企業風土

20年連続低空飛行の日本の労働生産性【瓦の目】

投稿日:2014年12月18日 / by
日本生産性本部調べ

日本生産性本部調べ

公益財団法人 日本生産性本部が「日本の生産性の動向 2014年版」をまとめた。2013年の日本の労働生産性(就業者1人当たり名目付加価値)は、73,270ドル(758万円/購買力平価(PPP)換算)で、OECD加盟34カ国中第22位。主要先進7カ国では1994年から20年連続で最下位となった。

数字は、全産業を対象としており、この結果だけで日本の労働生産性が低いと断じることはできない。だが、とりわけサービス業で長時間労働が問題視されるなど、日本は労働時間が長い傾向にある。そもそも、長時間労働に対する厳しい姿勢を打ち出す国もあるほどで、そうした部分に緩い点が、日本の労働生産性を下げている側面は否定できないだろう。

それにしてもなぜ、主要先進7ヶ国において20年にもわたり、労働生産性最下位に甘んじてきたのか。右肩上がりの時代の終盤から、緩やかな下りに入ってもなお、低空飛行のままなのは、根本的な問題があると考えるほかないだろう。単に長時間働くだけなら、問題はないハズだ。長いのに中身がない。だから、生産性が低い、となってしまう。

売り上げが上がらないから、上がるまで営業を続ける。これは質の低い長時間労働だ。上司が残っているので帰りづらい。これも低レベルな残業だ。主要先進国の多くは、やる業務があればいくらでも働くし、なければ働かない。有休も当たり前のように全部取得する。上司の顔色をうかがうこともそれほどはない。結局は、オンとオフの考え方の違いが、日本を“生産性貧困国”に貶める元凶となっている。

国民性といってしまえばそれまでだ。だが、昨今は、少子高齢化の影響が浸潤し始めている。猛烈に働いて家庭を犠牲にする。それだけならまだ良かったかもしれない。ところが、そうした時代を経験した管理職がいま、親の介護で離職を余儀なくされることも珍しくなくなりつつある。もはや、家庭を犠牲にするレベルでなく、誰かがやらねば、コミュニティの機能が崩壊する、そんな深刻なレベルまで事態は危機的なものになっている。

ようやく、少しは危機を感じる人が増え始め、個人や企業レベルでもその策を意識始めるようになった。ワークライフバランス、在宅勤務、リモートワーク、ワークスタイル変革…昨今、踊り始めたワードの背景には、実はそうした事情がドッカリと横たわる。仕事を定時でビシッと終えて、家で親の介護をし、たまには息抜きに映画やジョギングを楽しむ。そうやって、公私を充実させることで生産性は高まり、さらなる革新につながるアイディアのタネも育まれるというものだ。

先進7か国中、20年連続最下位、という不名誉は、日本になにを突き付けてきたのか…。最初は「そんなはずはない」という被害妄想だったかもしれない。それがいつしか「当然かも」となり、いまでは「仕方がない」と思っているのかもしれない。もしかすると、そもそもなんとも思っていなかったのかもしれない。だが、いずれにせよ、日本は長時間労働を見直さなければ立ち行かなる状況が差し迫っている。“成人”してなお、不名誉に甘んじ続けるのは、国家としてもあまりにお粗末すぎる。

 

 

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