“正社員時代”は終焉したのか…
雇用シフト ~雇用流動化時代にフィットしたポスト正社員のカタチ~ 【その壱】
正社員のこれから
働き方が多様化している。長びく景気停滞による企業の緊縮策等により、正社員比率が年々下降している。過半数を割るのは時間の問題といわれ、いまや実質的には非正規が主流といっていい状態だ。ところが、ここへきて、いわゆる非正規といわれるパート・アルバイトの“正社員化”が加速している。揺れ動く雇用情勢。周辺で何が起こっているのか…。
正社員比率低下の流れから、一転して非正規の正社員化。この動きは何を意味するのか。その答えは意外にシンプルだ。人口減少時代における“囲い込み”に他ならない。サービス業で、正社員化が目立つのがその証拠だ。飲食業を中心に、「ブラックぶり」で悪名が高まり、採用がままならない。ならばと待遇を改善し、魅力を高め、吸引力を高めようというだけのことだ。人件費は上昇するが、企業側はそれ以上にやりがいを持ってくれれば利益が上昇することに期待している。
正社員神話は崩壊したのか
非正規の労働者にとって、正規化がどれほど魅力的なのかはよく分からない。報酬アップ以上に都合よくクビにされないという安心感がもたらすメンタル面での恩恵が大きいのかもしれない。ただし、非正規は、業績が傾けば解雇。正規ではそれはない、ということだけで、本当に優劣を判断していいものなのか…。つまり、正規では業績が悪いと、確かに簡単に解雇にはならないかもしれない。だが、責任が直接自分たちに跳ね返ってくる。業績回復のために身を粉にして働く必要も出てくるだろう。「こんなことならクビの方がよかった…」なんてこともゼロではないだろう。
“正社員神話”というのがある。どんなことがあっても会社が守ってくれる。確かにそんな時代もあったのかもしれない。しかし、それはいまとなっては高度成長期絶頂のころの残像でしかない。神話が崩壊したかどうかは、その信ぴょう性が経済状況にそのまま比例していることを考えれば、自明だろう。
正社員の「次」には何が来るのか…
社員は、もはや会社には頼れない。企業の寿命は急速に縮まっている。厳しいようだが、頼れるのは自分だけだ。「バイトのみなさん、明日から正社員になれますよ」という人参に、ホイホイ食らいつくようでは、真の安定や安心はつかめない。もちろん、会社が示す“エサ”は本物に違いない。だが、本当にその方がいいのかを、まず一度かみしめ、自分の頭でしっかりと考え、判断できなければ、本当の幸福は手にできない。
「正社員」という、“日本産業界の遺産”に敬意を表し、これからしばらく、さまざまな角度から働き方と照らしながら、正社員に変わる雇用形態の「次」の形をあぶり出していくーー。(隔週金曜日掲載)