企業風土

会社員が本当に知っておくべき重要な会社の掟【瓦版書評】

投稿日:2015年4月27日 / by

なんとなく知っているだけでは人生が浪費される

rule

『日系・外資系一流企業の元人事マンです。じつは入社時点であなたのキャリアパスはほぼ会社によって決められていますが、それでも幸せなビジネスライフの送り方を提案しましょう』(新井健一著:すばる舎リンケージ)

ゲーム、株、営業…たいていのことについては、ありがたいことに攻略本やノウハウ本というのが存在する。第一人者による独自ノウハウの共有というパターンもあるが、多くは、ルールや実践のポイントを踏まえた上で、しっかり取り組めるようガイドしてくれる内容だ。人はなぜか、そうしたことを知らぬままに、何となく感覚的に事にあたっている場合が少なくない。

例えば年金のことや政治のことをしっかり理解している人はどれくらいいるだろうか。何となくは分かっていても、「良く分からない…」という人がほとんどだろう。にもかかわらず、「年金がもらえなくなる」とぼやいてみたり、せっかくの選挙権だから、と選挙に行ったりする。誰にも迷惑をかけやしない。しかし、こうした事への向き合い方は、人生において、確実にムダを発生させる。

最たるものが、「働く」ということだ。なぜなら、確実に人生の3分の1以上の時間を費やすことであり、収入も含め、生活に大きな影響力を持つからだ。「上司のいうことを聞いて、キチンと業務をこなしていれば問題ないだろう」。もちろんその通りだ。だが、会社によっては、それではマイナス査定、ということだってある。要するに会社にもキチンと独自ルールがある。それが「人事システム」だ。

「ノー残業デー」、「週休3日制」、「バースデイ休暇」…。こうしたものも確かに人事制度の1つだが、表面的なものでしかない。本当に重要な部分は、個々の社員を評価するための人事システムだ。会社ごとに違う、この制度を知っているか否かで、ビジネスパーソンのその後のキャリアが大きく変わるといっても過言ではないだろう。

入社時からキャリアパスを決めてしまうこともある人事システムの怖さ

長いタイトルがまさに内容を象徴している。著者の新井健一氏は、日系・外資系一流企業の元人事マン。内情を熟知する立場から、包み隠さず人事の“種明し”をしてくれている。衝撃なのは、希望あふれて入った会社も、実はその時点でほぼキャリアパスが決まっているという事実だ。やりたいことがあってもやれないことが、入社の時点から決まってしまっている場合があったりする。なにも知らず、そこを目指し続けるとすれば、あまりにも悲痛であり、人生の浪費といえる。「知らぬが仏」では済まない。ある時点で現実に気付くとしても、最初から知っているに越したことはない。

仕事=人生とはいわない。だが、「仕事は人生と一心同体だよね」という問いに、「違う!」と断言できるは少ないだろう。つまり、それほどまでに人生に大きな影響力を持つ会社のことを良く知らぬまま、日々の業務に注力するというのは、極端に言えば、自己満足でしかないということだ。業績が傾いてリストラされた時にたいていの人が思うだろう。「なぜ会社のために懸命に働いてきた俺が…」と。それが、人事システムもろくに理解せぬまま、働くことの末路なのだ。

こうしたいわゆる働き方関連の本は、たいていが、マインドに働きかけたり、ノウハウに特化しがちだ。だが、同書では、あくまで人事システムをベースに現実を指摘しつつ、最低限のアドバイスをすることに徹している。ゾッとすることが多いが、それでもスーッと染みわたってくる感覚がある。ありそうでなかった、<会社員が、会社と心中せずに働くための会社攻略本>。そんな頼もしい印象だ。労働環境が激動する働き方の過渡期にあって、特に“正社員神話”をいまだ信じるビジネスパーソンにとっては、路頭に迷う前に読んでおくべき1冊といえるだろう。

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について