企業風土

社員を主体的に働かせる会社のつくり方

投稿日:2014年4月10日 / by

確率1パーセントの人材選びに全力を尽くす

scubism1

(株)エスキュービズム・ホールディングス
従業員が自立して働く企業は、強い推進力を生み出す。会社は活気にあふれ、売り上げも自ずと追随する。理想的だが、会社は組織として規律や統制を保つ必要がある。そのバランスをとることは簡単でない。徹底した“自立推進主義”で業績を拡大する(株)エスキュービズム・ホールディングス。どうすれば、自立と統制の均衡をはかり、個の最大化をはかれるのか。その秘密に迫った。

上下無関係に自分で「決める」風土

同社ではなにごとも基本、自分で「決める」。それが、当然だからだ。やる仕事、プロセスにおける判断…。従来の会社なら管理職の判断を仰ぐような場面でも基本はセルフジャッジ。そこには、新人もベテランも関係ない。もちろん、そこに強制力はない。そういう風土なのだ。

瀧本人事部長

組織作りに重要なのは“入り口”と話す瀧本氏

「なぜこんなことが可能か。理由は明白です。そういう人材を採るからです。我々がこういう会社であることはいろいろなメディアにオープンにしていますし、知らずに応募してきた人にもキチンと説明します。その上で、しっかりと見極めて弊社にマッチする人材を採用するから、自立・自律・自走が実現できているのだと思います。キャベツを育てたいのに白菜のタネを入手してもいつまでたってもできませんからね」と同社・瀧本崇人事部長は明快に答える。

至極当然の回答だが、多くの企業は人材確保に苦心する。「これは」と思って採用しても入社後は期待外れということも少なくない。この点について瀧本氏は「それは人材を労働力とみているからだと思います。我々はあくまで同志として人材を探しています。ですから、出会うのは簡単ではありません」と打ち明ける。

人材の見極め方

では、瀧本氏は自立型人間をどう見極めているのか。第一に面談の際、「過去について聞くこと」という。どんな大学ではなく、なぜその大学を選んだのか。なぜ、その高校を選んだのか。そこをしっかりとヒアリングすることで、その人の特性が分かるという。

「例えば、なぜその大学を選んだのかの理由が、『オープンキャンパスに行ってすごく魅力的だったから』というのはアウト。自分のやりたいことを実現するためにはこの大学が一番だったから。あるいは甲子園を目指す上で強豪校だからというのはいいですね」と瀧本氏。つまり、過去のプロセス決定思考が、そのまま、自立性の高さと密接に関連するというわけだ。

さらに瀧本氏は、せっかく意中の人物に出会えても口説かないという。なぜなら「主体性のある人間は、口説く以前に自分で他の内定企業を断ってくるので」。こうしたスタンスもあって、マッチする人材と出会い、マッチングできる確率はせいぜい100人にひとりだそうだ。裏を返せば、ここまで人材選定を徹底するからこそ、同社では新人でもセルフジャッジがどんどんできるといえる。

自立型社員が活きる環境づくり

エスキュービズム

新人も関係なく主体的に動き回る社員

もっとも自立した人間を受け入れたからといって、うまく機能するかは未知数だ。おまけに同社ではいわゆる「教育」はしないというのだから、不思議である。「入社後一か月はマインドの部分での研修は行いますが、スキルの部分では教育は基本ありません。これも自主的にやっていただくのが基本です。そのための環境だけは、十分に整えていますので。やっていただける仕事もいくらでもありますしね」と瀧本氏。従って、同社では新人でも関係なく、本人にやる気さえあれば、それなりの仕事に取り組むことになる。

「与える仕事については新人もベテランも関係ありません。もっとも、キャパシティはあるでしょうから、それは見極めます。レベル的に不相応の仕事であっても本人が手を挙げれば基本、やらせます。それによって課題もわかり、成長につながるわけですから」(瀧本氏)。やる仕事も自分で選び、できなくても自分で克服し、ステップアップする。個々がこうしたサイクルで成長するからこそ、会社はどんどん成長し、売り上げも増進する。

書籍購入補助

自己研さんへの支援は惜しまない同社

見逃せないのは、同社の会社としてのスタンスだ。自立心旺盛な個性派集団だけに、当然独立志向を内包する。会社にとってはリスキーだが、同社では、そうした思いにブレーキをかけることはしない。むしろ支援金を用意してその独立をサポートする。外の世界を見たくなって、離職した社員を再び受け入れるカムバック制度もある。同社では、社員の自立心の高まりの先にあるものまでをしっかりと見据え、あえて柵で囲うことなく、解き放つ。

新入社員でなく同志。ビジョンを共有できる人間が、集まり、個々が主体的に目標に向かう同社。とりあえず採用してから育てるのがこれまでの“会社員育成法”だとすれば、同社では、とにかく必要な人材を見極め、集める。その結果、個の力が最大限に発揮され、組織としてのパフォーマンスも最大化される。たとえ袂を分かっても、マインドでつながり続ける。企業は昨今、とくに優秀な人材確保に苦しむが、徹底して“入り口”にこだわる同社の採用スタンスからは、これからの企業の成長や発展に重要な要素がなにか、を明確に示しているといえそうだ。

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について