企業風土

ワークスタイル変革を促すオフィス創りの肝とは

投稿日:2015年4月1日 / by

intelligence01働き方を変えるオフィス設計の仕掛け

テンプホールディングス・グループFM部部長
槌井紀之氏

2013年7月にオフィス移転を実施した(株)インテリジェンスビジネスソリューションズ(IBS)。このプロジェクトでは、ファシリティマネジャーがリーダーシップをとり、オフィス移転を単なる物理的な移動に留めるだけでなく、ワークスタイル変革にまでつながるさまざまな仕掛けを考え出す役割を担った。仕掛け人のひとりとしてタクトを振るった、テンプホールディングス・グループFM部部長の槌井紀之氏に、そのポイントを聞いた。

働きやすいオフィスとは

オフィスに施したさりげない仕掛けのタネを明かしてくれた認定ファシリティマネジャーの槌井氏

オフィスを大胆にデザインした認定ファシリティマネジャーの槌井氏

どんなオフィスが働きやすいのか。キレイ、おしゃれ、広い、設備が充実している…一般的にはそうした部分が評価ポイントなるだろう。だが、オフィスでは大小はあるが、チームでのパフォーマンスを最大化することが重要だ。従って、複数の人間が協業するとき、よりスムースに動けることが、機能としてのオフィスの重要ポイントといえる。

「ファシリティマネジャーとして私がこのオフィス移転を行った時、やるべきことは2つと考えました。生産性の向上これまでのメンタルモデルからの脱却です。おしゃれなオフィスを否定はしませんが、大事なことはいかにワーカーが生産的に働けるか。それは個人はもちろん、とりわけチームにおいて重要だと考えます。そして、それは、ワークスタイルにも影響を与えていかないと意味はないと思っていました」と槌井氏は、オフィス設計時の狙いを述懐する。

大きな命題を背負って設計された豊洲の新オフィスは、大きく3つのゾーンに分かれる。来客や面接など、外部とのコミュニケーションをとるゾーン、個々が業務を行う執務ゾーン、フリーアドレスで社員がいつでも利用できるフリーゾーンだ。それぞれに役割があるが、槌井氏が課した使命を具現化する上で最も重要となるのが、フリーゾーン。「CREATIVE BASE」と命名されたそのスペースが、同オフィスでのワークスタイル変革のカギを握る。

さりげなく施される仕掛けの数々

エントランスを通過すると、そこにはバーのようなカウンターやテーブルが並ぶ空間が広がる。ちょっとしたコミュニケーションや飲食などにも適したエリアだ。その先にはオープンなスペースが大きく広がり、全体を見通せる。棚などはあるが、基本的には、スペースを遮る壁がないのが特徴だ。開放的な空間にはテーブルやイスがほどよい間隔で配置されている。一人黙々と作業する人もいれば、数人で打ち合わせをするグループもいる。

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気軽にコミュニケーションがとれるラウンジエリア。アルコールを飲みながらのイベントも行われる

全体の印象は、オープンで洒落たカフェの様な雰囲気。非常に快適な空間だ。だが、居心地の良さに見過ごされがちだが、このスペースには、驚くべき仕掛けが、ギッシリ詰め込まれている。それも、憎らしいほどごくさりげなく、だ。最大の驚きは、周囲を見渡せるオープンなスペースが、実は会議室の機能も兼ねているということだ。

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クリエイティブベースのメインステージといえる「イノベーションカフェ」。オープンな空間ながら会議や打ち合わせも行われる

会議室の概念を180度変える驚きの仕掛け

あまりに大胆な仕掛けに、すぐ横を通過しながら、見落としていた。というより、見ていたが気付かなかった…。会議室といえば、仕切られた空間であり、そこでは眉間にシワを寄せ、議論する場、というのが一般的なイメージだ。だが、実は、そうした会議スタイルには大いなる無駄がある。そこで槌井氏は、あえてそうした既成概念を壊すことで、ワークスタイルに変革をもたらすことを狙ったのだ。

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こんなに開放的な打ち合わせスペースも珍しい

「会議ってすごく無駄が多いんですよね。まず、会議の場所を予約しなければならない。しかも時間の制約がある。もしも場所がとれなかったら、下手をすれば1週間後、ということもある。これって、スピード感を考えてもすごく生産性が悪い。だから、ここは予約不要、空間の仕切りもなくしました。さすがに『仕切りは必要では』という声もありましたが、人間って空気を読むでしょ。もしも込み入った話をしていると思えばその近くには座らない。打ち合わせも、目的に応じて自発的に場所を選択できるよう、それぞれに用途を見据えた特徴を持たせています」と槌井氏は、オフィス空間に仕込まれたタネを明かす。

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ちょっと疲れた、という人はここでリフレッシュしてもいい

会議のために場所を押さえる。このプロセスがなくなるだけでも、生産性は上がる。そもそも、会議のための会議という意識がなくなる。いつでも思い立ったら打ち合わせができるスペースがあるから、アイディアの具現化がスピードアップする。目的に合わせてエリアを選べるから質が向上する。オープンな空間だから、脳も活性化する。いわゆる会議室をなくしたことで物理的に空間の有効利用が可能となった…と会議室に関する仕掛けだけでもこれだけのメリットが生まれる。裏を返せば、従来の働き方がいかに不合理かということでもある。

一部のスペースを高床にしている理由

壁や仕切りのない空間にどうしても違和感のある人もいるだろう。その点についても実は、仕掛けが施されている。一つは、目線の変化だ。「CREATIVE BASE」のメインステージといえる中央の大きなスペース「イノベーションカフェ」は、床から30cmほど高くなっている。下のゾーンに座る人との目線をずらすためだ。取材はこの高いエリアで行ったが、確かにすぐ隣の低いスペースでは別の打ち合わせが行われていた。しかし、目が合うことはなく、ほとんど気にならなかった。例えば街のカフェでは、目線がぶつかり、気まずい思いをすることもあるが、それがないことで、取材への支障は一切なかった。

さらに音にも工夫が施されている。エリアごとに流れる、ほんの少し聞こえる程度の心地よいBGM。これには、周囲の会話を遮断するマスキング効果があるといわれる。もちろん、実際には隣の会話は聞こえてくるが、言葉として、というよりもあくまで雑音のように聞こえてくるので、最低限のプライバシーはしっかりと守られる。

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個々の社員が作業する執務スペースもちゃんと確保されている

こうして、ひとつひとつにさりげなく仕掛けが施され、利用者は、気づかないうちに行動が変わり、そして働き方が変わっていく。執務スペースは用意されているが、あえてこの開放的なスペースに「籠ってくる」と告げ、移動し、作業に没頭する社員も少なくないというから、その“効果”はかなりのものといえる。押しつけてやらせるのでなく、空間によって、さりげなく人の行動を変える――まるでアートのような“仕事ぶり”は、プロジェクトに専属で、ファシリティマネジャーという存在を立てたがゆえ、といえるだろう。

帰属意識とモチベーション高める空間

「IBSはクライアント企業に常駐しているスタッフも多い。そうした人が帰ってくる、帰ってきたくなる場所であることもこの場所の意義として大切だと考えています。そういう意味でもこのクリエイティブベースの果たす役割は大きいと思います」(槌井氏)。自宅とオフィスとは別の、ビジネスパーソンにとっての“パワースポット”として昨今注目される『サードプレイス』という概念。クリエイティブベースは、派遣先に常駐する社員にとって、まさにそうした位置付けとなる、帰属意識とモチベーションを高めるパワーが宿るスペースとなっている。

どんなオフィスが快適か…。その答えは一つではない。究極的には人の数だけあるのかもしれない。だが、少なくとも人材の多様化が加速するこれからの時代、そこで仕事をする意味が明確である空間でなければ、それぞれの潜在力を引き出すことはますます難しくなっていくだろう。開設から1年半が過ぎた同オフィスに対する社員満足度の高さ。その事実は、少なくとも同所の仕掛けが、数多ある快適なオフィスに求められる解のひとつであることを証明していることは確かだろう。


◇スペースの機能性を最大化するサポートデスク◇

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専属スタッフが様々な雑務に対応する

先進的でありながら、テクノロジーばかりに頼らないのが、クリエイティブベースの特長のひとつといえる。むしろ、ホワイトボードや手書きのスケジュール板が設置されるなど、アナログも有効活用する。スペースの一角に設置されたサポートデスクはその象徴といっていいだろう。スタッフが常駐しており、プロジェクターやモニター等のレンタルに対応し、スピーディな業務のスタートを実現する。なにをするにもできるだけ不自由をなくす――。サポートデスクは、利用者の不便を解消する役割を担い、スペースの機能性最大化に貢献するパーツとして、しっかりと融合している。


【会社概要】
ibs社名:株式会社インテリジェンス ビジネスソリューションズ
(英文:Intelligence Business Solutions, Ltd.)
資本金: 3億1,000万円
従業員数:2220名(2014年4月1日時点)
事業内容:業務プロセスコンサルティング、システム企画・開発、システム運用・保守、
ICTアウトソーシング、新エネルギーアウトソーシング、セールスアウトソーシング、
WEBアナリティクスサービス、バックオフィス支援、カスタマーサポート支援
代表取締役 兼 社長執行役員:
長井 利仁
設立:1977年9月(昭和52年9月24日)
事業拠点:豊洲本社、海浜幕張、大阪、札幌、仙台
本社所在地:〒135-0061 東京都江東区豊洲3-2-20 豊洲フロント7F
URL http://www.ibs.inte.co.jp
株主 インテリジェンス ホールディングス 100%出資

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