
職場改善に社員の心をつかむ前に胃袋をつかむという発想の有効性
なぜシンプルな施策が職場改善に貢献したのか
「男を離さないためには胃袋を捕まえよ」。カップル長続きの極意として、むかしから言われている言葉だ。この法則、企業にも当てはまるようだ。リビン・テクノロジーズ(株)では、おやつの常設はもちろん、数量に限りはあるが軽食が1日一回振る舞われる。そのボリュームは、ちゃっかりランチ代わりにする社員もいるほど。職場のコミュニケーション増や離職率の低下にもしっかりと貢献しているという。その実態を探るべく、同社を訪問した--。
ブランチタイムに振る舞われるボリューミーな軽食

数量限定だが、十分ランチ代わりになるボリュームだ
オフィスの片隅にあるワンコーナー。お菓子が常設されるその場所は、毎日10時30分ごろになると、ちょっとした人だかりができる。軽食が振る舞われるのだ。軽食といってもおにぎりにサンドイッチ、焼売、ピザ、ウインナー、フライドポテトなど、十分食事代わりになるボリュームとバリエーションだ。ちゃっかり食事代わりにする社員ももちろん存在する。
「最初は、シリコンバレーに視察に行った代表が、IT企業の多くで食事が提供されているのをみて、自社でもやろうと思ったのがきっかけです。当時は離職率が今ほど低くはなかったので、職場のムードを改善する狙いもあってスタートしました」と同社広報担当の小林千章氏は説明する。
たかが軽食も、企業カラ―によっては絶大な効果も
たかが食事、されど食事。軽食の提供が浸透するにつれ、離職率はかなり改善。同時に軽食タイムを中心に部門の垣根を越えた社内コミュニケーションが活発になり、職場のムードも改善された。コミュニケーションの活発化が離職率を下げたのか、食事の提供が要因なのか…。いずれにせよ、軽食提供は見事に職場改善に貢献している。
「10時30分ごろに提供するのは、朝食抜きの社員も多く、そうした社員の胃袋を満たすためです。朝食を抜いていると頭が働きづらく、その時間帯は生産性も下がりがち。ですから、その対策という意味合いもあります」と小林氏。離職率低下だけでなく、生産性の向上にまで貢献しているとなると、コストがかかるといっても安いものだろう。

朝食抜き社員には苦痛の時間が一転、イキイキタイムになる。ちなみに冷蔵庫の飲み物も飲み放題。夏はアイスが食べ放題
実は同社、振る舞うのは軽食だけではない。社内イベントも積極開催しているが、その全てが無料なのだ。高価な肉を惜しみなく提供するバーベキュー大会、社内旅行、表彰イベントなど、年間を通じ、かなりの出費となるが、社員負担はゼロ。小林氏は「昭和のノリなんです」とその社風を評するが、切符のよさは筋金入りなのだ。
軽食を提供するから社員満足度が上がったというよりも、軽食という手軽なスタイルが、押しつけでない面倒見の良さとして社員に適切に伝わり、効果として反映されたというのが、実状なのかもしれない。同社にはその他、改善提案を一件するごとに100円がもらえる制度もある。「ロッカーのハンガーが足りない」という小さなこともあるそうだが、幹部がしっかりと目を通すので、あまりにふざけた提案は、仕組み上も難しい。なにかあったら提言できる。こうなるともう、同社は社員にとって頼りになる兄貴のような存在といえるかもしれない。
職場改善に取り組む前に必要な重要ポイント
昨今、働き方改革が活発な中で、企業は職場改善に積極的だ。生産性向上による残業削減はもちろんだが、いかに会社の魅力をアップし、社員を定着させるか…。詰まる所、そこがポイントになっている。オフィスを先進的にリフォームする企業があれば、最新のテクノロジーを惜しみなく投入する企業もある。縛りを撤廃した企業も存在する。個人の価値観の多様化に比例するように、企業の個性も多様化しつつある。
同社の事例では、もともとの太っ腹体質が、軽食食べ放題という分かりやすい施策によって浸透。適切に社員満足度につながり、職場のムードが向上。離職率低下につながった。では、食事食べ放題が、どの会社にあてはまるかといえば、そんなことはないだろう。その意味では、職場改善の取り組みは、まず自社のよさをしっかり見極めたうえで実施しないと、十分な効果は期待できないということになる。そこが難しいところだが、会社としての個性を削いでまで取り入れるのは本末転倒。いかに自社のカラーを際立たせながら、制度を絡ませるかのバランス感覚が重要といえそうだ。
【会社概要】
社名:リビン・テクノロジーズ株式会社
事業所 :本社 東京都中央区日本橋堀留町1-8-12さくら堀留ビル8階
資本金 :31,000,000円
設立 :2004年1月
従業員数 :70人
事業内容:不動産メディア事業
インターネット広告事業
URL:https://www.lvn.co.jp