企業風土

有休取得率アップがもたらす本当のメリット【瓦の目】

投稿日:2015年1月16日 / by

有休取得は「休む権利」

計画的に有休を取得してたっぷりと余暇を満喫したいものです

計画的に有休を取得してたっぷりと余暇を満喫したいものです

部下:「来月の第二水曜日、有休を取得させてください」。上司:「そこは忙しいからダメだ。そもそも理由はなんだ」。

このやりとり、職場ではよくありそうな光景ではないだろうか。だが、たったこれだけのやり取りの中に、実は問題事項がいくつも含まれている。

まず、有休取得をお願いするということ。そして、上司がそれを拒否すること。さらに理由を聞くこと。労働基準法に照らすと、いずれの義務や権利もない。有休は個人の「休む権利」であり、自由に取得でき、従って、上司に願い出る必要もなければ、理由を言う必要もない。

もちろん、会社員であるということは組織の一員である。会社全体が、残念ながら有休を取得しづらいムードなら、ある特定の人員が頻繁に取得すると輪が乱れることにつながりかねない。まさに「空気を読め」ということだ。それでも、法律上は、それを理由に人事評価を悪くすることは違法であることは知っておいていいだろう。

時期指定有休義務化の狙いとは

法律上は、そこまで保護されている有休取得。ところが、その取得率は、厚労省の発表(就労条件総合調査)では5割を切っている。政府は、2020年までに70%の取得率を目指しているだけに、現状は厳しい状況にある。そこでそのカンフル剤として導入が検討されているのが、企業が取得時期を指定して取得を促すという案だ。

企業への取得時期指定を義務付けるのは、繁閑のバランスを考え、売り上げへの影響を最小限に抑えることにつながり、メリットがあると考えているからだろう。従業員にとっても、会社がよしとした時期に休むことで後ろめたさが大幅に軽減されるメリットがある。時期指定の適用はあくまで全有休の一部であり、会社の言いなりというワケではない点もそれなりに理にかなっているといえる。

新しいカタチの“有休取得制度”によって、その取得率はある程度の上昇が見込めるだろう。だが、それよりも重要なことがある。有休というのは、「休む権利」だ。その使い方は、個々によって異なり、まさに十人十色。つまり、働く個人が、自分の生活と照らし合わせ、よりイキイキとなれるタイミングで、しっかり計画的に取得されて初めて意味があるということだ。

有休を有意義にするために大事なこと

そのためには、個人は、自分の業務に対し、これまで以上に責任をもって取り組む必要が出てくる。自分の思い通りに有休を取得するために、しっかりと業務の進行計画を立て、納期通りに仕事を終える。企業も、明確な事業プランを立案し、その上で各社員に的確な業務を配分し、人員の最適化を図る必要がある。つまり、結果的に有休の取得率を上げようとすれば、企業全体の生産性向上につながり、売り上げアップにも貢献することになるのだ。

現在、瓦版でも有休取得状況を調査中だが、いまのところ取得数ゼロが大勢を占める。「取りにくい」、「取ったら後が大変」など、さまざまな理由が上がっているが総じて、ネガティブな印象だ。そうではなく、働く個人はいかにして休めるように業務を進めるのか、企業の側はどうすれば休みを取りやすい仕組みになるのか。まずはそこに神経を集中する必要がある。そのプロセスなしに、単に時期指定型有休が義務化されるとすれば、結局は土日祝日に続く“第三の休日”が増えるだけで、かえって生産性が下がることにもなりかねないだろう。

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