なぜ求職者と企業のミスマッチは起こるのか

人が育つ会社づくりで一番大切なことと

いい会社づくりのために、“入り口”を重視するコンテンツワークス。求職者との相性を丁寧にすり合せる作業は、品質にこだわる同社のサービスに対するスタンスとシンクロする。同社代表になる前は、大企業で幹部候補生だった萩野氏。悩んだ末にやりがいを選択した氏だからこその視点は、求職者を大きく包み込みながら、ほどよく適性を見極めるフィルターのような役割を果たしている。

大企業の安定を捨て、一国一城の主を選択した過去

徹底して相性にこだわり、主体性を促すのは、荻野氏自身の経験も大きく関係する。実は同社は、前所属企業が複数の企業と共同出資で設立した会社。それを、荻野氏があえて独立し、引き継いだ会社なのだ。独立の際、荻野社長には、企業へ戻る選択肢もあった。もちろん、戻る方が安定が保証される。だが、荻野氏はあえて独立をセレクト。その時の心境をこう振り返る。

「小さいながらも全てを自分の裁量で回せる状況と、安定が保証される一方で思うようには動きづらい会社へ戻ることを天秤にかけた時、独立が勝ったということです。当時、社員が15人ほどいましたが、『戻る場所がある』と思われるのがしゃくでもありましたしね。戻る先の上司にはバカじゃないといわれましたけどね（笑）」。幹部候補生でもあった荻野氏。戻れば将来もほぼ約束されていたが、悩んだ末にキッパリと退路を断った。

採用時のフィルタリングを丁寧に行う理由

求職者が企業を選ぶ時、特に新卒生の場合、知名度のある企業を選びがちだ。それを否定はしない。だが、そこでの仕事にやりがいを感じられなくても本当にいいのか…。荻野氏自身が、大企業のイスを蹴り、小さくてもやりがいのある道を選択しているだけに、その感覚を大切にしている。採用時のフィルタリングを丁寧に行うのはそのためだ。

個人出版ながら、温かみがあり質の高いフォトブック

「学生さんには自分の足で立ちましょうといいたいですね。例えば企業選びの際、知名度を重視して大企業を選択するのももちろんOK。ただ、合わなかった時に、合う企業を探す。ガマンの必要はない。もちろん選択肢にはベンチャーも入れてね。大企業がフィットするなら、もちろんそれでいい。それならずっとい続ければいいと思います」と荻野氏。いろいろな側面はあるが、結局、いかにフィットするか。そこがずれると、互いにマイナスになる。大企業もベンチャーも熟知する荻野氏だけに、その言葉には重みがある。

“いい会社”を目指すからこそみえてきた課題

人を重視し、やりがいのある仕事もある。存分にチャンスも与えられる。理想に近いといえる職場には、次第にいい人材も集まるようになった。いい会社として、成長も順調だ。だが、荻野氏は、だからこその悩ましい思いも口にする。「福利厚生や待遇面の充実にも注力し、職場は感謝にあふれるアットホームな雰囲気になりました。でも、ひとつすっぽり抜けていたことがあります。数字による裏付けです」。

いい会社づくりへの悩ましい部分を抱きながら順調に成長を続ける

売り上げが伴わないという意味ではない。ただ、企画や提案が、数字の裏付けなしに飛び交っていく。それでは、いい会社の後からついてくるはずの素晴らしい売り上げも心許なくなる。常に数字を意識する。だからこそ、後から結果もついてくる。荻野氏はいま、そこに危機感を抱きながら、“いい会社”づくりの最終フェーズを歩む。

働き方改革が加速し、各企業が職場環境改善に積極的に乗り出している。だが、職場環境がよくなれば全てよし、といえば、それは違う。最終的には良好な職場環境のもとで社員が存分に力を発揮し、業績向上に貢献し、強固な売り上げが確保されなければ、そこが居心地よく、働きやすい職場にはなっても“いい会社”にはならない…。結局、重要なのは、企業努力はもちろんだが、社員自身の成長。同社の取り組みは、そうした当たり前だがぼやけがちなポイントをあぶり出す生の事例として、ヒントが満載されているといえそうだ。（前編はコチラ）

【会社概要】
社名：コンテンツワークス株式会社（英表記：Contents Works Inc.）
所在地：〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-4 Daiwa神保町ビル5F
代　表：代表取締役社長　荻野 明彦（おぎの あきひこ）
資本金 ：1億円
設　立 ：2001年2月15日
営業開始 ：2001年2月15日
事業内容 ：コンテンツ配信、販売サイトの開発・運営・管理、
ブックオンデマンドを含むコンテンツの販売、
コンテンツに関する企画、制作およびコンサルティング業、
書籍・雑誌の編集・販売