脱モンスト偏重を模索するミクシィが内側で進める組織補強策の狙い
「モンストのミクシィ」からの脱却目指すミクシィのいま
ミクシィといえば社名でもあるSNSの「mixi」、そしてスマホアプリの「モンスターストライク」のイメージが強烈だ。だが、いまではスポーツ領域への進出やコンディショニングスタジオも手掛け、その業容は多角化している。売り上げの大半をモンストが占める状況からの脱皮を目指し、新たなチャレンジに乗り出す同社は、事業ドメインも「コミュニケーションサービス」と再定義。組織内部でもアクションを起こし、同社はいま、変化へ向け静かなるあがきを続けている。
柴山氏（左）と竹井氏
mixi、モンスト、スポーツ…。幅広い事業を手掛ける同社は、もはや「モンストのミクシィ」では説明不十分だ。大ヒットで潤ってもそれを続けていかなければ、やがて凋落してしまう…。それは企業の宿命。SNS「mixi」でもそれを痛感している同社が複数の事業を育成するのは、ある意味必然の流れといえる。同時に求められるのが、急速な変化に対応する組織力の補強だ。
「今年に入り、新たに2つの施策を導入しました。社内のサークル・コミュニティ活動の運営に補助金を支給する制度と、学びをサポートするスキルアップ支援プログラムです。当社では2009年から、人脈形成やスキルアップにつながる副業を認めていますが、さらにこうした制度によって、コミュニケーションと視野の拡大を支援し、本業に活かしてもらえると嬉しいと思っています」と同社労務部人事企画グループの柴山知也氏は説明する。
施策としては地味かもしれない。だが、同社の今後の方向性を考えれば、微細だが本質に近い補強であり、カスタマイズといえる。なぜなら、事業の多角化で集結した様々な人材が、カラーの違いを理由に孤立するようでは意味がないからだ。部署の壁を超えるサークル活動は、互いをより知ることで、コミュニケーションを円滑にする。スキルアップ支援は、事業が多様化する中で、社員の潜在的な学ぶ意欲を後押し。それによって、新たな可能性を拓ければという期待も込められている。
もともと同社には重点領域や人員不足が出た場合、求人を社内で公開し、正社員ならだれでもチャレンジできる公募制度「ミクシィ・キャリアチャレンジ」がある。上司への報告なしで応募できる自由さもあり、文化としてすっかり根付いているが、事業多角化でその利用価値や意義は一層高まっている。社員が学びによって知識を深め、部署を超えたつながりで情報交換するようになれば、点が線になり、面となり、組織力は必然的に強固になる。そうなれば同社の多角化はまさに“一心同体”となる。
“難局”に立ち向かうミクシィの静かなるあがき
もっとも、こうした施策は、取り入れはしてみたものの、その多くは形骸化しがちだ。そこに大義がなければ、やらされ感が漂うからだ。そうなると施策はむしろマイナスに作用することにもなりかねない。その点について同社労務部人事企画グループの竹井香織氏は次のように話す。
「実は今年から評価の仕組みを目標管理制度からパフォーマンス評価として、出した成果を評価する方針に変えました。ですから各施策が、成果を出すためのインプットを支援するものになればと考えています。もっとも、施策の利用にあたってレポート等の提出義務はありません」。押しつけはせず、活用はあくまで主体性に委ねる。この点だけをみれば、そのスタンスから、個々に意思決定を任せる新しい組織の形が見えてくる。
社内での交流を促進し、就業後にスキルを高める制度を提供する――。まさに至れり尽くせりといえる社員バックアップ体制。それがなにを意味するのか。業績が乱高下したとする。それでもブレずに進化するためには洗練された経営戦略が有効になるかもしれない。だが、どんなに戦略が優れていてもそれを動かす人材が備わっていなければ機能はしない。だからこそ、社員の能力最大化が重要になる。一定規模に達した企業がさらなる進化を遂げるのは容易でない。その難局に同社はいま、奇をてらうことなく静かに立ち向かっている。
＜会社概要＞
会社名:株式会社ミクシィ
所在地:東京都渋谷区東1-2-20
住友不動産渋谷ファーストタワー7F (本社)
資本金:9,698百万円(2019年3月末現在)
代表者:代表取締役社長執行役員 木村 弘毅
事業内容:
・エンターテインメント事業（デジタルエンターテインメント、ライブエクスペリエンス、スポーツ）
・ライフスタイル事業（メディア、ウェルネス）
従業員数:884名(連結・正社員のみ)（2019年3月末現在）
グループ会社:
株式会社ミクシィ・リクルートメント
株式会社スマートヘルス
株式会社チャリ・ロト
株式会社スフィダンテ
アイ・マーキュリーキャピタル株式会社
mixi America, Inc.
