企業風土

業績にも連動する社風の正体とは【瓦版書評】

投稿日:2016年3月8日 / by

惑わされやすい社風の実体

日本でいちばん社員のやる気が上がる会社(ちくま新書)

日本でいちばん社員のやる気が上がる会社(ちくま新書)

仕事柄多くの企業を訪問する。中に入ると、各社それぞれのムードがある。明るい雰囲気、沈んだ空気、創造的なムード…。感じるのはコチラの主観でしかないが、業績との相関関係はほぼ例外なく一致する。ムードが良ければ業績もいいし、悪ければ芳しくない。数字には表れず、目には見えないこの感覚が、いわゆる「社風」を醸し出す源なのだろう。

若者の入社後3年の離職率は、長く3割前後で推移している。少なくない数字だ。書類選考、面接を経て、入社しているものの、会社に根付く社風を感じ取るには時間が短か過ぎるのだろう。そもそも、社風は、先入観を持っていては感じられない。真っ白い気持ちで、空間に身をゆだねなければ、洒落たインテリアなどに惑わされ、つい、いい会社と勘違いしてしまう。

「我が社は女性が働きやすい制度が完備しています」、「在宅勤務制度を導入しています」、「有休取得を推奨しています」…。こうした企業は多い。いわゆる福利厚生の充実だ。これも、あれも、これもとラインナップが充実していると、これまたいい会社と勘違いするが、実際に機能していなければ、何の意味もない。

社風の良しあしを左右するものとは

本書では、<第三子誕生時に100万円>、<ほぼ全員が定時前に退社>、<オフィスに授乳室を設置>、<フルーツ常備>など、うらやましいばかりの福利厚生が100例紹介されている。厳格な応募資格で知られる「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の委員長を務める法政大学大学院の坂本光司教授が、その研究生らと実際に目で確認しているので、“ホンモノ”に違いない。

名ばかり福利厚生とホンモノの福利厚生の間に、一体どんな差があるというのか。本書の指摘は明解だ。「人を大事にする会社。それも社員だけでなくその家族も幸せにすることを考えているものかどうか」。それが、副題でもある「家族も喜ぶ福利厚生100」に込められた意味だ。人を大事にする会社は、例外なく業績がいい。大事にされた社員が、それに報いようとするのは当然だからだ。

多くの会社は、売り上げを上げることに執心する。赤字が続けば、やがて倒産するからだ。そうなれば、社員はもちろん、その家族も不幸にする。売り上げ至上を正当化するのは、そうした理屈だ。だが、実際には世の7割の企業が赤字といわれる。一方で、人を大事にする企業は例外なく黒字が継続しているという事実がある。これをどう考えるか…。もはや言うまでもないだろう。

「もっと売り上げを上げろ」と営業マンの尻を叩いても伸びない売上げ。「産休・育休が整備されている」にもかかわらず、有効活用されない制度。その元凶は、まさに「社風」にある。使いたいのに使えない、頑張りたいのにモチベーションが上がらない…。社風とは、まさに会社の空気。良くするも悪くするもそこにいるひとりひとりの社員だ。だから、人を大事にする会社は、何をやってもうまくいく。本書を読めば、そのことがスッと腹に落ちるハズである。

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