企業風土

新しい働き方、ウルトラワークとは

投稿日:2013年2月6日 / by

サイボウズ株式会社

グループウェア国内シェアナンバーワンのサイボウズ(株)(東京都文京区)は、働き方の多様性を追求する先進企業でもある。これまでにさまざまな取り組みを行い、成果も出している。売り上げとのバランスから、制度はあっても形骸化しがちな、“従業員にやさしい”働き方。同社はいかにして多様な制度を実践し、取り入れてきたのかーー。

新しい働き方、ウルトラワークとは

「時間」にも「場所」にも制限なし。いわゆるノマドのような斬新な働き方にいま、同社は、全社的にトライしている。その名も「ウルトラワーク」。きわめて自由なワークスタイルを実践することで、「チーム」、そして「個人」両方の生産性向上を目的とする。

労働時間の自由

「多様な働き方は、クリエイティビティの発揮や雇用機会創出を可能にし、仕事や生活の質を高めることにつながると考えられます。時間・場所を超えたコラボレーションを可能とするITサービスを提供する企業として、事情のある一部の社員だけでなく、全社のワークスタイルを変革することにしました」と同社は、ウルトラワークの試験運用に至った経緯を説明する。

ウルトラワーク導入による働き方の変化

通勤の必要がなく、勤務時間の決まりもないウルトラワーク。自由度がきわめて高いが、実施する際には「前日夕方までにグループウェアで報告」するだけでよい。その他、運用にあたってのルールは、「生産性を下げない」こと、「連絡が取れるようにしておく」ことなど、基本は働き方に関係なく、社会人として当たり前のことのみ。そうしたこともあり、ありがちな気兼ねしての活用の躊躇はほとんどなく、対象者は有効に活用しているという。

“通院がある場合、その前後に落ち着いた場所で仕事をする”、“保育園の親子行事の前後に業務をこなす”、“深夜、自宅で海外のクライアントとWEB会議をする”、“通勤ラッシュ時を避けた時間に出勤する”…など、利用者は各人それぞれが、大小様々な事情に合わせ、柔軟に働き方を選択できる。マイペースで時間のやりくりに無理が発生しないことから、結果、仕事の効率アップにもつながるだろう。

素敵なオフィス環境「実はこのスタイルは8月末にスタートし、3週間の実施予定でしたが、延長して3か月続けられました。導入による具体的な成果はデータとしてまだ出ていませんが、反対する声はほとんどなく、利用者の7割以上から継続を希望する声が上がっています」と同社広報部の渡辺清美氏。好評を受け、2013年1月中旬からの正式運用も決定した。

テスト導入の段階とはいえ、勤務規定の厳しい企業に勤務している会社員ならうらやましい限りの制度かもしれないが、同社でスムースに受け入れられ、うまく機能しているのは、それだけのベースがあるからといえる。

多様な制度の積み重ねで築かれた風土

サイボウズ離職率「弊社もかつては離職率が高く、社員の定着に苦慮していました。そこで、現社長の青野就任後、より多くの人がより成長し、より長く働けるよう働き方の多様性実現を目指し、さまざまな取り組みを実施。その結果、最大28%だった離職率が、これまでに4%にまで改善されました」と渡辺氏は説明する。

2006年8月の育休最長6年、2007年2月の選択型人事報酬制度の導入、2011年の在宅勤務制(月4回)、最長6年の育「自分」休暇…など、同社では、これまでに社員の働き方の選択肢を増やしていくことで、より働きやすい環境の構築に力を注いできた。いずれも有名無実化することなく、制度としてしっかりと定着している。

グループウェアの徹底活用がポイント

自身が育休を約4年使ったという渡辺氏は「事情があって長期間、お休みをいただきましたが、復帰後はグループウェアに過去のデータが残っていたことなどもあり、およそ2日で感覚を取り戻しました」と明かす。この言葉には、同社の多様な制度がなぜうまく機能するのか、というひとつのヒントがある。

社長の掲示板もっとも、一般的に有給を1日とるのも一苦労する会社員が多い中で、グループウェアの活用だけでは、これほどの制度が浸透する理由としてはやや弱い。一体なぜ、多様な制度が有効に機能しているのか。それは、トップ自らが、制度を最大限に活用している点に尽きるといえるだろう。

最大のポイントはトップ自らの実践

同社青野社長は、2人の子供を持つ父親であり、「育メン」として、奮闘している。半年間は毎週水曜日を育休日とし、労働時間も子供の都合に合わせ、フレキシブルにするなど、同社の制度をフル活用。「育メン」として、しっかりとその役割を果たしている。

当然、勤務時間に制約が発生するが、社員とはグループウェアを通じ、常に情報のやり取りを行い、さらに重要な事項は、定例のミーティングで直接語りかけるなどしており、「育メン」実践による業務上の支障はなんらないという。

「率先垂範」の文化が多様な制度を受容する風土を醸成

素晴らしき制度を打ち出しても、肝心の上層部が、全く活用していなければ、部下は委縮して使いづらい。トップ自らが率先することは、まさに百聞は一見にしかずのメッセージとなり、末端にまでその意図が的確に伝わる。なにより、トップ自らが活用することでその素晴らしさを実感する。

同社の場合、加えて自社の提供サービスが、組織運営の効率化に関わるものであることから、自ずと社員個々の意識も高く、高度なワークスタイルも違和感がなく、風土として自然に溶け込んでいくのかもしれないーー。


スッキリ◆サイボウズのグループウェア活用術
多様な働き方を受け入れる同社は、グループウェアによって企業風土が確立されているといえる。いまでは多くの企業で活用されるグループウェア。だが、その使い方のほとんどは事務的連絡だろう。同社には、「スッキリQ&A」というモヤモヤ“解消ツール”がある。これは社員が不平不満を書き込み、その解答がもらえる掲示板。通常、飲み屋で愚痴として発散することを社員全員共有の場所で公開、解消することで「嘘や隠し事のない」風土形成に役立っているそうだ。

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