企業風土

メリハリある働き方実現した“体質改善”の中身とは

投稿日:2015年11月11日 / by

経営危機を発端に一変

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株式会社メンバーズ
某ダイエットサービスによってどんなにだらしない体も劇的にシェイプできることが証明された。では、企業の悪しき体質は、改善できるものなのか…。企業のWEBサイト運用などを行う(株)メンバーズは、いわゆるIT系にありがちな残業体質だった。ところが、経営が傾きかねないほどの危機に陥り、抜本的な体質改善に着手。見事にV字回復を果たす。時間にルーズな組織は、メリハリのある集団へと生まれ変わった。

頑張れば報われる仕組みへ抜本改革

執務室では仕事に集中するため、机へのお弁当持込みは厳禁

執務室では仕事に集中するため、机への弁当持込み厳禁

きっかけは、業績の大幅ダウンだった。大企業を中心としたWEB関連の案件を総合的に手掛ける同社は、制作陣を中心とした組織構成。クリエイターの性もあるのか、どうしても労働時間は長くなりがちだ。業績が良ければ、それでも不満はでてこない。好きでやっている人も少なくないからだ。だが、業績が傾いて来るとはそうはいかない。「どんなに頑張っても報われない」と、さすがに疲弊し、不満もあふれだしてくる。

「2009年ごろでしょうか。いわゆるリーマンショック後にそれまで順調だった業績が大きく落ち込む時期がありました。頑張っても報われないことに社員からの不満が噴出し、離職者も増え、会社自体が傾きかねないほどの危機感が充満しました」と当時を知る社員は振り返る

不可抗力の側面も多分にあるが、会社にとって最大のピンチ。ここで、若手幹部を中心にしたメンバーが決起し、再生に立ち上がる。たるみきった体質の抜本的ともいえる改善だ。社員の不満は、「頑張っても報われない」。だから、まず手始めに、頑張り方を改革した。時間管理の徹底だ。これまでの裁量労働制を辞め 、固定時間制を採用、残業の場合は申告制とした。残業するにしても朝の実施を推奨。あくまで第一歩だったが、これにより、「頑張っても報われない」元凶といえる、非効率の排除に成功した。

休憩や食事はこのラウンジスペースでゆったりと

休憩や食事はこのラウンジスペースでゆったりと

残業が大幅に減り、夜型が朝型へとシフトすると、ムードは一変。こうなれば、狂った歯車は逆に、いい具合にハマりはじめる。どうすれば時間内に終われるのかを上長を筆頭に考えるようになり、残業代が発生することで、逆にコスト意識も芽生えていく。結果にコミットではないが、時間対作業量に対し、強い意識が働くようになる。自ずとチーム連携も強まり、さらに効率がアップしていく。ダイエットで食事を改善することで、体質が変わり、細胞が活性化していくかのようにドミノのように連鎖的に改善が進んでいく。

体質改善後はそれを促進する施策の実施

変化を体感すれば、取り組みは自ずと加速する。同社ではさらに、絶妙な施策でこうした動きを促進した。その一つが、利益の半分を賞与に還元することだ。これにより、まさに頑張れば頑張った分が反映されることになり、社員の業績への意識が高まる。逆にいえば、頑張らなければそれはそのまま自分に跳ね返ってくるということになり、責任感も強まる。

時間管理と業績貢献への意識向上。この2つが浸透すれば、あとは社員の成長を後押しする環境さえ整えれば、成長サイクルは自ずと回りはじめる。個人の目指す姿を自分で考え、宣言する「M10宣言」。就業時間中の10%を能力開発にあてる時間とし、その取り組みを評価に反映する制度。社員が講師となる勉強会「メンバーズカレッジ」、剣持社長自ら塾長となるリーダー育成のための「社長塾」…など、高まった意識が加速する支援に惜しみなく投資することで、「頑張れば報われる」を会社として全面バックアップした。

上がった成果をしっかり評価する体制も整備

その上で、インプットで生まれたアウトップもしっかりと評価。半期ごとにマネージャーからフィードバックを受けた上で、半期に一度の人事委員会を実施。社長以下部長以上の全員が丸2日以上かけ、全社員の評価を行う。ありえないほどの労力の投入だが、同社にとって、人材育成はそれだけ重要事項と捉えている。

2020年へ向けたさらなる進化へ陣頭指揮を執る川井氏

2020年へ向けたさらなる進化へ陣頭指揮を執る川井氏

「社員のスキル向上は、結局は生産性の向上につながってくることです。もちろん、品質の向上にもつながる。ですから弊社では、評価の仕方も含め、人材育成は経営における非常に重要な事項として捉えています」と川井氏は説明する。

2020年へ向けさらなる進化を目指すビジョンを策定

徹底した明確化とみえる化により、経営危機から一転、企業体質の抜本改善に成功した同社は、いまでは受託をメインとしながらも、高いクオリティでクライアントの満足度を高め、信頼を積み上げる。それでいて、高次元な生産性によって、メリハリある働き方を実現する健全な企業へと変貌を遂げた。現在はそれをベースにさらなる上のステージを目指す。それを示したのが「VISION2020」だ。

2020年をゴールに、そこまでに目指す姿として同社がそこに掲げるのは、年間100億ソーシャルエンゲージメントの創出、EMCサービス(※)導入顧客企業数50社、社員数1,000名、売り上げ150億円・営業利益率10%の4項目。どれも現状と比較すると壮大な数字だが、経営危機からV字回復を果たした同社にとっては、決して不可能な数字ではないのかもしれない。

育成や評価体制を整備し、さらなる上を目指す

育成や評価体制を整備し、さらなる上を目指す

「我々は、コンテンツをただつくるだけの企業ではなく 、企業のWEBサイトの構築から運用までを支援、成果までをコミットします。これまでのようにPDCAを回し続け、さらなる効率を追求しながら、新たな取り組みにも積極的に着手し、全員参加型経営を軸に、2020年へ向かっていきたい。とてつもなく壮大ですが、ぶれることはありません」と川井氏は力強く語った。

経営危機が原動力となり、スタートした同社の再生プロジェクト。決して簡単なことではないが、うまくいかない原因を洗い出し、対症療法でなく、体質改善という選択をしたことが、リバウンドなく、むしろさらに磨き上げられる分かれ目になったといえるだろう。 妥協しない。それが、企業においても習性によってしみついた負のスパイラルから脱するポイントといえそうだ。


※Webを通じ、企業と生活者のエンゲージメントを継続的に向上することで、マーケティング成果を創出する総合的なWeb運用サービス。大手企業を中心としたクライアント向けに、専任ユニットによるクライアントビジネス理解やユーザーの属性/行動傾向の把握、データを活用したPDCAサイクルに基づくWebサイト運用サービスを中心として、Webサイト構築やソーシャルメディア活用、広告などを総合的に支援するサービスモデル。


【会社概要】
メンバーズ|ソーシャルメディア時代をリードするネットビジネスパートナー社名: 株式会社メンバーズ
所在地:
・東京本社
〒104-6037
東京都中央区晴海1-8-10晴海アイランド トリトンスクエアオフィスタワーX 37階
・ウェブガーデン仙台
〒980-0811
宮城県仙台市青葉区一番町4-6-1 第一生命タワービル 8階
・ウェブガーデン北九州
〒802-0081
福岡県北九州市小倉北区紺屋町9-1 明治安田生命小倉ビル 9階
設立: 1995年6月26日
資本金: 7億8,300万円(2015年3月末時点)
事業内容:WEBサイト構築・運用、ソーシャルメディア活用、広告プロモーション等を通じたデジタルマーケティング支援事業
社員数:(連結) 430名(有期雇用社員含む)(2015年6月末時点)
売上高:(連結) 63億2,500万円(2015年3月期実績)

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