
長時間労働是正が困難な企業の特長とは
長時間労働に関する一斉相談の内容を連合が報告
連合はこのほど、「全国一斉集中労働相談ダイヤル」の集約概要を報告した。長時間労働に関する相談を各地方連合会が一斉に対応。2日間(201612月6日~7日)で675件の相談を受けた。その相談内容から透けてみえてきたのは、長時間労働是正が困難な企業の特長と構造的な負のスパイラルだ。

連合調べ
相談者の性別は、男性60.1%、女性39.9%。年代は40代、50代が多く、合せて52.4%。雇用形態は正社員、パートが多数を占め、それぞれ58.8%、15.3%。業種は上位4種が製造業、医療・福祉、卸売・小売業、サービス業で、全体の9割近くを占めた。
相談内容は、不払い残業が12.5%でトップ。次いで週40時間(10.9%)、パワハラ嫌がらせ(9.1%)、年次有給休暇(7.6%)と続いた。具体的には「毎日12時間ほど仕事をしているが残業代が支払われない。タイムカードがなく時間管理もされていない」、「土日も出勤させられるが、代休も取らせてもらえない」など、悪質な実態が浮かび上がった。
さらに詳細にみていくと、こうした状況に働く側もSOSを発信しているものの、のらりくらりと交わされ、長時間労働の負のスパイラルに巻き込まれていることが分かる。飲食店・宿泊業の40代男性は、激務に対し、「2交代制にして欲しい」と改善を提案。ところが、「そんなことをしたら店が潰れる。嫌なら今すぐ辞めてもらって構わない」といわれたという。
当人ではなく、家族からの相談事例では、息子が月100時間を超える残業や休日出勤を強いられ、手当もほとんど出ないことから、退職の旨を上司に報告。ところが、「1か月待って欲しい」といわれたままうやむやにされたという。別の事例では、残業が160時間となり、心身を疲弊。人員増強を申し入れたが聞き入れてもらえなかったという。
透けてみえるのは人材不足による構造的な問題
こうした相談から透けてみえるのは、事実上の経営機能不全状態での雇用ということだ。つまり、業務量に見合った人材の確保ができておらず、それを改善する上層部の頭脳がなければ、企業としての体力もない状態だ。相談者の9割を占めた業種は、過酷な労働で慢性的な人材不足となっており、その意味では構造的な問題ともいえる。
長時間残業については、厚労省の最新の調査でも、疑わしき企業の4割を超える43.9%が法令違反を犯していたことが分かっている。悪質であると同時に、もはや体質ともいえる深刻な状態だ。
労働時間を短縮すれば、売り上げが低下し、経営が立ち行かない。こうした企業が、長時間労働是正を実現することは本当に可能なのか。自然淘汰されるのを待つべきなのか…。あるいは、働く側が事前にしっかりと調べるのがベターなのか。それとも入ってから悪辣な実態が分かれば、その時点で退職すべきなのか。簡単なようだが実は根深い、長時間労働の問題。是正すべきは明白だが、この調査結果が氷山の一角だと考えると、その撲滅には時間がかかりそうだ…。