企業風土

天職創造プロジェクト ~自分らしく働くために~(3)

投稿日:2014年9月17日 / by

就職をより良い出会いにする工夫 Vol.3

fune

「就活代理人」

(株)DYM

〈自分が自分らしく力を発揮できる仕事〉。それをある種の「天職」と定義しよう。その場合、どうすれば、天職にアプローチしやすくなるのか…。最初から隙を仕事にする場合、結果的にそうなる場合、あるいは自らの努力で創りだす、という到達の仕方も方法のひとつかもしれない。瓦版では、企業の取り組みの中から、よりふさわしい職場としての天職への道を探る。最終回、三回目では「家族」ではなく“代理人”による新卒の「天職」へのアプローチの可能性を検証する。

 

離職率3割の元凶に踏み込む人海戦術

DYMの新卒エージェントの仕組みを説明する中村氏

DYMの新卒エージェントの仕組みを説明する中村氏

若者離職率3割。この数字は長らく変わっていない。なぜ、これほど定着率が低いのか。その要因として、就職活動における情報の非対称性を指摘する声がある。社会を十分に知らない新卒者に対し、企業側が圧倒的に情報を握っており、就活生の的確な情報収集が困難な状況にあるという指摘だ。

確かに一理ある。リクナビやマイナビのいわゆる就活メガサイトには多くの企業が掲載されており、大企業へのエントリーも可能だ。だが、当然ながら、応募が殺到し、ほぼ機械的にふるいにかけられてしまう。だからといって、あぶれた学生が中小で優良企業を探そうにも、十分な情報は掲載されていない。結果的に、高学歴者や特殊な才能を持った人が効率採用の恩恵を被り、“格差”が発生。なんとなく、就職した学生は、職場に希望を見出せるわけもなく、短期で離職してしまう…。

こうした就活に横たわる課題に直球で切り込んだのが、(株)DYMだ。同社が手がける中小・ベンチャー企業向けの新卒学生紹介サービス「Meets Company」は、メガ就活サイト離れが進むのを横目に急成長を続け、ついに2014年、「新卒紹介」という領域では業界1位となった。

その戦略は、学生に代わり、就職のエキスパートとして就職先を斡旋する「新卒エージェント」の活用だ。つまり、社会人経験のない学生の「代理人」として、企業と学生の橋渡しを行い、より良いマッチングを実現する役割を担う。

「エージェントは、転職市場では引き抜きや即戦力獲得などで一般的でしたが、新卒採用の市場では一般的ではありませんでした。そうした中で、私たちは、学生の就活における課題解決を図るべく『新卒エージェント』をつくりました。初年度こそ苦戦しましたが、2年目以降は急速に利用者が増えています」と同社新卒紹介事業部の中村春香氏は説明する。

転職と違い、戦力として未知数の新卒学生にエージェントを付けるのは簡単ではない。どれだけのスキルがあり、どれだけの戦力になるかは計算できないからだ。それでも同社では、ヒューマンパワーを最大限に活用し、こうした課題に向き合っている。

希望でなく適性見抜き紹介するケースも

「新卒エージェントは、まず企業側に求める人物像を細かくヒアリングします。それをインプットした上で、マッチした学生を選抜し、紹介します。学生側の希望や能力もしっかりと精査します。場合によっては、学生の希望と違う職種であっても、エージェントがその適性を見抜き、紹介するケースもあります」(中村氏)。

DYM

リアルイベント常に満員御礼の盛況だ

集客や運営においては2つの特徴がある。1つ目は、facebookやtwitter等SNSの活用だ。「Meets Company」というfacebookページ(https://www.facebook.com/MeetsCompany)には5万7,000の「いいね」が押され、セミナー情報を流すとすぐに学生からエントリーがある。2つ目は、リアル。体育会系ネットワークの活用やリアルでの企業マッチングイベントを頻繁に開催する。学生50人限定のイベントは、年間100回以上開催され、毎回すぐに満席になるほどの人気だ。

2011年5月のスタートからこれまでに800社以上で導入され、同サービス経由で入社した学生は1000人超(1年間)にのぼる。その後の早期離職率も5%~7%と平均を大きく下回り、すぐれた結果を残している。

中村氏は、この仕組みついて「メガ就活サイトとは企業レベルも含め、棲み分けができていると思います。私どもとしては現状の中で最適な企業をふさわしいと思われる学生に斡旋するのが役割と考えています。決してなんとか就職口を探すのが目的ではありませんので、マッチする企業がなければ紹介はしません」とドライに話す。

自分の力だけではたどり着けなかったかもしれない企業へのガイド。同社のサービスは、就活において不利な立場にある学生にとって、潜在力を引き出してくれる“触媒”といえる。ただし、そこから先は、本人がどこまでそのチャンスを生かし、切り拓くかで、いかにようにも変化する。「天職」とできるのか、早々に「転職」エージェントにすがりつくのか…。最後は「自力」にかかっていることは言うまでもない。人生に代理人はいない。(了)

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