企業風土

社員がどんどん自走する会社のつくり方

投稿日:2015年3月11日 / by

tunagu0社員が自走する“シカケ”とは

(株)ツナグ・ソリューションズ

 

人事制度は企業の競争力を高め、従業員の能力を引き出し、向上させるものだ。評価や休暇、教育など様々な側面から人材価値を高めるものとして、多くの企業が独自の制度を取り入れている。だが、思惑通りフィットし、十分に機能している事例は必ずしも多くはない。採用コンサルティング会社の(株)ツナグ・ソリューションズも数多くの人事制度を導入する。同社では、そうした制度が本来の目的通りに機能し、従業員の活動と自然にシンクロしている。その秘密はどこにあるのか――。

なぜ各種制度は機能するのか

大切な人のために取得できる「LOVE休暇」、勉強のために最長10日間取得できる「勉強休暇」、より手軽なものでは理美容室へ行くための「理美容半休」…いずれも休暇制度として、取りやすい配慮が行き届いているせいか、その取得率は100%を達成している。

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「社内交換留学制度」と「資格取得支援制度」は、その名の通りの制度だが、つくったのは従業員。新しい制度を従業員が自らの手でつくる「Say Do!コンテスト」と呼ばれる制度から誕生した。従業員表彰制度のひとつ「ナレッジショー」は、「個人の知をツナグ(全体)の知に」を目的とし、各自が自分の仕事を自慢し全体にその知を共有しながら、すごさを競うコンテストだ。

上記は、同社の数ある制度の中のほんの一部だが、全てに共通していることがある。どれもシッカリと機能していることはもちろんだが、従業員が自ら動いて初めて成り立つという点だ。どういうことか。例えば、「理美容半休」。その名の通り、半日休みを取って美容室へ行ける休暇だが、目的はそれだけではない。平日の街中へ出ることで、普段はあまり見ることのない世の中の情勢の一端を肌で感じ、仕事に活かすことも、隠れたミッションとなっている。

制度のつくり方にヒミツアリ

人事・小林氏と広報・鈴木氏(左)が自走の秘密を教えてくれた

人事・小林氏(左)と広報・鈴木氏(右)が自走の秘密を教えてくれた

「仕事をしていると平日昼間の美容院の状況を知る機会はほとんどありません。そこで、半休でしっかりと身だしなみを整えるのと同時に、日常をリサーチすることで情報をインプット。それを一人だけのインプットで終わらせず、みんなに対してアウトプット(共有)することで、全員のインプットの機会にするのです。弊社では、仕事はアウトプットの場、インプットは仕事と離れた環境で様々なことを吸収する場とし、このインプットは仕事上でのアウトプットと同等に必要なことと位置付けています。また、ビジネスパーソンとして成長するために必要なのは『仕事力』で、その仕事力を向上させるために必要なのが『人間力』という考えもあり、この人間力を高めて質の高いアウトプットをするために、刺激的な情報に触発されるようなインプットの機会に満ちている職場環境づくりを重要視しています。そうした考えがあり、こうした特別休暇を有休とは別枠で設けているのです」と同社事業管理部の鈴木氏は説明する。

<美容院くらいゆっくり行きたい>。そんな声も聞こえてきそうだが、土日の休暇が消費されることなく、仕事にもプラスになると考えればなんともありがたい制度といえるだろう。他にも「勉強休暇」という制度もあるが、やはり単なる休みではない。取得するためには、その目的とリターンを明確にし、プレゼンによって最終決裁部門の承認を得る必要がある。もちろん、リポートが必要だが、内容次第では旅費や宿泊費なども支給されるので、トライしがいはある。

このように同社の制度は、常に「インプット」と「アウトプット」がセットとなっている。当たり前のようだが、その目的と案配が絶妙だからこそ、従業員は、自ら積極的に動き、その成果を全力で披露する。多くの企業がせっかくの制度を形骸化させてしまいがちなのは、この「インプット」と「アウトプット」のバランスがいびつで、押しつけ感が強くなりがちなことが一因といえるだろう。

社員が自走する最大の要因は“評価”

執務スペースと分けれらたフリースペースは切り替えに最適の場所

執務スペースと分けれらたフリースペースはON/OFFの切り替えに最適の場所

従業員を自走させる人事制度――。次世代の働き方でキーワードとなる「主体性」を、考え抜いた“シカケ”によって見事に引きだしている同社だが、なかでもその根幹をなすといっていい制度がある。「エンゲージメント」と呼ばれる評価制度だ。評価の判断基準を、自分が決めた約束=エンゲージメントが守れたかどうかで行うシステムで、会社が設定した目標をどれだけ達成できるかという一般的な評価軸とは180度違うスタンスが、同社社員の活動のベースとなり、独自の風土づくりの重要なファクターとなっている。

もちろん、この場合もみなに約束を公言してからのスタートとなる。会社が設定した目標と違い、あくまで自分で設定するものだけに、公開した時点で、周囲の反応もある。ハードルの高さによっては、「無謀」とする声や「低すぎる」といった声も発生し、調整が加えられることもあるという。なにをするにも自分が起点であり、他の誰もがやることを把握している。まさに自立して働くことが、風土としてごく自然になじんでいる。結果、同社では誰もが常に主体的に物事に取り組み、やらされ感とは無縁でイキイキと仕事に励むことになる。

なんでもかんでも自分に責任がのしかかる同社の風土を重いと感じる人ももしかするといるのかもしれない。だが、それは思い違いであることはすぐに分かる。なぜなら、逆に全てが押し付けられたものならどう感じるかを考えてみれば明らかだろう。例え嫌なことでも、自分が主体ならいとも簡単にクリアできてしまうハズだ。あくまでも社員に最善の環境を与え、自走を促すことに徹している同社の経営スタイルは、先行き不透明な日本において、どんな苦境でも走り続けられる、ある意味当たり前だが難しい次世代型の理想に近いモデルといえそうだ。


【会社概要】
tunagu0社名: 株式会社ツナグ・ソリューションズ
(英文名:TSUNAGU SOLUTIONS Inc.)
代表取締役社長: 米田 光宏
本社所在地: 〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-1-3 東京宝塚ビル7F
設立年月日: 2007年2月28日
開業年月日: 2007年3月26日
資本金: 6,500万円
従業員数: 245名(2014年4月1日時点)
事業内容:
・採用代行業
・人事活動全般における各種コンサルティング業
・人事総務業務におけるコンサルティング業
・アセスメント・サーベイ業務
・人材開発・研修業務
・人材斡旋ならびに有料職業紹介事業(許可番号 13-ユ-302470)
・一般労働者派遣事業(許可番号 般 13-305283)
・販促支援事業

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