企業風土

労働時間減と売上げアップは共存できるのか

投稿日:2017年11月22日 / by

時間密度の高め方 ~百社百様の生産性向上~
株式会社 メンバーズ

「いざ、働き方改革!」。職場のムードが高まる中で、大きな一歩を踏み出す。そうだとしても、まずは上からのお達しに従いながら進めていくというのが一般的だろう。それ自体は何の問題もない。その方が改革が一気に進む側面もあろう。とはいえ、社員が終始受け身のままでは、せっかくの会社の牽引も、徒労に終わりかねない…。理想は、会社の働きかけを触媒に、社員が主体的に改革の意図を理解・消化し、個々でも推進していくことだろう。

メンバーズは2016年4月から「3カ年プロジェクト」として「みんなのキャリアと働き方改革」をスタートしている。目標に掲げたのは、2019年度をめどにした、月額固定給の段階的なベースアップ(25%)と年収の20%アップ。さらにこれらと並行し、平均残業時間の50%削減などの生産性向上の実現も果たす--。

<残業時間の削減>と<ベア>。この2つは相反しがちだが、あえてここに切り込んだ点が、同社の取り組みへの本気度であり、決して表面的な労働時間短縮ではない決意の表れといえる。もっとも、当然ながら社員からは、歓迎する声とともに「本当にできるのか…」という声も漏れ聞こえてきたという。ベア実現のためには売上げアップが必要となる。だが、労働時間は減らす。そこに、目標達成の道筋はにわかにはみえてこないからだ。

「確かに労働時間が長ければ売上が上がるという発想は根強いと思います。しかし、我々は、長時間労働を続けた結果、社員の定着率が下がり、離職が増え、士気も低下。結果、現場は疲弊し、売上も低迷。約10年前には大きな危機を迎えました。そこで2009年に、抜本的に考えを改め、モノではなく、人を軸にした経営に切り替えたのです。2016年にはさらに社員が長期を見通しやすい報酬制度・給与モデルを作り、多様なキャリア・働き方をサポートするという方針を立て、それが反映されたのがこのプロジェクトでもあるのです」と同社常務執行役員で経営企画室兼EMC推進室室長の高野明彦氏は力説する。

いいプロダクトを生み出し、その吸引力で効率的に大量に売りさばいて稼ぐ。そうしたモデルの追求から、まず社員がいい環境で働き、いいプロダクトを創りだすことで売上に貢献する。真逆ともいえる経営の方向転換で、同社は復活を期した。もっとも、そこに会社からの押しつけはない。あくまで社員と対等に共に目標達成しようというフラットなスタンスだ。その象徴ともいえる、会社側のアクションがある。

指示だけでなく経営層も動いて生産性向上をサポート

目標達成への最大ともいえるボトルネック。それは、業務量の膨張だ。売上アップを目指せば、どうしても業務量が増える。一方で、残業は減らす方針。スピード化を図るにしても、無理の発生は避けられない…。この悩ましい問題に経営層が自ら切り込み、残業削減施策への理解を顧客企業へ求めたのだ。「残業削減といいながら、現場に仕事が溢れていては、目標はおもりにしかならない。そこで経営側として業務を精査し、クライアントに状況説明に伺い、クライアントとともに業務フローの見直しを行ったりすることで、理解してもらった。場合によっては契約を削られることもあった」と高野氏は振り返る。

「残業しないように」。トップが声高に現場に訴えかけることも有効だが、号令だけで実現できるほど働き方改革は甘くはない。同社のように無理な仕事を判別し、顧客企業へまで働きかけるケースは希だろう。加えて、現場レベルでは、残業時間のモニタリング、行動改革を促すワークショップの実施などで改革への意識づけを徹底。こうして、経営層と現場が一体となり改革を進めたことで、同社の働き方改革は加速。2017年度上期における月の平均残業時間は16時間にまで短縮され、わずか2年で39.4%もの削減を実現した。

会社と社員が一体となっての改革推進でピンチから一転、“ホワイト化”した同社は、気が付けば女性管理職比率30%の目標も3年前倒しで達成。新卒社員もこの3年は毎年100人前後を採用し、業績も上昇。残業削減と並行で掲げるベア目標へも順調に近づくなど、全てがうまくかみ合い始めている。

「苦境にあったころの以前の我々には会社としての強みがなかった。そこを見つめ直し、WEBサイトの構築と運用という事業に注力することで、方向性が明確になった。その上でデジタルクリエイターの価値を尊重し、その幸せを追求し、彼らが活躍する会社を創る。いまはひたすらそこへ向っていくだけです」。道半ばということもあってか、あくまで自然な佇まいの高野氏は、達観したように先を見据えた。(続く)

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