企業風土

業務細分化によるチーム力アップで実現した労働時間削減

投稿日:2017年10月18日 / by

時間密度の高め方~百社百様の生産性向上~

 第二回 メディカル・データ・ビジョン株式会社

残業代は出ない。会社の前提がそうだと、基本、誰も残業を積極的にしようとは思わない。どうしても納期に間に合わない、緊急事態発生…そうしたことでもなければ、定時を目安にできるだけ早く帰宅の途に就きたい。帰りづらい社風ならいざ知らず、それが一般的だろう。ところが、オフィスには魔物でも棲んでいるのか、予定通りに1日が終わることはあまりない。

その原因はどこにあるのか…。それは、意外なほどささいなことだったりするケースが多い。例えばこんな場面。タスク遂行のプロセスで担当者が難題に直面したとする。その時、チームメンバーに相談し、「こうやればいいんじゃないかな、まあ、詳しいことはわからないんだけどね・・・」といった反応が得られる。仕方がないが、ハッキリいって無責任。結果、当人は、タスクを背負いこみ、解決するまで残業、ということなる。

もっとよくあるのは、デキる人に業務が集中するパターンだ。そうした人は、ホイホイと業務をこなし、どんどん仕事がはかどるが、そうはいっても時間は有限。定時にこなせる量を超えた瞬間、残業する羽目になる。こうした事例は詰まる所、属人化が進行し、組織として機能不全に陥っている。チームで作業をしている以上、個々の業務が独立していると補完作用が働かず、組織内にボトルネックが点在することになる。

こうなると、チームのプロジェクトは停滞。仕事が集中してしまう人はモチベーションが下がり、人間関係もギクシャクし始める。残業が常態化し、社内の雰囲気も澱んでくる。こうした状態に近い機能不全に陥りながら、見事に盛り返した企業がある。医療系のIT企業、メディカル・データ・ビジョン(株)だ。同社はいかにして、残業を大幅に減らすことに成功したのか。

「アジャイルソフトウェア開発」の導入残業の元凶を根絶

同社が着手したのは、「アジャイルソフトウェア開発」の導入。個人ではなくチームで仕事を進めるための手法で、業務を細分化することで連結を強化し、属人化を防ぐ。基本手順は以下。1.作業時間の見積もりは全員で決める。2.ストーリーの優先順位を決める。3.毎朝、その日一日でやる作業の宣言をしてから仕事をはじめる。4.開発メンバーが消化したストーリーポイントは、そのまま業績評価として反映(50%分)。

「アジャイル開発」に積極的に取り組み、同社のチームビルディングをけん引する平田勝氏

1と2は要するに作業のロードマップの作成と優先順位づけ。ここに徹底して時間を割くことで、未然にリスクを察知したり、納期への効率的な作業完遂のイメージを共有するなどで、無駄なく、円滑にプロジェクトを進める“設計図”を描き上げる。業務とは直接関係ないだけに、費やす時間を考えるとかえって残業を増やしそうだが、結果は作業の効率化が進み、同社は年間を通じ、月の残業時間を22時間程度に抑えられている。

入念な作業設計図の作成と進捗の可視化を軸にした同社の残業削減への取り組みは、シンプルながらもあいまいな日本の業務の進め方にメスを入れる抜本改革といえるもので、参考にすべき点は多くあるだろう。

同社が、自社案件を中心にしているからこうした取り組みが機能しているという側面もあることは否定できない。それでもプロジェクトを予算と納期だけで回すのではなく、可能な限り細分化し、見通しを良くするところまで踏み込むことは、どんなケースにも応用できるハズだ。

「なぜか、残業が減らせない…」。それはそもそも、減らす努力をしていないか、表面的な施策で終わっているだけなのかもしれない。残業の元凶は想像以上にささいでみえないところに潜んでいたりする。だから、原因に踏み込まず、残業時間だけをカットするノー残業では、仕事が先送りされるだけで何の解決にもならない。(続く)

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