企業風土

安定はなくても「正社員」という働き方

投稿日:2013年12月4日 / by

正社員の定義を変える会社

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正社員は安定の象徴。そんな時代は事実上終焉している。SDAでは所属スタッフの大半が正社員ながら、事業部ごとの完全独立採算性で、給与も変動制。おまけにトップが本社にいない。一般的な会社の形からみれば極めて奇妙なスタイルだ。過渡期の時代を象徴するようなワークスタイルの同社の居心地とは…。その実状に迫る。

ごく普通の会社だが実は…

都内にオフィスを構える同社。おしゃれな内装で、クリエイティビティあふれる空間は、仕事がはかどりそうなムードにあふれる。コワーキングスペース「the Association」と共存しており、多様なワーカーが行き交い、常に新鮮な風が吹き注ぐ。

充実したオフィスで働く同社社員は、アルバイト2名以外は正社員。この中には、茨城で農家を営む者、沖縄で在宅勤務をする者もおり、なかなかユニークだ。違和感があるとすれば、社長のイスがないことくらい。実は、社長は、1年前、九州へ拠点を移したのだ。

普通の会社とどこが違うのか

「今の体制は1年ほど前の刷新により実現しました。代表の考えとしてはフリーランスの集合体のような形があったようですが、紆余曲折を経て、事業部ごとに独立する形に収まりました。同時に代表は地方開拓のため、九州へ拠点を移しました。従って、弊社では各事業部が独自に動き、売り上げに応じて、報酬が決まる形になっています。代表とは最低限のやり取りはありますが、基本、事業への口出しはありません」と同社ママンカ事業部リーダーの大橋は説明する。

SDAオフィス

シェアオフィスと同居する開放的なフロア

つまり同社は、「SDA」という社長オーナーのプラットフォーム上に、「ママンカ事業部」と「東京事業部」と「福岡事業部」という3つの事業部が、事実上の独立体として乗っかっている形なのだ。

一般的な事業部制と違うのは、社長の介入がほとんどないという部分からも分かるように極めて独立性が高いことにある。従って、同社では、各事業部が、それぞれの強みを生かしながら、SDAというブランドも利用し、同じプラットフォーム上で共生している。

もっとも、給与は売上げに応じて変動。多ければもちろん報酬も増えるが、当然SDA本体へ入れるお金も比例して増える。そう考えると、独立した方がいいのではないのか、という疑念もわいてくる…。

このスタイルのメリットとは

大橋氏

ママンカ事業部の大橋氏

「10年以上の実績があるSDAというブランドによって仕事をスムースに進めやすいという部分がまずメリットとしてありますね。様々なノウハウや人脈も蓄積されていますしね。事業部で行っている事業イメージでは取りづらい案件をSDA名義にすることで確保することもできます。また、各事業部の得意分野を活用しあうことで、大きな案件をこなすことも可能になります。そういう意味では、個々あるいは、チームのビジョンがしっかりとしていれば、この仕組みは目標を現実化できるプラットフォームとしては理想的なんです」と大橋氏はこの形態のメリットを説明する。

正社員としての契約形態を保っているとはいえ、実際には、各事業部の社員は、独立事業体と同等の危機感を持って業務に励んでいる。その意味では見えないメリットとして、正社員でありながら、独立するためのノウハウや実績を積み上げられているということがあるといえるだろう。

異色のスタイルの中での働き方とは

通常の会社の概念からは大きくかけ離れる同社の経営スタイル。だからこそ、各人の動きはかなり自由度が高い。職場がイチゴ畑の正社員は、会社には年に数回しか姿を現さない。沖縄在住の正社員は、完全在宅勤務だ。都内でも在宅勤務メインの正社員がいる。大橋氏も1日一度は社に顔を出すものの、かなり自由でノマド的な動きで業務にあたっている。

ママンカ事業部の正社員

正社員だが、“職場”はイチゴ畑

「イチゴ畑の正社員は、事業部の商品開発に絡んでいますが、なによりも農家とのつながりを生み出すことで事業部に貢献しているという考えです。沖縄在住の正社員ももとは東京にいたのが、事情で移住になりました。確かに自由度は高いのですが、実はみな、ある一定期間、ともに働いていたんです。ですから深い信頼関係にあり、こうした形態でも安心して業務を任せられるんですね」(大橋氏)。

会社が就職から定年まで面倒を見てくれる。それが正社員の最大の魅力だとすれば、同社にはそれはあてはまらない。むしろ、事業を行う舞台と権利を与えてはくれるものの、保証はない。それでも、正社員としての扱いはあり、会社のリソースは有効利用できる。売り上げに応じて報酬アップの道もある。かつてのいい時代ならともかく、終身雇用制が事実上崩壊したいまとなっては、意外に魅力あるスタイルであり、今後、相似形の会社が現れてもおかしくはないのかもしれない…。

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