企業風土

残業が合理的だとしたら、問題はどこにあるのか…【瓦版書評】

投稿日:2017年4月7日 / by

着実に進む働き方改革だが…

働き方改革は実行計画が取りまとめられ、着々と前進している。その中身や有効性はともかく、政府がこうした問題に取り組む意義は確実にある。中でも大きなテーマは長時間労働の是正だ。残業をなくし、ワーク・ライフバランスを充実させる。それにより、老若男女が安心して働き続けられ、今後確実に訪れる労働力不足にも対処できるという理屈だ。

これまでは労働市場から引っ込んでいたシニアや女性を職場に引っ張り出すというイメージが強く、違和感はある。だが、現実に働き続けたいという女性やシニアは少なくない。その理由のほとんどが経済的理由ということからも、景気浮揚を見据える政府の思惑とその利害関係は一致する。

出来るだけ柔軟に働けるようにしよう--。従来の働き方がコンクリートだとすれば、働き方改革は、それを一旦粉砕し、粘土のようにやわらかく再加工し、個々の前に提示する動きといえる。最後は企業や各自が、その都合に合わせ、粘土を整形。実生活にフィットする、充実したワーク・ライフバランスが営める形に仕上げれば万々歳。

なぜ残業は発生するのか

このように理屈上は、うまくいきそうな働き方改革。ここへクールな顔で、グサッとメスを入れているのが同書。特に長時間労働の是正については、問題点を丁寧に洗い出し、突き詰め、業務量が減らない以上、対策も規制も無意味。むしろ、サービス残業を誘発するリスクが高まるだけ、とバッサリだ。

業務量と人員のバランスが不均衡ゆえに発生する残業。だから、業務領域があいまいな正社員という雇用形態は企業にとって都合がよく、残業代というシステムも合理的という著者の指摘は、否定しようがない。それは、働き方のマイナーチェンジではなく、抜本的に改革しなければ残業問題は解決できない、という逆説的だが痛烈なメッセージのようでもある。

所詮、対症療法でしかない働き方改革は、現状を落ち着かせる意味では一定の効果は期待できるだろう。だが、問題の抜本解決には到底及ばない。だからといって、働き方改革の揚げ足を取るのは低次元だ。同書は、そうしたことも含め、冷静に俯瞰し、どこからどう考えるべきかを示す解説書のようだ。どうにも働き方改革がピンとこないというビジネスパーソンが、健全にその遅れを取り戻すにはうってつけの一冊といえるかもしれない。

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