企業風土

“万年最下位”の日本の労働生産性をアップさせる秘策はないのか【瓦の目】

投稿日:2015年12月18日 / by

主要先進7か国中21年連続最下位の日本の労働生産性

公益財団法人 日本生産性本部が「日本の生産性の動向 2015年版」を、2015年12月18日に発表した。日本は21年連続で主要先進7か国で最下位だった。同調査は、経済成長に向けた生産性の現状、2014年度の日本の労働生産性の動向、OECDデータなどを用いた労働生産性の国際比較、主要国の全要素生産性(TFP)の動向をまとめた独自調査で、1981年3月から実施されている。

日本生産性本部調べ

日本生産性本部調べ

もはや鉄板の定位置。日本の労働生産性の低さが叫ばれて久しいが、今年もまた日本の悪しき長時間労働が世界的によろしくないことが示された。「労働生産性が低い」ことは何を意味するのか。数式上は、労働者1人当たりが生み出す成果あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したもの。つまり、労働生産性が低い=長時間ダラダラ働いている、ということだ。

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逆にいえば、日本中の企業が、一斉に残業をやめ、これまで通りの成果を出せれば、労働生産性は一気に上昇する。「そんなの無理」。多くの経営者がそう思うかもしれない。だが、現実には残業を撲滅した企業は、ほぼ例外なく現状維持どころか、売り上げをアップさせている。この現実をどう捉えるのか…。

残業をなくし、売り上げをアップさせたある経営者は「残業は売れない製品を扱っているから。売れないからいつまでも営業電話をかけ続けなければいけない。いくら時間があっても足りない。つまり売れる製品づくりに注力することが重要」と断言する。簡単なことではないが、売れないから時間をかけて売り上げを達成する、という考え方からの脱却は、日本が最優先で実施すべき取り組みといえるだろう。

なぜいつまでもダラダラ残業が続くのか

いまだに上司が帰らないから帰りづらい、という社風に紐づいた“おつきあい残業”もはびこっている。これなどは即刻辞めるべき残業といえるだろう。上司に渡された仕事をとにかく打ち返すことで発生する“無計画残業”も、なくすべき筆頭格だ。このスタイルの問題は、残業する側のメンタルが、やがてすり減ることに加え、何の創造性も生まない仕事の仕方だからだ。百歩譲って残業するにしても、それが会社の利益に大きく貢献する場合や当人の成長つながるのならやるのもよしだが、その逆になるなら、やる価値はゼロといっていい。

今回、調査結果としてTFPなるものが示されている。これは、全要素生産性(Total Factor Productivity)と呼ばれるもので、一般に工学的な技術革新・規模の経済性・経営の革新・労働能力の向上などで引き起こされる「広義の技術進歩」を表す指標とされる。その上昇は、経済成長や労働生産性向上の源泉となっており、経済成長を今後持続させていく上でも、重要視されるようになってきているといわれる。このTFPでは、日本はOECD主要19ヵ国中、韓国、オーストラリア、ドイツに次ぐ4位となっている。つまり、技術革新などを軸にした労働生産性向上においては、日本もそれなりの成果を出しているということだ。

日本生産性本部

日本生産性本部

もっとも、今後の日本の生産性向上への期待はどうにもみえずらいのが実状だ。政府は時間より成果を打ち出し、長時間労働撲滅に声を大にしている。その効果もジワリと出始める一方で、リモートワークも広がりをみせている。いつでもどこでも仕事ができることは様々な事情を抱えるワーカーにとって好都合だが、仕事とプライベートの線引きが難しいという課題もある。時短労働者が増えるのに比例し、フルタイムワーカーから「不平等」の声も上がり始めている。これらは、「時間より成果」の「成果」がなんなのかを明確にしなければ、かえって職場に混乱を招くことを示している。

長時間労働を撲滅する--。これは、各企業の必須の取り組みとして、同時になにをもって「成果」とするのか。その辺りも併せて明確に提示する。それが出来ていないことが、日本の労働生産性向上のボトルネックであることをしっかりと認識し、いま一度整理することが重要といえる。前述の「売れる商品づくりへの注力」によって、成功した企業の事例は、発想の転換という意味でも大きなヒントとなるのではないだろうか。

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