企業風土

社員が自走する企業の組織運営はどうすれば可能なのか

投稿日:2018年10月24日 / by

現場を自走させる経営者の逆算思考とは

社員の活躍は全社員が自分ごとのように分かち合う

ボトムアップで自律的。組織運営において、社員自走型はひとつの理想だろう。放っておいても職場が活性化し、どんどん進化していく――。フュービックは、まさにこの理想形を実現している。外国人材も含め、多様な人材を抱え、業務多角化も進める同社。そこではスピード感や一体感が不可欠だが、拡大するほどそのハードルが高くなるジレンマがある。年に一度の象徴的なイベントから、同社の組織運営のヒミツを探る。

昇進は完全民主主義の総選挙で決定

「私がマネージャーになったら〇●になります!」。コンサートにも使用されるホールで、1000人近い社員・関係者の前で流ちょうに力強くプレゼンする社員。まるでアップルの製品発表のようなイケてるムードに包まれた中での渾身のアピールは、自身のマネージャー昇進への最終演説だ。

社員が社員のために社員が働きやすい会社にするための仕組みの象徴といえる選挙制度

この日登壇したのは計6人。いずれも我こそはと立候補した現場で活躍する面々だ。年に1度の選挙は、完全民主主義で、多くの得票を得たものが選ばれる。スマホを介し、その場で投票。結果もすぐにでる。まさに現場発のこのマネージャー選挙制度は、自走型を実現する同社を象徴するイベントといっていいだろう。

「会社には決算発表のような節目がありますが、社員にはあまりピンとこない。そうではなく、1年の中で社員がそこへ向かって頑張れる区切りの場を作りたかった」。同社黒川将大社長はイベント開催の経緯をそう明かす。確かに会社の区切りといえば決算報告がある。だが、社員にとっては意識はしても身近には感じづらいのが実状。そこで、現場レベルで実感として区切りとなるものは何かと考え、導入されたのが、年に1度の完全民主主義の選挙制度だ。

現場主義を貫く理由とは

「来年は立候補しよう」。そう目標を立て1年を過ごす。2年後という考えもあるだろう。スキルを磨き上げるという目標設定でもいいだろう。現場の人間にとって、この日のイベントは、自分が1年をどう過ごしたのかをいろいろな角度から振り返えられる場にもなっており、いい意味で清算のきっかけとなる。

現場との絶妙な距離感をキープする黒川社長

まさに現場が主役の同イベント。客観的にみても頼もしいばかりだが、社長にとってマネージャーが現場主導で決まることへの不安はないのか。「ないですね。むしろ、社員が自分たちで選んだのだから文句は言えないでしょう。もちろん何でもかんでもOKするわけじゃいですし、私はダメなことはキチンと理由をつけてダメというだけです」と逆に経営判断に集中できるといわんばかりに頼もしそうに晴れの舞台へ目を送る。

技術を競うF1も完全実力主義。全てにおいて公平だから社員はブレることなく頑張れる

イベントでは、選挙以外にもストレッチ店店頭で働く社員の技術を競う部門などもあり、ここでは同社の海外支店の猛者が集結。ストレッチ技術の“世界一”を決定(F1GP)する。組織の中で、上を目指す者がいれば、技術を極めることを目指す者もいる。そこに国籍も性別も関係ない。こうしたフラットで民主的な風土が、自走型組織を自ずと加速させる。

多角化、グローバル化でもなぜ自走が可能なのか

もっとも、同社は国内外に120店舗以上展開するストレッチ部門以外にもさまざまな事業を展開。加えて外国人材も多く、海外支店もある。統率をとるのは一般的な企業よりむしろ敷居が高い。対策として、インナーコミュニケーション用の社内アプリを独自開発するなど、工夫に余念はないが、それらはせいぜい補完要素でしかない。そこで改めてクローズアップされるのが社長のスタンスだ。

提案するが押しつけず、現場主導で基本は “放任主義”――。現場主導といいながら、結局はたびたび介入し、挙げ句に先導者を処罰する。そうした放任しきれない経営者が悪循環にはまり失敗する事例は枚挙にいとまがないが、同社長は悟ったように現場との絶妙の距離感をキープし続ける。

応援した結果が、成果につながる。黒川社長はそう確信して社員の背中を押し続ける

「人の未来を大きくする、それを応援する会社」 。ビジョンに掲げる通り、同社のスタンスはあくまで応援するが基本。それも自社の利益とはいったん切り離すのがそのスタンス。だから、選挙もF1GPもアプリも押し付け感はなく、自然に現場になじみ、受け入れられ、有効に活用される。結果的に応援は社員の心にまでしっかり届き、利益にも還元されることになる。

自走させるために何が必要なのか。四半世紀に及ぶ経営者人生では失敗も経験している黒川社長。そうした中で積み重ねたノウハウから逆算し、辿り着いた現場との絶妙の距離感。テクノロジーも積極活用する同社だが、綿密な計算だけではとうてい弾き出せない汗や涙が入り混じる黒川社長の濃厚な知見にこそ、同社自走のヒミツが凝縮されているといえそうだ。


【会社概要】
会社名:株式会社フュービック
本社:東京都新宿区百人町1-13-1ローズベイ新宿ビル2F
設立:1993年10月
代表取締役社長:黒川 将大
事業内容:
フィジカルフィットネスディビジョン
スポーツメディアディビジョン
リゾートホテルディビジョン
アグリフードディビジョン
リラクゼーションディビジョン
アーキテクトディビジョン
プランニングPRディビジョン
HP:https://fubic.com/

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