企業風土

日本でいちばん大切にしたい会社の経営は何がすごいのか

投稿日:2017年2月27日 / by

第7回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の受賞企業が決定

第7回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の受賞企業が2017年2月27日、都内で発表された。大企業の経営難や過労死問題が騒がしい昨今、選出企業の姿勢や取り組みには、破たんしない経営の本質がにじむ。いずれも、決して難しいことではないことでないだけに、やれていないとすれば、課題を自覚する必要がありそうだ。

トップ4といえる、経済産業大臣賞、厚生労働大臣賞、中小企業長官帳、実行委員長賞を受賞したのはそれぞれ、TOTO株式会社学校法人柿の実学園 柿の実幼稚園コーケン工業株式会社新日本製薬株式会社。TOTOは、7000人近い規模ながら、過去5年の転職的離職率が実質ゼロ。障害者社員を304人抱え、全員が正社員であることなどが評価された。

柿の実幼稚園は、障害児の特別クラスを設けず、障害児一人に対し、専属の有資格の非常勤を複数人配置。重度の障害児を優先的に入園させていることなどが高く評価された。コーケン工業は、定年を設けず、66歳以上の高齢者が2割弱おり、その定着率も高い。さらにそうしたシニアが10代からいる社員と一体になり、家族のように助け合う風土が受賞の大きなポイントとなった。新日本製薬は、知的障害者を正社員雇用し、最低賃金以上の給料を支払い、管理栄養士がカロリー計算したヘルシーな食事が提供される美しい社食などが、高い評価につながった。

同賞はそもそも、応募資格の段階で、(1)リストラ等人員整理をしていない、(2)仕入れ先や協力企業等に強制的なコストダウンをしていない、(3)障害者雇用率は法定(2%)雇用率以上、(4)黒字経営、(5)重大な労災を起こしていないの5項目について、過去5年以上に渡りクリアしている必要がある。その上での上記各取り組みだけに、「日本でいちばん大切にしたい会社」と呼ぶことに異論はないだろう。

なぜ経営で人の幸せが大切なのか

「過去にも大きな企業での受賞はあるが、出来るかできないかに規模は関係ない。経営において大切にすべきは、命と生活。長時間労働の議論で上限の話があるが、50時間なんて認めない。最低でも20時間に収めるべき。経営は、人の幸せが第一の目的で、業績はその結果としてついてくるもの。エビデンスもある」と法政大学大学院政策創造研究科教授で審査委員長の坂本光司氏は力説する。

受賞理由を解説する坂もの教授(左2)

同賞発足以来、大企業を中心にした不祥事が相次ぐが、その元凶は、人を大切にしない経営にあると断言する坂本教授。加えて、価格競争との決別も強く提言する。その理由は、価格競争型経営では、業績実現が目的になり、企業経営の目的そのものである社員および社外社員を、「手段」や「コスト」と位置付けてしまうからだ。

金儲け=悪。もちろんそういうことではない。だが、企業という形で、経営のかじを切ることは、そこに関わる人を不幸にしないことが大前提。経営不振の責任は、人員の調整でなく、経営によってフォローする。障害者雇用が高く評価される理由は言うまでもないだろう。社員に媚を売るわけではもちろんない。雇用した人員をいかにイキイキと働かせるか。それこそが企業経営の目的。徹底してそこにフォーカスする同賞が、年々注目度を高めている事実は、ようやくその重要性に経営層も気付き始めた兆候といえるのかもしれない。

なお、4賞の他、審査委員会特別賞9社、実行委員委員長特別賞4社が選出されている。授賞式は3月21日に都内で開催される。

 

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