企業風土

本気度の“可視化”で推進する残業削減へのアプローチ

投稿日:2017年9月29日 / by

時間密度の髙め方~百社百様の生産性向上~

 第一回 プレシャスパートナーズ

働き方改革に取り組む企業が珍しくなくなった。ある調査では全企業の6割が取り組んでいるという報告もある。大量生産による効率の追求がかつての成功法則だったとすれば、人口減少フェーズのいまは少量多品種、さらに革新性が求められる。統制・画一化よりも多様性。個々の社員の能力の最大化が大きな課題の一つとなる中で、多くの企業が最初に着手するのが長時間労働の是正だ。各企業の取り組みに迫りながら、そこからみえてくる改革の肝をあぶり出す。

働き方改革の取り組み事例としては、テレワークの導入や女性の登用、仕事と家庭の両立支援、兼業・副業の容認など、さまざまなタイプがある。どれがベストということは各社の事情によりけりで、現状ではなんとなく残業対策として、週に一度、ノー残業を設けている程度の企業もある。

取り組み内容を、多くの企業が手始めに着手する長時間労働削減に絞れば、そのやり方は大きく2つに分かれるだろう。ひとつは、退社時間を厳格にしてしまう。もう一つはスキル向上やツール導入などで生産性を向上させる、だ。どちらも簡単なようだが、実践するとなるとたいていは迷走する。根本的に業務量が減っていないし、なにより残業がなくならなくても特に困ることはない、という意識がどこかにあるからだ。

プレシャスパートナーズが生産性向上に取り組みにあたり、最初に着手したのは、業務改善チームの結成。形だけの取り組みにしないことがその目的だ。本気度がにじみ出ているのが、そのメンバー構成。社長、役員2人、課長1人、2年目から4年目の営業・内勤メンバーと絶妙のバランスとなっている。

「トップが参加しているのはそれだけ本気であるということですが、そこにまだ率直に問題意識と向き合える若手メンバーを入れました。新鮮な目でみた意見の方が、改革には重要。早い段階から意識を持ってほしいという思いもあります」と同社広報部の北野由佳理氏は説明する。

このメンバーで毎週東京、名古屋、大阪の支部をスカイプでつなぎ、会議を実施。現状や課題に対する改善策、他社の働き方改革についての情報共有を行う。

こうした一歩踏み込んだ長時間労働是正へのアプローチにより、同社には、現場感覚にフィットした生産性向上策が生まれている。1案件2名制もそのひとつ。名前の通り、ひとつの案件に2名がコンビを組み業務を分担。そうすることで効率がアップ。結果的にクライアントに対するサービス密度も高まり、顧客満足度向上にもつながっている。

シンプルだが、本人も上司も帰宅の意志を把握でき有効活用されている

残業の可視化にも取り組んでいる。分かりやすいのは、帰宅時間を記したカードをデスクに掲示し、全員で共有する仕組みの導入(写真)。これにより、当人の時間意識は高まり、上長も帰宅指示を出しやすくなったという。

残業を評価と連動させる仕組みも導入している。例えば、同じ成績なら、残業が少ない方が評価されるという表彰制度だ。残業5時間で売り上げ一億と残業ゼロの同額の売上げ。かつてなら、「遅くまで頑張った」と前者が評価されることもありえたかもしれないが、同社ではむしろ“かっこ悪い”働き方となる。

専門チームを結成し、意見を交わし、意見を集め、吸い上げ、しっかりと受け止める。その上で、具体策に落とし込むから現場にも自然と浸透する。単に労働時間を減らすという物理的な変革以上に、時間より成果という意識改革が強く求められるのが、働き方改革における長時間労働削減の本質。同社の取り組みは始まったばかりだが、とりわけ残業削減を軽く考えている企業にとっては、参考にすべき事例といえるだろう。(続く

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