼女は『ちっち』。社内ではニックネームでしか呼び合わないので、時々、同僚の本名を忘れてしまうんです。ちなみに外部の人にはちゃんと敬語で対応いたします」と寒河江さん。同社では、新入社員の段階から、各自でニックネームを決めることが制度化されており、今ではすっかり定着しているそうだ。

導入のきっかけは社員のある提案

もっとも、かつては同社でも一般的な企業同様、管理職は役付けで呼んでいた。導入のきっかけになったのは、2012年の社内イベントという。その時、出し物で劇を披露し、各自にキャラネームが付けられた。準備期間もその名で呼び合い、和気藹々。結果、作業が捗り、チーム力も高まった。そして、その年の年末の飲み会で、寒河江さんが、そのよさを振り返りながら制度としての導入を提案。その場で参加者のニックネームを決め、なんと翌日から、制度として導入された。

「MRTは物事の決定スピードがとても速いです。ニックネーム制を始めてからは、余計な言い回しがなくなり、コミュニケーションが活性化し、スピード感はさらに増しましたね。その場に『マロニー』がいたこともあったので、導入は即断即決でした」と寒河江さんは振り返る。「マロニー」とは、同社社長の馬場稔正氏。さすがにトップとは多少の壁があると思ったが、杞憂だった…。

会話のカジュアル化も別の社員の提案がきっかけに

こうして一気にフレンドリーな風土が定着したが、実はまだ続きがある。この後、新卒で入社したちっちこと、荒井さんがその主役だ。会社説明会の段階で、ニックネーム制のことは知っていたが、さすがに新入社員。全員が先輩という状態では、気が引ける。それでも入社後、先輩をニックネームで呼んでいたがある時、先輩社員にポツリと明かす。「言葉遣いも敬語なしにすれば、より距離が縮まるのでは」。古い会社なら、雷が落とされそうな無謀な提案だが、これがあっさり通過。すぐに翌日から採用される。

会話のカジュアル化を提案した荒井さん(左)とニックネーム化を提案した寒河江さん(右)

会話のカジュアル化を提案した荒井さん(左)とニックネーム化を提案した寒河江さん(右)

「入社前からニックネーム制度のことは知っていましたが、正直変な会社だなと思っていました。でも入社後に『マロニー』がとにかくカジュアルに接してくれて、これならやらない方が失礼かもと思い、ポロリと会社の人に話してみたんです。いまは気兼ねすることなく、職場で誰とも敬語なしで話しています」と荒井さん。こうして、同社のカジュアルコミュニケーション風土は完全定着することになる。

社長からインターンまで例外なしの徹底ぶり

上は社長、下はアルバイト、インターン生までが対象という徹底ぶりは、もはや同社のアイデンティティといってかもしれない。根付き過ぎてもはや、先輩に対しても「○○(先輩ニックネーム)、おねがい!」と業務を依頼することもあるというが、課題はないのか。

「課題、ですか…。ないですね。強いて言えば、社員が増えてきたので、お客さまからの電話で同僚の本名を忘れてしまった時に困ることくらいでしょうか」と荒井さん。ここまでくれば見事というほかない。もっとも、会話こそカジュアルだが、決してなぁなぁのダラけたムードはなく、あくまでも無駄を省き、コミュニケーションの敷居を下げる意味合いでの敬語ゼロであることは見落としてはいけない。

新人の席にはあだ名周知徹底のため、一定期間、ネーム入りバルーンが掲げられる

新人の席にはあだ名周知徹底のため、一定期間、ネーム入りバルーンが掲げられる

ヒエラルキーに従順であることは、これまでの日本社会では絶対といえる常識だった。組織がフラット化しても、年功は尊重されてきた。だが同社には、そうしたしがらみは一切ない。実現できた背景には、社員の平均年齢が20代中盤という若さもあるが、なにより、トップが当たり前のように分け隔てなく全社員とフラットにコミュニケーションを取っていることが一番の要因といえる。

フラットな風土が斬新なアイディアを醸成する好循環

常識に捉われない組織づくりをできる同社だけに、ビジネス展開でも従来にないモノを創造するチカラに長けている。メイン事業は、医師不足の調整という医師と医療機関の空白を埋める形でスタートさせたもの。ビデオ通話で医師と遠隔診療・健康相談ができるサービスアプリ「ポケットドクター」は日本初だ。敬語という、会話にワンクッション入る堅苦しさを排除したことで、思ったことをストレートに言い合える風土が醸成されていることが、革新的なサービスをスピーディに具現化することに貢献していることは間違いないだろう。

ビジネスシーンでのコミュニケーションについては、メールからLINEなどのチャット活用へのシフトもじわじわ進み、会話の簡素化、カジュアル化が浸透しつつある。その職場版といえる同社の敬語ゼロ・ニックネーム活用は、単なるコミュニケーション活性化にとどまらない、企業の潜在力を引き出し、付加価値を生み出す可能性をも秘めているといえそうだ。


【会社概要】
MRT株式会社会社名:MRT株式会社
英文表記:MRT Inc.
経営理念:医療を想い、社会に貢献する。
所在地 本社:東京都渋谷区神南1-18-2 フレーム神南坂 3階
名古屋営業所:愛知県名古屋市中区栄3-2-3 名古屋日興證券ビル4階
大阪営業所:大阪市中央区西心斎橋1-10-4 エースビル2階
設立日:2000年1月26日
代表取締役社長:馬場 稔正
取締役会長:冨田 兵衛(医師)
取締役副社長:小川 智也(医師)
事業内容:医療情報のプラットフォームの提供

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