
ジョブローテーションで社員が自立していく環境を!
タマノイ酢株式会社 篠原氏 諸井氏
タマノイ酢では頻繁にジョブローテーションが行われている。ジョブローテーションとは、いわば部署異動のことであり、それが頻繁に行われているということは、一人の社員がさまざまな業務にかかわるということである。
総合職という言葉をそのまま実践している会社の働き方
普通、企業には専門職というものが存在する。ひとつのことを突き詰めていくやり方である。営業として働く人間は営業職を極め、制作で働く人間は制作のスキルや技術力を高める働き方をする。製造職は製造の工程管理や過程においての最適化を目指していくだろうし、販売の人間は接客能力や在庫管理などの効率化に躍起になる。他にも広報や人事などといろいろな職種と業務が存在し、それぞれに専門的な働きをする人間がいる。
しかし、タマノイ酢ではそのような働き方をしていないという。タマノイ酢でいう総合職というものは、本当の意味での総合職であり、様々な仕事を経験し、幅広い視野、感覚を持ちチームをマネージメントできるリーダー育成することが目的である。そのローテーションのスピードは早くて三ヶ月、平均「1年1部署」というペースで行われます。前項でも述べたが、「社員一人一人の成長と自立」を促すためには一人一人がまさに会社を動かす存在でいなければならない。
タマノイ酢の社員は当事者意識が強い。働かされるために会社に従事しているわけではなく、働くために会社に所属しているのだ。行動は自分から起こし、経験していく。ジョブローテーションが行われるたび、そういったマインドが社員に備わってくる。
誰もが、どんな場合でも適応できる。そういった社員が増えれば増えるほど、企業は強くなっていく。どこかの部署が何か問題にぶつかったとき、一握りの人間が解決策に頭を悩ませるわけではなく、全員で向き合うことができるようになる。
情報は惜しみなく共有することで芽生える意識
タマノイ酢では、個人アドレスを保有せず、部署ごとにメールアドレスが割り振られている。これは、部署にいる全員が部署に届いた情報を共有するためであり、また個人で情報を抱え込まないためである。内部、外部から来るすべての情報に目が通せるので、自分の部署内で今どんな動きがあるのか、どんな連絡が来ているのか、そして、自分がそれに対して何をすべきか自主的に考えることができるのだ。
社員に対して当事者意識を芽生えさせるためには、言葉や書類で説明したところで、そのマインドを心に響かせることはできない。だからこそ、実際に社員一人一人が動かざるを得ない環境を用意し、人それぞれに責任を持たせることが重要になってくる。
すべての社員がすべてのポジションを知ることが重要
「野球では、ピッチャーとかキャッチャーとか、外野や強打者といった形で役割がそれぞれ分かれていますよね。でも、当社ではそういった役割にとらわれずに、どのポジションでもこなせる幅広い視野を持ち全体をマネージメントできるリーダーを育てていきたいと考えているんです。」
確かに、野球ではピッチャー、キャッチャー、内野手と外野手が存在し、人によっては守備位置をコンバートするものの、ほとんどの選手は守備範囲という言葉が表すとおり、自分の周りだけを処理するような土台が作られている。これでは、専門的な部分に対し突き詰めていくような人しか育ってはいかない。
しかし、マネージメントするリーダーとなると話は別で、周りの連携を考えなければならないし、守備だけではなく打撃についても理解をしていなければできない。リーダーにはそれぞれ組織全体を作り上げるための役割が存在する。誰が何をしてどういうビジョンを持っているかなどを共有するためには、一つのことを専門的に突き詰めるプレイヤーでいては、見えないものが多すぎるのだ。
経験もせずに、できない、向いてない、楽しくないと思い込むことは人生の損失といっても過言ではない。まずは経験することが重要なのだ。
タマノイ酢では、会社内でできることならすべて経験する可能性がある。経験することが社会人としてのスキルアップに必ずつながっていく。