企業風土

社員に野菜を支給する会社

投稿日:2013年5月23日 / by

YUMEMI

社員に野菜を配布する会社の狙いとは

株式会社ゆめみ

職場の環境づくりは、簡単なようで難しい。どんなに良い試みでも強制すれば、ギスギス感が漂いかねない。かといって、放任主義では収拾がつかない。(株)ゆめみでは、型にはまらぬ社内制度のトライ&エラーが繰り返されている。ユニークさと実用性の絶妙のバランスを保った制度は毎回、職場に心地よい刺激と活力を与えているーー。

社員に新鮮野菜を配布する理由

新鮮な野菜

社員に配布される野菜は契約農家直送の新鮮野菜

同社では、社員に毎月、野菜を配布している。契約農家からの栄養分たっぷりの産地直送の新鮮野菜だ。給与に変わる現物支給の一環、というわけではもちろんない。あくまで、社員の健康を考えて生まれたひとつの制度だ。

「弊社は独身エンジニアも多く、食生活が乱れがち。コンビニ弁当やインスタントで済ます人が多く、なんとか社員の栄養バランスを改善したいという思いから、始めました。当初は手当方式を検討していましたが、それでは野菜を買わない人もいるので、この形におさまりました」と同社総務人事部長の松田新吾氏は経緯を説明する。

ユニーク制度導入の判定基準とは

YUMEMI松田氏

逆面接試験を企画した松田氏

社員の健康を考えるなら、健康診断の強化やフィットネスクラブへの加入補助など、やり方はいくらでもある。しかし、そうしたお決まりのカタチをあえて避けるのが、ゆめみ流。面白くて実用的であることが、制度実施の判定基準だ。

“逆面接試験”は、その象徴といえる取り組みかもしれない。同試験は、その名の通り、応募者が会社側を面接するというスタイル。一次試験については、なんと本人が合否判定する、という前代未聞の採用面接だ。

「通常の採用活動では、どうしてもとがった人材が集まりづらい。そこで、逆面接というスタイルを実施しました。そうしたものに飛びつく応募者というのはやはり個性のある人材だろう、という考えからですね」と松田氏。結果的にはこの面接からの応募者での合格者はゼロに終わったが、社内でも評判がよく、2013年にも微調整をした上で再度実施される予定だ。

気の利いたものもあれば失敗企画も…

ルームランナー

社員の健康を考えてのルームランナーだったが思わぬ盲点から失敗企画に

その他、日常業務と並行しながら事業プランを立案できるSUB(See、Use、Buyの頭文字から)制度、通常2年の有給休暇を期間の制限なく積み立て保存し、入院時や育児休暇に利用できる(最大40日)有給積立保存制度など、同社には気の利いた制度がいくつも用意されている。

もっとも、基本、ユニークさを重視しているため、失敗作もある。健康には食事だけでなく運動も大事ということで、社内にルームランナーを設置。京都支社との距離にあわせ「500キロマラソン」、という企画を実施したが、利用者は発案者の松田氏のみ、という不人気で頓挫。原因は社内にシャワールームがないことだった。採用試験では、中途採用で、超難解な試験問題を作成して実施したこともあるが、あまりの難度に誰も合格点に達しないという残念な結果に終わっている。

制度の試行錯誤の中にある確固たるポリシー

これら事例のように同社では、制度のトライ&エラーが、小刻みに実施されている。一見すると軽いノリのようにも思えるが、そこには地に足の着いたポリシーがある。常にその中心にいる松田氏は、その理由をこう説明する。

「私がここに来たときは、開発系の会社ということもあって雰囲気が非常に暗かった。そこでまずはそれを明るくしようと考えました。そのために少なかった女性を大幅に増やしました(笑)。次に制度。大小の企業で人事畑を歩んできた経験から“立派だが形だけ”は避けたかったので、他にないユニークなモノを常に意識しています。単に面白いだけでなく、実用的であることを実施する上でのポリシーとしています」。

ユニークゆえに実施にあたっては必ず賛否がある。だが、松田氏は、ある程度形が固まれば、否の声を拝聴しつつもとりあえず新制度を実行する。失敗に終わることもあるが、そうやって会社に刺激を与え続けることで、オフィスからは変な張り詰め感が取り払われ、ほどよく快適なムードが醸成される。

“制度マスター”が醸し出す風通しの良さ

現在、水面下で企画が練られている試みある。同社が新規事業として動いているゲーミフィケーションの考えを「会社」に落とし込んだ「社内ゲーミフィケーション」だ。まだ具体案は、固まっていないものの、「やらされ感満載のモノにはしたくない」と、楽しみながら業務やそれ以外のことに取り組める、ユニークかつ実用的な制度になるようだ。

制度のユニークさばかりに目がいきがちだが、同社では、産休・育休制度にも力を入れる。2012年にはワークライフバランス育児・介護休業制度充実部門で東京都から表彰されているほどだ。「制度が充実していても使いづらい会社が多いのは、ダメダメの規制の風潮が強いから。せっかくの産休・育休制度も使いづらいのなら無意味。こうしたものに関してはユニークさではなく地道にみんなが使いやすい空気になるように働きかけています」(松田氏)。

仕事にいそしむYUMEMI社員 風通しのいい会社、という表現がある。何をするにも意見が通りやすくコミュニケーションがしっかりととれる会社ということだろう。しかし、現実には日常業務の空間はたいていが“無風”状態。社員が淡々と仕事をこなし、せいぜい期ごとの売り上げの増減に一喜一憂するのが、ハイライトといったところが関の山。だからこそ、同社の“制度マスター”といえる松田氏のような存在や行動は貴重であり、まさに会社の潤滑油となる。

昨今の会社は、景気低迷もあり、それなくてもムードが停滞しがち。ムードメーカーの登場を待望しても、そうした行為は「無駄」と冷ややかな視線が投げかけられかねない。とはいえ、空気の淀んだ会社に明るい未来は期待できない。モヤモヤの原因は人なのか、制度なのか、理念なのか…その答えが明確になることはないかもしれないが、そうしたことと向き合い、アクションすることで、前進することはあっても後退することがないのは確かだろう。


<ゲーミフィケーション>
「ゲームの要素を用いて、誰でも楽しく目的を達成できるように後押しする手法」を意味する。ユーザー行動に沿った適切なサービスの提供(おもてなし)だけでなく、楽しさや競争などのゲームの要素をサービス内に付加することでユーザーの行動モチベーションを促進することができるためマーケティング業界においても「顧客満足度向上」「LTV(Life Time Value)向上」を課題にする企業さまなどを中心に注目されている。

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